13話 鈴木さん
「それで、貴方はこれからどうされるおつもりですか?」
どうされると言われてもな。
「もし、特に目的が決まっていないのであれば、まずは戦士の学舎に行かれることをオススメしますよ」
「戦士の学舎ですか」
「はい。毎日のように繰り返される、あまりの回数の再生を懸念された神が、ニホンの皆様にセラルンダの基礎を知っていただく為に作った学舎です」
毎日のように裸祭りだったのか。
途中から意図的に祭りにしてそうな気もするが。
なんにしても、初歩的なことを学べる場所があるのは助かる。
「わかりました、まずはそこを訪ねてみたいと思います」
「それが良いと思います、あなたの旅路に幸あらんことを」
これは……。
配信動画で見てはいたが、実際にこの目でみるとやはり凄いな。
道はそれなりに整備されているようだが。
木造にコンクリート、石造りに布のテント。
建物に規則性が全くない。
みんな好きなように住居を構えてる感じだ。
歩いているのも日本人だけじゃない。
というか半分以上が何かしら特徴のある人達。
建物の不規則性と色々な特徴のある人達が入り交じって、何とも言えない雑多で活気に溢れている感じだ。
なんというか今まで味わったことのない空気だな。
何故か気分が高揚してくる。
こういうのを心踊るというのかもしれないな。
「侘坐、侘坐じゃないか」
「鈴木さん?」
「そうそう」
「お久しぶりです」
「あの時、侘坐が二階堂のおっさんに喧嘩を売って以来だから、もう
5年ぶりくらいか?」
「あの時は失礼しました」
「いやいや、お前があそこで怒ってくれて、みんな内心かなりスッキリしてたんだ。よくぞ言ってくれたってな」
「いえ、あの時は本当に生意気なことを」
「謙遜するなよ」
「そんなことより、鈴木さん。ここにいることを奥様は?」
「あはは、妻の怖さまで覚えていたか」
二人で居酒屋で飲んでいたら、浮気を疑った鬼の形相の奥さんが店に乗り込んできたからな。
あれはそうそう忘れられるものじゃない。
「俺がここに来るのは仕事が休みの日限定だよ。それに今日はいないが妻もこっちに来ているしな」
「嬉しそうですね」
「わかるか?」
「ええ」
「子どももいるし、お互い仕事があるからな。ここに一緒に来られるのは月2~3日程なんだが、それでも一緒に色々やれるのが楽しくてな」
「なるほど」
「まあ、あの時と変わらん部分は変わらんがな……」
ああ、相変わらず怒られてはいるのか。
「侘坐、セラルンダは楽しいぞ。色々と言われたし、実際ひどい目にもあったが、今はこの世代に生まれたことに感謝してる」
最後に会った時とは表情が全く違うな。
本当に今が楽しそうだ。
「他にもここのおかげで、色々変わったからな。例えば………」