12話 祭壇
……。
目の前に自称神の像。
ここは……祭壇?
「おや、お客様ですね」
角がある初老の男性か。
いきなり異世界っぽい感じだな。
そして相手の言葉がわかるか。
どうやら自称神の言葉は本当だったようだな。
「こんにちは。申し訳ありません、ここは一体?」
「ふむ、どうやらあなたはニホンからのお客様のようですね」
「……はい」
「おっと、どうやら警戒させてしまったようですね。安心してください」
……。
「この祭壇はニホンからいらっしゃる方が初めて立つ場所。そして戦い破れた男性の再生の場所なのです」
祭壇の上にいながらここはどこかと聞くのは、ニホンから初めて来た人間以外はあり得ないということか。
「納得いただけましたか?」
「はい、失礼しました」
「いえいえ、どうぞお気になさらず」
「失礼ついでに一つ教えて下さい。戦い破れた男性の再生とはどういうことでしょうか?」
「そのままの意味ですよ。ここセラルンダは常に死と隣り合わせの危険な世界。その世界を切り開く神に祝福されし男性は戦いで死しても肉体も魂も滅びず、この祭壇から再生されるのです。ちなみに女性用はここから少し離れたところに同じような施設があります」
理由はわからないが施設は男女別なんだな。
?
祭壇に赤い光?
「ほら、ちょうど再生される方がいらっしゃいます」
光が集まって……。
人間が現れた!?
って裸じゃねぇか!
「おお、神に祝福されし者よ。よくぞ戻られました、まずはこの布を」
「神父さま、どうもありがとうございます。くそ、流石にギリギリで勝負をかけすぎたか。装備もロストしちまったし、とりあえずは服だな、一回家に帰るか」
装備のロスト?
ああ、だから男女別の施設なのか。
「神父さま。布ありがとうございます、それでは失礼します」
……。
死んでも死なない、か。
配信動画の中でも言われていたが。
「半信半疑なのも仕方がありませんよ。こればかりは体験されないことにはなんとも」
流石にあえて死んでみようとは思えないな。
「まあ、あなたのように全てに警戒することは普通のことですよ。珍しくはありますが」
そんな遠くを見ながら言われても。
「何かあったのですか?」
「初めてニホンから多くのあなたの同胞がいらっしゃった時の話です」
ああ、あの日か。
少なくても数万、下手すりゃ十万単位か。
大挙なんて次元じゃない人数が来たんだろうな。
「多くのあなたの同胞が一切の話を聞かず外へと走り去り、数多の方々が再生されたのです」
……。
解放感から色々やっちゃった感じだな。
まあ、やっちゃうんじゃなくて、殺られちゃったみたいだが。
「お陰で布が足りなくなりましてね……」
万単位の野郎の裸祭りか。
初日に来なくて正解だったな。
「それも今となっては良い思い出です」
良い思い出……。
二度と思い出したくない光景な気もするが。
「そのような話は置いておいて。神に祝福されし者よ、ようこそセラルンダへ」




