11話 セラルンダへ
セラルンダ。
入国方法が携帯の画面に触れるだけとは。
便利を通り越して、意味不明だな。
「ようこそ。ここはセラルンダに入るための入国審査ゲートです」
流石にノーチェックでは容れてくれないか。
「お名前はロクサブロウ・タザ様ですね。はい、確認できました。ではセラルンダに入国いただく前に、セダ様から一つプレゼントがあります」
セダ?
ああ、自称神か。
自称神からのプレゼント……。
微妙だな。
「それではどうぞこちらへ」
光る板?
な!?
眩し!
……。
今度は真っ暗な空間か。
「ようこそ、セラルンダへ」
自称神。
「やっと来たね、六三郎君」
「ああ」
「うーん、それだけ? つれないなあ」
ヤカン。
「あいた! いた、痛い、痛いよ」
早く話を進めてくれ。
「えーと、セラルンダに初めて来た人達には、いくつか僕からプレゼントをあげてるんだ」
プレゼント……。
「そんなに警戒しなくも大丈夫だよ。こんどは、くくく、ヤカンとかじゃないから、くく」
ヤカン。
「いた! 痛い、ご、ごめんて、痛たあ! 謝るから、そ、その辺で止めてくれないかな」
学習会しろよ、自称神。
「そんは気安くポコポコも。全く僕は一応神なんだから、いべ、いだ、いだぁ!」
ポコポコが嫌なんだろ?
ボコボコに切り替えてやるよ。
「ご、ごめんなさい、うべ、もうしません、おべ」
自称神様、そろそろ話を進めてくれ。
「いたた、全く。えーとなんだったっけ? そうそう、プレゼントの話だよ。今回のプレゼントはこれだよ」
またメールか。
目の前にいるんだから口頭で構わないんだが。
えーと、外見年齢の選択?
どういう事だ?
「サービスだよ、サービス」
20歳~現在まで選べるのか。
特に不満もないし、今のままで構わない。
「あれ、珍しいね。みんな心機一転、新しい人生だーって20代を選ぶ人が多いのに」
そんなもんか。
ま、人それぞれなんだろ。
「そんなもんなのかもね」
これで終わりか?
「後はね、僕があげた携帯を見てよ」
?
「携帯に銀行のアプリがあるでしょ?」
これか?
「そうそう、それそれ。そこに僕が用意した当面の生活費ってやつを、入金しておいたから」
……。
1千万円?
どういう事だ?
「それだけあれば、1~2年は収入がなくてもなんとかなるでしょ?」
よほど無駄遣いしなければ、失くなりはしないだろうな。
「まあ、こっちに来た人で、一年でそれ以下の稼ぎの人ってあんまり聞いたことないんだけどね」
えらく稼げるんだな。
こっちに来た人数だって、相当な数がいたはずだが。
「そりゃあ、君達の世界がものすごい勢いで僕たちの商品を使ってくれるからさ。補充しても補充してもバンバン売れていくんだよ」
そんなにか。
「そんなにだね。はっきり言って供給は全く追い付いていないよ」
恐ろしいほどの売り手市場ってことか。
「そそ、だからみんなの収入もうなぎ登りさ」
それは景気のいい話だな。
「だからそれは遠慮なく受け取っておいてよ。どうしても気に入らなければ、後日稼げるようになって、返済してくれても構わないしね」
わかった。
とりあえずはもらっておく。
「次はね、言葉だね。セラルンダの人達と意志疎通ができないのは困るでしょ」
たしかに。
言葉が通じないのは厳しいな。
「勿論勉強するっていうのもありだけど、まあ、そこはサービスってことでセラルンダの言語パックを君の頭に入れてあげるよ」
頭に!?
「はい、おしまい」
な?
もう終わったのか?
「終わったよー。これでセラルンダの人達とも問題なくコミュニケーションがとれるよ」
特に変化もないが。
まあ、現地に行けばわかるだろう。
「うんうん。それじゃ最後に、ちょっと失礼」
?
「よし、完了。あー、やっぱりこうなるか」
何をした?
「君のサポートをする使い魔を用意したんだけど……」
だから何をした?
「えーと、怒らないでね」
だから何をだ?
「使い魔って君に付くものだから、体に式を埋め込むんだけど、なんか思ったより式が大きくなっちゃってさ」
?
「紋章式ってやつなんだけど、背中と首と右肩っていう広い範囲にまたがっちゃった」
?
「ま、セラルンダでは特に珍しくもないから大丈夫だよ」
だからなんの話だよ。
「とにかく僕からのプレゼントは、君をサポートしてくれる使い魔だよってことさ。さ、いつまでも無駄話をしていないで、ささっと行っておいでよ」
おい。確実に何か誤魔化してるだろ。
「それじゃあね。いってらっしゃーーい」
おい!!