表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
シスターレナに叱られたい!  作者: 雛山
シスターレナに叱られたい!
10/51

懺悔其の十 懺悔だ!

最新話更新です

 

「ふははははは! 懺悔だ!」


 行き成り尊大な男の声が懺悔室に鳴り響く。


「この我が懺悔に来たのだ! 誰ぞ出迎えぬか!!」

「うるせーなぁ、静かに入って来いよ」


 カーテンの奥からどんなバカが来たのかと覗くと……なんか大柄で厳つい男がキンピカな鎧を着て立っていた、浅黒い肌で短く借り上げた髪型、年齢は見た目からしておそらく四〇後半から五〇くらいに見える。


「おいおい、なんか凄いの来ちゃったよ。コスプレだろあれ」


 やたら偉そうな感じで男はカーテンの前まで歩いてくる。


「娘! 我が前で顔を見せぬとは何たる不遜!」

「仕事上顔見世はお断りだよ、それでここは懺悔室なんだけど何か用?」


 もう、こういった輩には行き成り素で行くことにしたよ……修道女モード疲れるんだよ。


「むぅ、仕事上なら仕方あるまい」


 男は勝手に椅子にドカっと座り腕を組み頷いている、何だよこのコスプレイヤー? キャラになり切ってるのか?


「して、我はここに懺悔に来たのだ、聞いた話だが懺悔をすれば色々と赦されるとの事だな」

「いや、何でもかんでも赦される訳じゃないから、そこまで都合よく無いから。前にそう言ってここに来たオバちゃんいたけど、ソイツも許されてないから」


 最初に釘を刺しておく、前回のパチンカーオバちゃんみたいなこと言われても困るからな。


「何? 全てが赦されるわけではないのか? まあいい、我ならば赦されるであろうからな」

「仕方ないから聞いてやるけど懺悔ってどんな内容なんだい?」


 男はうむと頷き腕を組むと。


「神よ我が罪を赦したまえ」


 態度はデカイが、懺悔の出だしは今までで一番マシかもしれないな。


「家賃の滞納で、そろそろ部屋を追い出されそうなのだ! さあ、懺悔したから赦されよ!」

「赦されねーよ! 払えよ、それで解決だよ、懺悔して家賃滞納が赦されるなら誰も苦労しねーよ」


 やっぱこんなオチだよ!!


「てか、テメーさっきから態度デケェんだよ、赦される立場の人間がなんでそんなに偉そうなんだよ」


 アタシが怒鳴りつけると、さっきまで偉そうだった男が急にシュンとする。


「あの、えっとですね。これはアニメキャラクターであるですね」

「なんのキャラかなんていいんだよ! 懺悔しに来てるのになんでお前そんなコスプレしてくるんだよ」

「えっとですね、私の趣味がですねコスプレでしてね」

「お前の趣味の話なんてしてねーだろうが、お前いわすぞ」

「はい! すいません!!」


 急に大人しくなりやがって見掛け倒しだなコイツ……


「一応なんで家賃滞納してるのか聞いてやるよ、てか何ヶ月滞納してるんだよ?」

「えーっとですね、もう半年くらいですかね。新記録達成ですよ」

「新記録達成じゃねぇよ。よく追い出されないな」

「督促状は来てるんですが、なんとか居留守で回避してますよ」


 いい歳こいたオッサンが何言ってるんだ?


「セコイなぁ、それで家賃滞納した理由は何だよ……ま、大方予想は付くけどな」


 アタシがそう言うと何故か嬉しそうな顔をして。


「ここ見てくださいこのディテール、このクオリティ。これだけ立派に作るとなるとやはり資金が大量に要りましてね」

「お前のこだわりは分かった。だが、こだわりを主張していいのはきちっと家賃を払ってる奴だけだ」

「ですから、ここに懺悔して赦してもらおうとですね」

「さっきも言ったがそういう事は赦されないんだよ」


 いいオッサンが何言ってるんだ、まったく。


「いい大人なんだし、ちゃんと働いてるならこんなことにゃならねーだろ?」

「いやー、最近バイトをクビになっちゃいましてね」

「え?」


 コイツ、いい歳こいてフリーターなのかよ……


「お前さー、懺悔室に来てないでハロワ行けよハロワ!」

「正社員になるとイベントに参加しずらくなるじゃないですか」

「やかましいわ、ダメ人間が」

「ダメ人間? なんて酷い事を言うんだ!」


 男はダメ人間と言われて怒ったようだが知ったこっちゃない、こういった輩には懺悔室らしくとことん説教せねばならない。


「酷いだぁ? お前なぁ、家賃滞納の方が数倍酷いだろうが。いいか、お前が家賃を滞納してるとアパートのオーナーの稼ぎが減るんだぞ分かってるのか?」

「分かってるよ、それでも払いたくないんだ!」


 開き直ってるし、本当にここに来る奴は懺悔する気ゼロだな。


「いいから払えよ、部屋追い出されるぞ!」

「アンタは誰の味方なんだ!」

「確実にお前の味方じゃねぇよ!」


 どうやったらアレで味方になってくれると思うんだよ。


「今いる部屋追い出されたら四部屋目になるんだよ!」

「もう三ヵ所から追い出されてるのかよ……」


 きっとコイツ、ブラックリストに入ってるぞ。

 しかしどうしようもねぇなコイツ、なんかここに来る奴ら見てるとアタシってヤンキーだった頃でもこいつ等より随分とましだったんだな……


「もう、いいから帰ってからハロワに走れよ」

「いやでござる!」


 男がそう言い切った所で扉が開きランボーみたいなオバちゃんが入ってきた。


「ちょっと、金三(カネミ)さんここにいたんですか」

「げぇ! 大家さん!!」


 アレ大家さんかよ……弓でヘリでも落としそうな大家だな、よくあの大家相手に家賃滞納しようと思ったな。あのオッサンも身長高いがそれよりさらに高いぞ。


「滞納してる家賃について話し合いましょう」

「どうしてここにいると分かったんだ?」

「金ぴかの鎧着たオッサンが教会に向かったって目撃情報がありましてね」


 あー、まあ、そらバレるよなぁ、目立つもん。


「うわー、離せ、離してくれー」

「いいから行きましょうか」


 ランボーオバちゃんが片手でオッサンを掴むとそのまま引きずっていく。


「うわーーー、シスター助けてー」

「いやだよ」


 アタシは即答した、あのオバちゃんは敵にしちゃいけない部類だ。


「では、シスター失礼しますね」

「いえいえ、お構いなく」


 オバちゃんはアタシに挨拶して去っていく

 あの大家相手に半年も滞納してたのかよ、アイツ勇者だったんだな……尊敬できないけど。


「やはり、人間真面目に働かないとな」


 アタシはそう呟くと次の迷える子羊を待つことにした。


次回は明日更新予定

感想やレビューおまちしてます

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ