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観測室のメリル  作者: 伊和春賀
プロローグ
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プロローグ

 おはよう。

 よく眠れたかい? それとも、ずっと起きていたかい?


 まあ、返事なんてないか。


 あなたはきっと、どうして僕がこんなことを聞くのか、不思議そうな顔をしているんだろうね。

 あなたにとっては、この僕は液晶の向こう側に存在する文字の羅列かもしれないけれど、僕はあなたについて知ることはできないからね。無理だと分かっていても、ちょっと聞いてみたかったのさ。


 さて。

 今の僕の話を聞いて、きっとあなたはこう思ったはずだ。


『どうして、僕自分が文字の羅列だって知っているのか』って。


 それは、僕が観測者だからさ。外の存在くらい知っている。

 でも、あなたの言葉は僕に届かない。

 良い証拠がある。今、ここで僕に『おはよう』と話しかけてみることだ。


 準備はいいかい?

 3

 2

 1


 ……………………。



 ほら、聞こえない。当たり前だよね。僕は、文字で話を進めていくことしかできない。だけど、そうすることで、あなたに伝えることはできる。もちろん、あなたの言葉は、僕に届かないわけだけれど。


 そんなことより、あなたは『観測室のメリル』を既に読んでくれているのかい?

 あなたが、既に他の話を読んでくれていたら、ありがたいことだ。もし、真っ先にこの話を読んでくれていても、ありがたいことだ。感謝する。


 え? 

『メリルって誰』って?


 と、一定数のあなたは思ったはずだ。未読の読者は、メリルの存在すら知らないだろうからね。


 メリルは神の代理人だよ。

 髪の毛は真っ白で、とても長くて、右目を覆うように包帯を巻いていて、右腕にも包帯を巻いている、とっても可愛い女の子さ。性格は、あんまり良いとは言えないけれどね。

 その女の子が、観測室という空間で、次々と人の願いを叶えていくんだ。

 もちろん、あなたの願いじゃない。あなたは死んではいないだろう?

 ()()()()()()()()()()()()()()()()。現世を生きて、そして、死んだ、哀れな人だけさ。


 そんな死んだ人の願いをまとめているのが、この『観測室のメリル』っていうわけだ。

 

 死んだ人は一体、どんな願いをしたのだろうね。気にならないかい?

 どれも数話で終わる短い話だ。たまに長いこともあるけれど、その時は笑って許してくれ。

 あれは文章の程度を知らないからね。文章の良し悪しなんて、まだ分かりようのないヒヨッコなのさ。あれにとって、必要なけりゃ、この話だって削除される運命にあるのさ。



 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 


 まあ、使い道があれば、どこかで僕は使われるんだろうけどね。あれは、気まぐれすぎるのさ。僕には、あれのことはよく分からない。

 

 それで、ここまで読んでくれて嬉しいのだけれど、言わなきゃいけないことがあるんだ。

 おそらく、こんな文体は後にも先にも出て来やしないよ。まあ、この話は先頭だから、先はないのだけど、とにかくメリルは、僕みたいに、一方的に、あなたに話しかけることはしないよ。

 だってメリルは、画面越しのあなたの存在を知らないからね。


 それは、話を読んでみればわかることさ。ほらほら、さっさと行くんだ。


 ……………………………………。

 ………………………………。

 ……………………………。

 …………………………。

 ……………………。

 ………………。

 …………。

 ……。





















 まだ、行ってないの?

 物好きだなあ。じゃあ、雑談でもしようか。


 僕は男だと思うかい? 女だと思うかい?

 是非とも、それだけは、聞いておきたいんだ。僕をどう認識しているのか、気になるからね。


 ……………………。

 ………………。

 …………。

 ……。


 ああ、僕としたことが、忘れていたよ。

 あなたの言葉は、僕に届かないんだってね。

 だから、僕の髪の毛が真っ白で、とても長くて、左目を覆うように包帯を巻いていて、左腕にも包帯を巻いていることなんか、伝わりやしないんだよね。

 

 そうだろう? 読者諸君。雑談は終わりだ。後のことは、メリルに任せるとしよう。




「観測者は包帯を巻き直した」


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