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8話 おっさんと土下座



「さて、おじさん。この大天才たるヒカリンに感謝してくれて構わないよ?」


 正直、人間離れしすぎた芸当を見せつけられた手前、大天才というより大天災と言った方がしっくりくる……って感想は胸に秘めておこう。


「あぁ、命を助けてくれてありがとうございます」

「じゃあ、場も落ち着いてきたわけだし。ちょっとお話しようか?」



 いやいや全然落ち着いてないよな。


 そこかしこで呻き声は上がってるし、敵軍は壊滅寸前だけど全滅ってわけじゃないし。

 リスナー達もやれ『残党狩りだ』とか『負傷者の回収や手当て!』『少しでも軍の損耗率を低くするコマンドはないのですか?』『部隊の再編と死傷者の数を確認とかできないのか?』などなど、中には『ヒカリンが仲間に加わった!?』とコメントで大荒れだよ。



「いや、話をするよりも先にするべき事があります」

「え、ちょっと?」


 すぐに周囲の兵へ呼びかける。

 当然、あの化け物を召喚した危険人物たちを、今となっては一人だけだろうが放っておく事はできない。


「あの集団を即座に取り抑えろ! 死体ばかりだろうが、一人だけ生きていたはずだ!」


 えーっと、あと視聴者(リスナー)が言ってる事は……。


「残党狩りはなし! 部隊の再編を急げ! それと負傷者を放っておくな! 仲間だぞ! 助けられるのなら一人でも救うんだ! 看護兵はいないのか!?」


 声高に叫べば割と人は集まって来るもので、その場でそれなりの地位がありそうな奴らに片っ端から優先事項を念押しして口早に述べてゆく。


「おじさん? 用事は済んだかな?」

「いや、まだだ」


 ヒカリンの質問には首を振り、すぐに走りだす。


「え、ちょっとちょっと、待って!」


 俺はヒカリンの制止を振り切り、騎士の鏡とも言えるクレアさんの無事を祈って、ただひたすらに駆け続ける。

 どうか、どうか生きていてくれ。

 できればもう誰かが死んでいくのは目にしたくないのだ。



 化け物が暴れたせいでそこかしこに火は燻ってはいるが、火元が消え失せたのもあって大した規模でもない。

 最後に彼女が吹き飛ばされた辺りを、たくさんの死体を押し退けながら探す。すると運よく、翡翠色の髪をした女騎士が倒れているのを発見できた。


「クレアさん!?」

「ぁ……小豚……アシェ、リート、さま……」



 ヒカリンの攻撃に巻き込まれたか心配だったけど、どうやら死んではいなかったみたいだ。幸いにもヒカリンの攻撃は化け物をピンポイントで蒸発していたようで、周囲には息のある人間が数人いた。


『うぁ、ボロボロじゃん』

『これって助かるの?』

『現実だったら、無理でしょうね。あの鎧の陥没具合を見るに、臓器の損傷が激し過ぎるでしょうし』


視聴者(リスナー)の声に血の気が引いて行く。 

 確かにクレアさんはぐったりとしていて、力なくうなだれている。顔色は真っ青で、意識を保つのもやっとといったレベルだ。



『ゲームだし、魔法でどうにかなるんじゃないか?』


『おっさん! 仲間になったヒカリンに頼んでみろよ!』


 ここで初めて、ヒカリンが俺の後について来ている事に俺は気付く。

 そうだ。今の俺にできる事なんて何もない。

 だけど助かる可能性が1%でもあるならば、すがりつける存在があるならば、なりふりは構っていられない。


「ヒカリンさん! この人を助けてください!」


「えっ? ぷんぷん、私を無視してどこに行くかと思えば人助けですかー」


「どうか、どうか、お願いだ!」


 命の恩人なんだ。

 訳もわからず、こんな所で意識が目覚めた俺を、この女児騎士が何だかんだ守り続けてくれていたのだ。だから、どうかお願いだ。



「じゃあ、条件があるよ。おじさんに、この条件がのめるかな?」

 

 なんだってするしかないだろう。

 クレアさんの容体は明らかに重傷で、もたもたしてたら本当に死んでしまう。

 急がなければ……。


「なんですか?」


「私の弟子になること。期間は1年で、その間は私の言う事には絶対に従ってもらうの。どうかな?」


 なんだ。そんな事でいいのか。

 どうして俺を弟子にしたいのか全くもって理解不能だし、弟子が具体的に何をするかはわからないが、この緊急事態に1秒も無駄にはできない。



「んーっと……中身がおじ様だから、やっぱり自分より若い人に師事を仰ぐなんてヤダよねー。どうする? 大概のおじさんって、年下の人が自分より地位が高くても、心のどこかで生意気って思ったりしてるんでしょ?」



 そうだな。確かにそう思う人もいるだろう。だが、会社では自分より年下の上司がいる事なんてよくあって、それは能力的にも自分より上だからふさわしい地位にいると納得している。中にはコネや他の要素で出世した輩もいるが……それも力であり、現実っていうのは寂しいもんなんだ。



 だいたい『生意気』と感じるのは、既に相手を見下しているからなのである。


 俺は有名ユーチューバーとしての地位を保ち続けているヒカリンさんを尊敬はすれど、蔑む要素は1ミリもない。



「弟子にしてください」


 プライドもへったくれもない。一秒でも早く、クレアさんをどうにかして欲しいという思いで、俺は自然と土下座をしてしまった。



現実(リアル)だったら、女子高生に土下座するおじさんの図』

『圧倒的、犯罪臭wwww』


 リスナー達の爆笑が俺の心を少しえぐった。



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