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13話 初めての夜でおっさんは火照る


 異世界で過ごす初めての夜。

 戦地であるからなのか、自分の身に起きた事があまりにも突拍子すぎて興奮しているからなのか、なかなか寝付けなかった。



 断じて同じ天幕内に女子高生がいて、隣の簡易ベッドからヒカリンの寝息が聞こえてくるからではない。

 麻布をかぶり、寝返りをうつ。



「身体が熱い……頭も火照る」


 俺はじっくりと考えた末に、チャンネル登録者数で得た16ポイントを各ステータスに振った。上昇したステータスの影響なのか、少しだけ全身があったかい。



【アシェリート・シュバルツ・ハッシュトスタイン】

【人族】


体力3  → 10 (+7)

魔力42  → 43 (+1)

攻撃3

防御5  → 8  (+3)

素早さ1 → 6  (+5)


色力

赤0 青20 黄0 緑0 紫0 黒0 白0




 俺の場合、生存にまず必要なのは体力と素早さ、そして防御力だろう。

 なにせ守ってくれる者がいるのだから、敵を攻撃する必要がない。万が一にも被弾してしまった場合を考慮して最優先するのはこの辺のステータスだ。

 魔力はせっかく高かったので、気持ちほんの1ポイント入れてみた。せっかく魔法が使えそうな世界なので、この辺に期待してしまうのも仕方ないだろう。


 色力(いりょく)に関してはまだ振っていない。魔法には各系統があり、俺だったら青魔法の色力(いりょく)が高い。すなわち青系統の魔法威力にボーナス補正がかかるらしい。ヒカリンから簡単な説明を受けたが、まだ未知数なのですぐに必要な部分から補っていこうとした結果、あくまで俺は生き残る優先でポイントを振った。



 これで多少は自分を強化できただろう。なにせ体力にいたっては、この世界の平均男性並みに増えたのだ。


 力を得る感覚に浸っていると、また別の変化も起きた。




「記憶が……戻ってきたな……」



 銀髪ぽっちゃり少年、今は俺であるアシェリート・シュバルツ・ハッシュトスタインの記憶。

 この『ユーチューボ界の闇』と言われている異世界は、赤、青、黄、緑、紫、白、黒の七色の勢力に別れている。



 アシェリートがいるのは『青の領域(ブルフェス)』と呼ばれる地域で、空や海にまつわる神々の祝福が盛んな土地だ。

 この『青の領域(ブルフェス)』だが、現在は拝命六皇貴族という六つの家柄が統治しており、正式な王の座は空白となっている。簡単に言えば、六つの有力貴族が六つの国に別れて、それぞれの均衡を保っている、はず。



 記憶が曖昧だ……。


 このアシェリートという人物は学べる環境にありながら、あまり勉強熱心な方ではなかったようで時勢に(うと)い。


 とにかく俺は弱小でありながら、その六皇貴族が一つ、ハッシュトスタイン家の末子だ。ハッシュトスタインの領地は小さいが、地理的に世界の交易地点として様々な物や文化が流入する国なのだ。

 それに嵐の娘メディアーナ神の加護によって多大な恩恵を得ているらしいのだが、具体的にどんな恩恵なのかは……知らない。



「ハッシュトスタインとマスティスか」


 そして現在進行形で俺が所属する国は戦争、というか小競り合いが起きている。相手は『青の領域(ブルフェス)』の北東に位置し、同じく六皇貴族が一柱、マスティス家が治めている地だ。


 領土的にはハッシュトスタインの北部が接していた、気がする。


 あぁ、もどかしい。

 このアシェリートって人物は、てんでダメ貴族の馬鹿息子を体現したような存在なのだ。おかげで重要な情報がすっぽぬけている。



 アシェリートの評判は最悪なモノだった。


 スタインのブタ王子と言えば俺の事である。やたら高圧的で自分より身分の低い者の権利は平気で奪うような人物。支配者の息子という権力を笠に着せ、欲望のままに無理難題を押し付けて周囲に迷惑をかける始末。


 これで部下であるクレアさんの態度が鋭かったのも頷けた。


 民衆にもその体たらくな噂は広まっているらしく、行政に必死だった父もようやく末息子の状態に気付き、今回の戦を機に社会勉強をしてこいと初陣にほっぽり出されたという流れだ。


 現在は9歳であり、おっさんはぽっちゃり系の悪評少年になってしまった。



「まぁ、これで少しぐらいは評価を上方修正してくれるといいんだが……」


 クレアさんから今日の戦いで、敵の重要人物を捕虜として捕える事に成功したと報告が入っていたのだ。そいつは、例の化け物を召喚した集団の中で唯一の生き残りだった人間。


 どうやらそいつがマスティスの第二皇貴継承権を持つ人物だったそうだ。つまりは第二王子なのだ。



「こっちの父と上手くいけばいいんだけど……不安だ……」



 正直に言うと、この異世界での家族の顔が思い出せない。

 アシェリートには二人の兄もいるはずで……あぁ、なんとなくのイメージ像でしか浮かばない。

 長男には暖かな感情が浮かび、次男には険呑な感情。そして父に対しては(おび)え、か。


 まだ完全に記憶が定着していない……なるべく早めに戻って欲しい。じゃないと今後の身の振り方を決めるにも、情報がなければ判断しにくいのだ。



「いくら考えてもわからない事だらけだ……」


「ぷぅ、ぷんぷん、ハローユーチューボ……むにゃ」



 ヒカリンの寝言にビクリとしてしまう。同時に彼女のゆるい寝言を聞いて、ぐだぐだと悩んでいるのが馬鹿らしくなってきた。

 そろそろ惰眠を貪るとするか。


 今日は本当に疲れた……。




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