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六話目


「ふむ、まあ、大丈夫か。」


「どこが!顔真っ青だし、手足凄い冷えてるんだよ!?どこが大丈夫なの!?」


大丈夫などとほざきやがった“教会リビーデンス”の専属医とかいう奴にかみつく。本気か!


「いや、だから大丈夫だと……このまま安静にしておれば、特に問題なく回復するぞ」


「なるほど…?……大丈夫なのかぁ…よかったぁ……うぅ…」


私は有紗の寝るベットにもたれ掛かりながら、思わず泣きそうになる。


「りーなぁー…私は大丈夫だよー…」


有紗がベットの上から私の頭を撫でる、その手が暖かいのを感じで、思わず頬が緩む。


「よかったぁー…」


「でもまあ、後できちんと事情は聞きますかね?」


「う…はい」


私が有紗からのその言葉に項垂れていると、後から藍哉がやってきた。



「今更だけど、お前をここに連れてきちゃ駄目だったかもしれねぇ…」


「今更すぎないかね、藍哉。まあ、有紗がここで治療されるって聞いたら何がなんでも来ていたとは思うけど」


「やっぱり訂正、お前は有紗と一緒に置いとくのが一番安全だな」


藍哉とわいわい言葉を交わしていると、後からなんかもっとでっかいのが来た。

ちょっと驚いて振り向くと、厳かな感じの人がたっている。


「藍哉。」


「…教祖殿、どうかしました?」


「誤魔化すな。それは吸血鬼だろう。何故吸血鬼が“教会リビーデンス”内に入っている。謀反か?」


「なっ!」


教祖(?)とやらの言葉で、周りのショートローブ達が再びざわつく。因みに最初にざわついたのは私が有紗を連れて入ってきた時だった。


藍哉は開き直った感じで、私の説明をしている。


とりあえず面倒くさそうなので、有紗の事をじーっと見ている事にした。



「おい。吸血鬼」


「私の名前は寺臼莉奈。或いはアリス・ツェリュイア。吸血鬼と呼ばれるのは好みません。」


有紗が驚いたようでこちらを見てきたので、気まずくなって目を逸らすと、再び頭を撫でられた。


「知るか。横柄な態度をとるなら殺すぞ」


「…有紗の前で死ぬのは嫌です。」


どうやら“聖剣ソレイア”を首筋に突きつけているらしく、首の後ろがちりちりする。

だけど、有紗が撫でてくれているので、別に何も苦は感じない。

私の今の表情は相当緩んでいるだろうが、見えるのは頭を撫でている有紗だけだ、構わない。


「巫山戯た奴だな。そんなにこの“愛し子(レディルラッセ)”が欲しいのか?」


「…怒りますよ。有紗は有紗だ。そんな疾しい目で見た事など無い。」


「ふん。どうだか。」


教会サマの言葉に流石にイラッと来たので、“聖剣ソレイア”を躱して、振り返りざまに首筋にナイフを突きつける。


「ぐっ!?」


「巫山戯るな、は。こっちのセリフです。有紗の前でその様なことをするのはやめて下さい。」


「…ちっ…」


教会サマが右手をあげると、周りで武装待機していたショートローブ達が武器をしまった。

実を言うと、この人が来てからずっとこの針のむしろ状態だったのである。


「莉奈…?」


有紗が不安そうに見上げてきたので、抱き締めた。

有紗だけは守るから。そう、念を込めて。


「莉奈、吸血鬼って、どういうこと?訳、今話してくれない?」


「…んー…藍哉。私だと主観が入るから藍哉から話してくれない?」


「は?俺?俺だと逆の主観入るぞ?」


「構わないよ。それが人間からの見方なんでしょ?」


「まあ、そうだが…」


それでいいなら、と言って藍哉は有紗に説明してくれた。

私が実は吸血鬼であること。

吸血鬼は昔っから人間の敵で、この“教会リビーデンス”は、その吸血鬼に対抗するために作られた組織であること。

そして、有紗は吸血鬼から狙われる“愛し子(レディルラッセ)”という特別な体質であることなど。


「なるほど。つまりここに居る人達はみんな、莉奈が私を狙って近付いていたのだと思っているという事ね。」


「うん?まあ、確かにそうだな」


「井上有紗殿。寺臼莉奈というのは…」


「あーあー、やめて。莉奈が悪いやつだって言うんでしょ?

……………莉奈の事なんて何も知らねぇ癖に言うんじゃねぇよ。」


有紗はベットの上にいながら、この“教会リビーデンス”に所属し莉奈を敵視する者達全員に対して殺意を向けた。


「例え莉奈が吸血鬼で、本来私が捕食される者だったとしても、別に構わないし莉奈はそんなことをするような奴じゃないんだから、怖いとも思わない。私と莉奈が捕食する者と捕食される者であるというのは、私にとってただの後付けの理由。どうとも思わない。だから、私の事を案じて莉奈と離すのはやめて。私とってそんなの嫌がらせにしかならない。」


「…ちなみに離すとこっちは弱体化するがな」


「藍哉うるさい。有紗の熱烈な告白に私の涙腺はもう崩壊しそうなのだよ有紗ぁぁぁぁぁ!」


有紗が両手を広げてきたので、思いっきり抱きつく。

周りのショートローブ達も、教祖サマも呆然としているようだ。

この事に驚いていないのは…藍哉と相崎さんと篠葉さんだけのようだ。流石理解者達。


「有紗ぁ…」


「よしよし。というか、ホントに吸血鬼なのかい?」


「ホントだよ……うー…有紗大好き」


「はいはい。まったく…」


有紗はやっぱり全てを知ってもまだ私を受け入れてくれるらしかった。

──有紗は絶対に守り抜く。今回のような事はもう二度と起こさない。





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