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リリ 1



 しばらく一人で難しい顔をしていたフェリスが、ソファでくつろいでいるリリの所へやってくきた。

「わ、青い」いつもはグリーンのソファの色が薄青い色に変わっていた。

「こっちも『青の島』もどきにしてみた。どお?」そう言って、リリはソファを手で軽く叩き、フェリスに腰かけるよう促した。

「うん、癒されそう」フェリスはリリの隣にズボッと座った。

「私はもう癒されてる。もっふもふー。マニュちゃんの腹毛、たまらないー」マニュちゃんがリリのお腹の上で仰向きになって、リリにお腹を撫でられながら、舌を出してデローンと脱力している。

「ははっ、マニュちゃんも気持ち良さそう」フェリスは微笑んだ。

「プリちゃ、寝た?」

「うん。やっと。お姫様お姫様って、ちびニャ相手に興奮してたけど」フェリスはリリの肩に頭を持たせ掛けた。

「ちびニャもすごく喜んでる。プリちゃがここに来なくなって、ちびニャすごく寂しがってたから。またいつか会えるよって言ってはいたけど、こんなに早いとは思わなかった。フェリちゃが言う通り、ここは純粋でないと…だから、次にプリちゃに会えるのはきっとプリちゃが死んだ後だろうなって思ってたからね。ちびニャ、プリちゃがかわいくて仕方ないみたい」

「プリエの方が、かわいい、かわいい、にゃーって言ってるのにさ」フェリスはフッと笑った。

「ちびニャは『見た目は子供、中身は大人』だからねー。プリちゃの事、小さい頃から見てて自分の子供みたいに思ってたみたい」

「え、そうなんだ。それでずっとひっついてるのか。あれ?僕は?僕も子供の頃から見てるのに」フェリスは少し口を尖らせた。

「何、拗ねてるの?フェリちゃは私の子供でしょ。ちびニャと同列だし」

「あぁ、そっか。けど、リリすごいや」

「あれの事?」リリは先ほど作った王冠に目をやった。

「あれもだけど。あんな楽しそうなプリエ、久しぶりに見た」

「ふふっ、そりゃね、こっちの方が楽しいでしょ。そもそも向こうは色々あるのが当たり前なんだし。それに、プリちゃ、猫好きだしねー」

「それはあるけど、ケーキもあれもプリエのツボついてた。リリ、なんでわかったの?守護者でもないのに」

「んー。なんとなく?あーゆーの好きそうかなーって。まあ、小さい頃も見てるから…プリちゃ、お姫様好きだったよね」

「けど、やっぱり、リリすごい。僕、守護者でも良くわかんないのにさ」

「そんな事ないでしょ。何考えてるか筒抜けなんだから」

「そうだけど、そうじゃなくて…ほら、なんか怒らせちゃうって言うか…そんなつもりないんだけど」

「あー、あれは、フェリちゃ、慣れてないからね。こっちで育ってるから、仕方ないよ」

 リリが手を離すと、マニュちゃんは、体を起こして、リリの横にピッタリとひっついて丸くなった。

「けど、守護者やらせて貰ってて間接的にだけど向こうも経験してるのにな…」フェリスは小さく溜息をついた。

「ほら、いじけてないで。おいで」リリはフェリスの体を倒して自分の膝の上に頭を乗せて膝枕をした。「お疲れにゃんにゃん、なでなで」そう言いながらフェリスの頭を撫でた。「フェリちゃの髪、猫っ毛で、わりと良い線いってるんだけどな、惜しいな、やっぱり頭と猫のお腹じゃ違うんだよね」

「ククッ。プリエ、こんなの見たら、マザコンだ、気持ち悪い、変、とか絶対言うよ」

「ははっ、かもね。男の子なんてみんなマザコンなんだけどねー。うちの子たちも、ちゃあちゃん筆頭に男の子は全員甘えん坊だしー。しっかり自立してるレオンやみぃちゃんですら甘えん坊だもんね」

「リリ、僕を(・・)休ませようとしてくれたんだ」

「ん?まあ、それもある。プリちゃも青入れた方がよさそうだし。ちょっと嫌な赤が強くなってる感じがあったから。見た目には出ないみたいだけど」

「うん。プリエ、すぐにイラッとするみたい」

「フェリちゃも急な事だったし、一息ついた方が良い。ずっとついてなきゃいけないでしょ」

「うん…プリエ、いつどうなってもおかしくないし」

「プリちゃ、かなり特殊な状態みたいね。あんな薄いしっぽ、見たことないな。ユーディはなんか経験あるみたいだけど」

「うん。今はしっぽが消えかけてるから、僕の影響力が強く出ててここに居られるけど、しっぽが濃くなったらここに居られなくて下に飛ばされるかもしれないって。ユーディが言ってた」

「あー、そういうこと。猫たちに近い状態なのかな。だから色も出ないのか」と、リリはフェリスの髪を撫でながら独り言のように言った。

「気をつけた方が良いって言われたけど、どう気をつけるんだよ。僕、付いてく事しかできないよ。僕が行ける範囲を超えてたら付いてく事すらもできない」

「ユーディ、いつでも駆けつけるって言ってくれてたよ。優にもアイリーンにも了解とってるからって」

「ありがと…けど、ユーディだって優が寝てる時じゃないと無理だよね」

「まあ、そうだけど。他の守護者は?」

 フェリスはリリの膝の上で首を横に振った。

「フェリちゃに任せてるって事?」

「うん。今、話してた。任せるって言われた。なんで僕に任せるんだろ…最初はあそこまで下りられるのが僕だけだからだと思ったけど、その後も任せるってどういうこと?なんで僕?間違いなく、プリエの守護者の中で一番下っ端だし。守護者っていっても、ただ付いてるだけだよ? むしろ、僕の為に守護者にしてくれたんだと思ってたのに…」

「ふふっ。そんな卑屈にならないで。プリエの守護者の中で血の繋がりがあるのはフェリちゃだけなんだし」

「それはそうだけど、今、それって関係ない」

「そう?きっと、プリちゃにもフェリちゃにもどっちにとっても良いことなんだって」

「そうかな…プリエ、僕の事頼りないっていうし、つっかかってくるし…僕だって…そんなに好きでもない。自分の危機的な状況もわかってない」

「まぁ、大丈夫。私が思うに、多分、一石二鳥狙ってる」

「何それ?」

「あはっ。ま、兄妹喧嘩も良いじゃない」

「僕は嫌だよ」

「フェリちゃは平和主義で草食男子な甘えん坊だからねーちゃあちゃんと似てる。かわいーかわいー」リリはフェリスのやわらかい金髪を両手でぐりぐりした。「私がかわいいねーのピンク色濃くだしたら、すぐ来る。ほぉら来た」

 茶トラのちゃあちゃんはソファに飛び乗って、リリを見つめて、聞こえるか聞こえないかくらいの声で小さく鳴いた。

「ちゃあちゃん、かわいいにゃー」リリはちゃあちゃんを見てやさしく瞬きした。

 ちゃあちゃんはリリにお尻を向けた。

「お尻ぽんぽんだにゃー?ぽんぽんぽんぽんーもっと?もう、ちゃあちゃんは甘えちゃあだにゃー ぽーんぽーん」リリは片手でフェリスの頭を撫でながら、もう片方の手でちゃあちゃんのお尻をぽんぽんした。

 茶トラのちゃあちゃんは、気持ちよさそうにグルグル喉をならしている。

「ちゃあの気持ち、僕わかる。リリ、気持ち良いんだもん」フェリスはぽんぽんするリリの手を見ながら、ぼそりと言った。

「そりゃそうだ。これって愛情だからね。気持ちよくないわけがない」

「リリ大好き…ってちゃあが言ってる」フェリスはとろーんとした目で言った。

「ふふっ、私も好きよー。みーんな大好き」

「うん。知ってる」フェリスは微笑みながら目を閉じた。

「あーん」ソファの下で声がした。

「あれ、あんちゃんも来たの?」

 小柄な三毛猫のあんちゃんは、ソファに飛び乗って、大きな瞳でリリをみつめてもう一度『あーん』と鳴いた。

「あんちゃんの『あーん』、かわいいにゃー」

 あんちゃんは、リリの腕におでこをごっちんと何度かぶつけて、ちゃあちゃんの隣に体をひっつけて並んだ。

「あんちゃんもぽんぽん?あんちゃんは女の子の中で一番甘えたさんだにゃーあんたんのお尻ぽんぽんはやさしめねー」リリはそう言って、あんちゃんのしっぽの付け根をやさしくぽんぽんした。

 僕、リリに育てて貰って幸せ…

 見る間に一匹二匹と猫たちが集まってきて、大きなソファはあっという間に猫で埋もれた。

 猫にまみれて、リリに包まれてる…気持ち良いな。ずっと、こうしてたいな…




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