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創造


 「よしっ。これでどうだ!」リリがそう言うと同時にテーブルの真ん中に大きなケーキが現れた。本当にちょっと待っただけだった。

「かわいいー!」ケーキを見るなり、プリエが歓喜の声をあげた。「虹のケーキ!こんなの見たことない!」

 7段重ねの塔のようなケーキ。ウェディングケーキ並みの大きさだ。白い生クリームがベースになっていて、全体に色とりどりのカラフルな小さな猫の顔型トッピングや金銀キラキラの星形トッピングがちりばめられている。フリルのような形に絞られているピンク色と白の生クリームのコラボレーションも素晴らしい。もちろん苺もたっぷり乗っていて、小花やミントの葉がかわいく添えられている。中段の良く見える場所には猫の顔型の水色のチョコプレートがあり、『☆いらっしゃい プリちゃ☆』と虹色の文字で描かれている。そして、頂上には、でんっと大きな虹色のリボン型のチョコレート細工が飾られていて、太いリボンの先はきれいに波打って下まで流れている。波打つ虹色のチョコのリボンには所々に猫の形の立体的なクッキーがかわいく乗せられている。プリエにとって、ケーキが突然現れた不思議を後回しにしてしまう程の魅力は十分にあるケーキだった。

「ほんと、リリすごいや。僕、こんなの思いつかない。けど、これ大きすぎない?」

「良-じゃない。向こうでできない事やった方が楽しいでしょ。はい、どーぞ、召し上がれ」そう言って、リリがプリエの前に手を差し出すと、リリの手に金色のフォークが現れていた。

 プリエは条件反射的にフォークを受け取って、ケーキを見て、不思議そうにリリを見た。「どうやったの?」

「想像力って創造力なの。ああ、えっと、こっちではね、想像…思い浮かべたものをすぐに形にできる」そう言いながら、リリはプリエの前に苺の形をしたケーキ皿を作り出した。

「あっ…これもかわいい」

「想像力が豊かな人は色んな物が作れる。乏しい人は作れない。原理は向こうでも同じだよね」フェリスが補足説明を始めた。

 ん?どういう事?

「向こうでだって、まず頭の中でこんなものを作りたいってイメージして、色んな手段でそれを形にして表現しようとする。だろ?」

「うん?まあそうなのかな」プリエは少し首を傾げた。

「こっちはそれが瞬時にできるってだけの事」

「へー。良くわかんなけどすごい。 あ、サビママの鰹節!」プリエはリリを見た。

「あ、そうそう。あれも私が作ったの。ちびニャが遊んでたネズミもよ」

 ちびニャがプリエの頭からテーブルに飛び降りて、生クリームを舐めようとした。

「あ、ちびニャ、こんな甘いのダメ」プリエはちびニャの小さな体を両手で押さえた。

「ああ、食べて良いよ。離してあげて」リリは微笑んでいる。

「え、でも、猫って甘いのとか塩辛いのとかダメなんじゃ?」不安に思いながらもプリエはちびニャを離した。ちびニャはすぐに生クリームを舐め始めた。

「よく知ってるね」リリは少し驚いた様子で言った。

「猫飼いたくて、調べたことあるから」プリエは心配そうに生クリームを舐めているちびニャに目をやった。

「あっちではダメだけどね、こっちではOK!」リリの猫耳がピンッと立った。「食べちゃダメな理由は、体に悪いから。でしょ?こっちでは何食べたってどこも悪くならない。悪くなるのは肉体だから。だから、好きなもの好きなだけ食べて良いの」リリは嬉しそうだ。

「あ…そっか」

「だから、プリちゃも、そのケーキ、全部食べても問題なし!毎日ケーキ食べ続けても太らないし病気にもならない。ダイエットも気にする必要なし。良いでしょー?」リリはキラキラの大きな目でプリエを見た。

「うん」プリエは安心した顔でちびニャを見た。

 ちびニャは小さい口で一生懸命クリームを舐めては、一生懸命、口をくちゃくちゃして食べている。

「ちびニャ、おいしい?」プリエはちびニャに話しかけた。

 ちびニャはプリエを見て「みゃー」と返事した。

「ちびニャ、ホントにかわいいにゃー」プリエはまたメロメロの顔をした。

 なんだよ、プリエだって猫言葉なってんじゃん。

 フェリスはこそっと笑った。

 いつの間にかそばに来ていたでっかい黒白の猫が、テーブルの上に向かって鼻をヒクヒクさせ、テーブルの上にドンッと飛び乗った。

「わっ。びっくりした」プリエは思わず声をあげた。

 のっそりとした雰囲気の、聞かなくても雄猫とわかる本当に大きな猫。黒白と言っても、黒がほとんどで黒猫が白いマスクをつけて白いソックスを履いているような柄をしている。長毛種が混じっているのか、少し毛足が長い。

「ポンタも食べる?」リリが黒白猫に声をかけた。

 ポンタはクンッと一嗅して生クリームを舐め始めた。

「なんだ、ポンタ、生クリーム好きだったの?言えばあげたのに。 え、遠慮してたの?」リリは少し沈んだ顔をした。

 あれ?リリの色…今度はくすんだ?

「ごめんね、ポンタ。一番新入りだからって遠慮しないで何でも言えば良いんだよ」リリはポンタにやさしく声をかけながらそっと背中を撫でた。「飼い主さんがこっちへ来るまでは、ここがポンタのお家なんだからね。私がポンタのおかーさんなんだからね。甘えて良いんだからね」

 ポンタはリリを見て、またクリームを舐め始めた。舐めていると生地が出てきて、ちょっとかじって食べた。が、何か違うと言いたそうな顔をして、またチビチビと生クリームだけを選んで舐め始めた。

「ケーキ食べたい子、一緒に食べよー」リリが家中の猫たちに向かってそう叫んだ。

 寝ていた子たちも、寝ぼけた顔をあげて、耳をリリの方へ向けた。「おいでー」リリが手招きした。家の中に居る猫たちが集まってきた。

 わっ、すごい。10匹どころじゃない、もっといる。何匹いるんだろ…数えられない。

「はい、どーぞ」リリは少し生クリームを指にとって、やってきた猫たちの鼻先に持っていった。片手では全然足りないので、両手を使っている。嗅ぐだけで、要らないと去っていく猫、とりあえず舐めてみてやっぱり要らないかなと去っていく猫、舐めるか舐めないかどうしようか迷っている猫、もっと頂戴とせがむ猫、色んな()たちがいる。良く見ると食べ方も色々だ。お上品にちょっとずつ舐める()、一気にカプッとくわえる()、指まで食いつきそうな勢いでかぶりつく()。リリは要らないという()に代わりに煮干しなんかを出してあげている。フェリスもリリと同じように指に生クリームをつけて猫たちにやっている。

 うわー楽しそう。あたしもやってみよ。

 プリエも指に生クリームをつけて、猫たちの方を見ると、後ろの方で落ち着いて順番待ちしているサビママと目があった。

「サビママ」生クリームをつけた指を前に出して呼んでみた。サビママはプリエの方へゆったりと歩いて来て生クリームをクンクンし、少しだけ舐めた。が、プリエを一瞥してまたリリの順番待ちをしに行った。

 サビママ、生クリーム、お気に召さなかったのかな?

 と、プリエが考えていると、すぐにサビママの残した指の生クリームめがけて一匹の猫がトタトタと小走りにやってきた。突進してきたと言う方が正確かもしれない。プリエは指をひっこめる余裕もなかった。

「食欲魔人の登場だ」フェリスは他の猫に生クリームを舐めさせながら、含みのある顔でそう言った。

 白地にサバ柄の入った毛色の、わりと小柄な猫で、右目が小さく萎縮している。猫はプリエの指の生クリームを一瞬できれいに舐めきると、テーブルの上を見上げてお尻を小刻みに震わせ、トンッと飛び乗った。

「その子、マニュちゃんよ。女の子なんだけど…食べて良いよってくれるものは、とりあえず何でも食べられるはず。ってポリシー持ってる」リリも含みのある顔で笑った。

 マニュちゃんはケーキをクンッと一嗅して生クリームを舐め始めた。かと思うと、ケーキに思いっきりかぶりつきだした。生地も一緒にばくばく食べている。

 その、猫らしからぬ豪快な食べっぷりに、プリエは口を開けて見入ってしまった。

 マニュちゃんは苺の大きい塊が口に入ると、ペッと吐き出した。とりあえず、まず口に入れてみるスタイルらしい。大きい苺を避けるように、生地と生クリームの多い所をガブガブと食べ進んだ。小さい苺は構わずに食べている。

「あ、そこばっかり食べたら…」とプリエが言いかけた途端、ケーキが傾きそのまま横に崩れた。塔の崩壊だ。

「あーあ、やっちゃったよ」フェリスは苦笑いした。

「あははっ、マニュちゃん」リリは声をあげて楽しそうに笑っている。「良いよ、そのまま食べちゃえ」

 マニュちゃんは倒れるケーキを上手によけて、何事もなかったかのように、倒れてきた生クリームたっぷりな部分をはぐはぐと食べ続けている。ヒゲに生クリームがつくのもお構いなしで、食欲魔人と呼ばれる理由が良くわかる食べっぷりだ。

「あはっ、すごい、この子」プリエも何だか可笑しくなって笑っていた。「あたしも食べよー。無くなっちゃいそうだし」プリエは倒れたケーキをつついた。

 ケーキが倒れて、しばらく動きを止めていたちびニャも一生懸命に生クリームを舐めてはくちゃくちゃを再開した。ポンタも、マイペースに地道に生クリームだけ選別してちょっとずつ舐めている。

「猫と一緒にケーキ食べるなんて初めて」プリエはケーキを食べた。「おいしー」プリエは満面の笑顔になっていた。

「僕も食べて良い?」フェリスはプリエに確認した。

「え?別に良いけど」

 プリエがそう言うと、フェリスの手にフォークがあらわれた。

「あ。フェリスも作れるんだ?」

「え?ああ、これくらいはね。けど、リリみたいな素敵なのは作れない。得意不得意はあるけど、上の人って基本的に想像力が豊かだから、素敵なものが作れるんだ。けど、リリのは特別すごいんだ」フェリスは自慢気にそうい言って、嬉しそうな顔をした。

 フェリスって、やっぱりマザコン?

 フェリスは一瞬苦い顔をして、ケーキをつついた。

「私のはユーディが太鼓判押すくらいだからねー。得意って言っちゃって良いと思う」リリは得意気な顔で猫耳をピンッとたてた。

 ちびニャとポンタは、満足したらしく、舌で口を舐めたり、手を舐めて口周りをゴシゴシとして、食後のキレイキレイを始めた。

「この家作ったのもリリだし」フェリスがケーキを食べながら言った。

「え、すごい」プリエは少し家の中を見回した。

「すごいでしょ」リリはまた得意気に言って、水の入った器をちびニャとポンタの前に作り出した。

「わ、手品みたい。あたしにもできる?」プリエは期待に満ちた顔でリリに聞いた。

「今のプリエは無理かな」リリはプリエの消えかけの銀のしっぽをチラっと見た。

 今?「いつかできる?」プリエは首を傾けてリリに尋ねた。

「うん。いつかね」

 プリエは嬉しそうな顔をした。

 バクバク食べていたマニュちゃんが、少し咳込んだ。

「マニュちゃん、あわてて食べるから。大丈夫?」リリが声をかけた。

 マニュちゃんは、リリに小さな顔を向けた。白地の顔に口から鼻にかけてしみのような茶色の柄、おでこにも不規則にサバ柄が入っている。お世辞にも一般的にはかわいいと言われる顔ではないが、チロッとピンク色の小さな舌が出ていて、片目のせいなのか少し斜めに上向き加減で見上げる様子と合わさって、とぼけたような雰囲気がなんとも言えず愛らしい。他の猫とは一風変わった独特のかわいらしさがあった。

 マニュちゃんは一瞬顔を向けただけで、すぐにまたガツガツとケーキを食べ始めた。

「マニュちゃん、すごい、ケーキ全部食べきりそうな勢い」プリエは目を丸くしてマニュちゃんがケーキを食べるのを見た。

「ははっ、かもねー。この子、底なしだから。向こうに居た頃から限界がなかった。心を鬼にして食べる量制限してたからね」リリは苦笑いした。「体調悪くても相当やばい状態になるまで食欲が落ちない子だった。向こうで最初に出会った時も、この子、必死にゴミをあさってた。成猫になったばかりくらいで、そうね、人間で言うとちょうど今のプリちゃくらいの歳頃かな。ガリガリで片目で目やにもすごくて。見かねて連れて来たら、お腹の虫を吐いてお医者さんに危険な状態って言われて、何故か前歯も抜けててないし、皮膚も一部ただれてて、色々と酷い状態だった。けど、この子の食欲見た時、きっと大丈夫って思えた。何が何でも生きるんだって言ってる気がした。思った通り、この子は生き延びた。たのもしい食欲よ」リリは誇らし気な顔で、バクバクとケーキを食べているマニュちゃんを見た。

 この()…マニュちゃん、そんな辛い思いしたんだ…

『どんなに辛くても最後まで生きようとする』プリエはリリの言った言葉を思い出した。

 マニュちゃんもそうだったんだ。

「あ、マニュちゃんの名誉の為に言っておくとね。この子、すっごく良い子よ。向こうで猫家族が増えてかなり大所帯だった時、この子が一番古株でね、長女として色々我慢もしてくれたし、頑張ってもくれた。この子には、ほんとに色々助けられたの。私の自慢の娘。こっちでは好きなだけ食べて好きな事してゆっくりして欲しい。好きなだけ甘えて欲しい」リリはマニュちゃんがケーキを食べるのを穏やかな顔で見ながら言った。「それとね、マニュちゃんのお腹、もっふもふなの、気持ち良いよー、今度触らせてあげるね」最後に猫耳をピンッと立てて、そう付け足した。

 もっふもふ?

「リリは、猫の腹毛フェチなんだ」

「何それ?」プリエはキレイキレイを終えて、またプリエの腕をよじ登るちびニャを気にしながら聞いた。

「って、リリが自分で言うんだよ。ふわふわしたちょっと長めの猫のお腹の毛が好きなんだって。良くマニュちゃんを自分のお腹の上で仰向きにして、お腹の毛触って気持ち良さそうにしてる」

 へ?それって変じゃない?

 フェリスは不満気な顔でチラッとプリエを見た。

「フフッ、実はポンタのも密かに狙ってるのよねー 間違いなく長毛入ってるからきっともっふもふのはず。ほら、見て、あのお腹」リリは場所を変えて全身の毛づくろいをしているポンタに目をやった。ポンタは背中を丸めてパンダのように座り、後ろ足を片方ピンッとあげて股の毛を舐めていた。

 なんか、ポンタ、おやじっぽい。

「指がズボっと埋まりそうな毛足の長さ、密生具合」リリはポンタのお腹を見ながらそう言って目を細めた。ポンタは何かを感じたのかそのままの姿勢で顔を上げた。お腹の毛も黒で、真ん中に一束だけ白い毛が生えている。ポンタは少しの間、耳を立ててそのまま停止していたが、また毛づくろいを始めた。

「あのちょっとだけ白いとこがまたなんとも言えないのよね…ああ、触りたい。けど、今はまだ我慢…」リリは苦悶するような表情で独り言のようにそうつぶやいた。

 リリ、やっぱり、変。

 フェリスはチラっとプリエを見て口をへの字に曲げた。

 最後までケーキを食べていたマニュちゃんがテーブルを降りて、食後のキレイキレイを始めた。見ると、ケーキは完食に近い状態になっている。苺の大きな塊や、トッピングが散らばってはいるが、生地と生クリームはほぼ完全になくなっている。

「ケーキ、全然大きすぎなかったね」フェリスは苦笑いした。

 リリはマニュちゃんの前に水の入った器を出して言った。「さぁて、ケーキパーティも終わったし。もう、寝ちゃおっか?」

「寝なくて平気なんでしょ? あ、ちびニャ、頭乗るの?」ちびニャがプリエの髪をよじ登ってあっという間に頭の上に到着した。「あはっ、ちびニャ、登るの早くなってない?」

「寝ても良いんだよー。プリちゃ、色々あって疲れたでしょ」リリは大きな瞳でプリエを見た。

 疲れてるのかな?色々あったのは確かだけど…

「ここ、楽しくて疲れてる気がしない」そう、こんなに楽しいの久しぶりな気がする。

「んー、けど、今日()寝なさい。プリちゃの寝室作ってあげるから。ちょっと待ってね」リリは立ち上がって、部屋の何もなくて広々としている辺りをしばらく見つめた。リリの猫しっぽがゆっくりと揺れている。「うん。これだっ!」リリがそう言うと同時に猫しっぽがピンッと立った。

 突然、リリが見つめていた場所に、直径2~3mほどの大きな銀色の王冠のようなものが現れた。

「何これ、キレイ!」プリエが感動の声をあげて、王冠のそばまでかけ寄った。

「王冠みたいだ」フェリスも王冠のそばまで行って物珍しそうに見た。

 全体にキラキラのクリスタルのようなものが施されていて、本当に宝石で飾られた王冠のようだ。側面は八角形になっていてその一面が扉になっている。扉の上には一等大きな青い石が輝いていた。

 猫も数匹やってきて、物珍しそうに大きな王冠をクンクンと嗅いで、首のあたりを王冠にこすりつけた。

「中へどーぞ」リリはキラキラの目でそう言って、扉を開けた。

 中も外と同じようにキラキラしている。ただ、中は全体的にほの青い。壁には8か所、シャンデリア風のランプが取り付けられていて、天井の中心からふわっとした薄青いシフォンの天蓋のかかった水色のフリフリのベットがど真ん中にある。 

「うわーなんかプリンセスベットみたい!」プリエは中を見て嬉しそうに言った。頭の上のちびニャも首を伸ばして一緒に中を見ている。

 フェリスも横から中を覗いた。「わ、まるで『青の島』みたいだ」

「そうそう。『青の島』+お姫様風にしてみた。きっと、少し落ち着けるでしょ」リリが楽しそうに言った。

「『青の島』って何?」

「こっちに全体が青っぽい場所があるんだ。水辺に囲まれてるから『青の島』って呼ばれてる。休息の場所。疲れた人が癒されるための特別な場所。そこは全体的に青いんだ。ホントにこんな風な感じ」フェリスは感心した様子で中を眺めた。

「と、プリンセスドレス風のネグリジェね」リリは大きなキラキラの目でプリエを見た。

 プリエの服が水色のフリフリのドレスのようなネグリジェにかわった。

「お姫様抱っこもして貰ったんだし、お姫様気分満喫コースね」リリの猫耳がピンッと立った。

「え?あ」プリエは服がかわっている事に気づいて、驚いて下を向いた。さすがのちびニャも一瞬落ちかけたが、すぐにバランスをとった。

「あぁ、はいっ」リリがそう言うと、プリエの前に姿見の鏡が現れた。

「へっ、え!リリ、ホントにすごい!シンデレラの魔法使いみたい」プリエは鏡を見ながら、嬉しそうにクルッとまわった。「このドレスもすっごいかわいいー。ねー、ちびニャ」プリエは鏡越しに頭の上のちびニャに笑いかけた。

「気に入った? え、ふふっ。ちびニャも一緒に寝るって言ってるよ」リリはプリエに微笑みかけた。

「え、ホントに!?猫と一緒に寝るの夢だったの!ちびニャ、一緒にお姫様しよ」

「じゃあ、ちびニャもお姫様ねー」リリがそう言うと、水色のふりふりリボンがちびニャの首に現れた。

「ちびニャ、かわいいー」プリエは頭の上に手をやってちびニャをおろした。「似合うよー」手の上のちびニャに向かって言った。

「みゃー」水色リボンをつけたちびニャは、プリエの手の上でかわいく返事した。

「水色フリフリお揃いだにゃー、かわいいにゃー」

 プリエ、もう、ニャーニャー言ってるし。

 フェリスは、フッと笑った。

 こんなに楽しそうにしているプリエ、見るのいつぶりだろ? プリエはここに来て楽しそうだし、笑ってるし、元気だけど、しっぽは相変わらず消えそうなままだ。あっちに戻ってくれないと、僕も困るんだけどな…

 フェリスは楽しそうにはしゃいでいるプリエの銀のしっぽを見て、小さく溜息をついた。



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