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電脳戦線黙示録~War of The Apocalypse~  作者: Win-CL
第五章 その名は『ベアトリーチェ』

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2019年 1月 閑話


 年越しイベントも最大の山場を過ぎたためだろうか。

 《大図書館》の方も、自分達が帰ってきた頃には人が殆どいない状態だった。


『ただいま帰ったぞ!』

『おかえり。明けましておめでとう』


 それでも、[ダンタリオン](図書館の主)は相変わらずそこにいて。

 年越しの熱が冷めやらない[ベアトリーチェ]を、暖かく迎えていたのだけれど。


『年越しイベントはどうだった?』

『人がたくさんいて凄かったぞ! とっても賑やかだった!』


 身振り手振りで、その興奮を伝えようとしている[ベアトリーチェ]。


 初めての大きなイベント、初めての現界がよほど嬉しかったのだろう。まぁ、地獄や天国に比べれば、現界の方が建物のバリエーションはずっと多い。地形も高低差があったりと、眺めを楽しむには申し分のない場所だ。


『ログインしてたなら、[ダンタリオン]も参加すればよかったのに』

『ここから離れるのはどうもね……』


『…………』


『どうしたんだい? [グラシャ=ラボラス]』


 無言でいたことを心配したのか、[ダンタリオン]に声をかけられる。

 ……この際だから聞いてみるか。何かしら情報が届いているかもしれない。


 それが地獄だろうが現界だろうが、どこで聞いたんだと言わざるを得ない情報をなんだかんだで持ってたりするし。[ダンタリオン]のネットワークも、いろいろな意味で侮れない。


『……イベント中、[シトリー]がいたような気がしたんだが……こっちでは見てないか?』


 年末年始にログインするという話を聞いた覚えはないし。さらに言うなれば、今の状況で、わざわざ教えてくれるとも思えない。


『……こっちには来てないね。ログイン状況も見てないや。イベントの様子だけ、覗きに来たんじゃないかな』

『そうか……』


 自分もあの後、直ぐにログイン状態を確認したのだけれど――ログアウト状態となっていたのは言うまでもない。最終ログイン時間が表示されないことを、恨めしく思ったのも言わずもがな。


『ゆっくり時間を取れないときもあるさ。なんたって年末年始だからね。……まぁ、僕も見かけたら声をかけておくよ』


『――で、だ!! [ブエル]がステージの上で踊っていてだな!』

『……盛り上がり過ぎじゃないか?』


 一応《図書館》だぞ。かなり今更だけども。


 [ベアトリーチェ]の力説の内容は、ステージの話に移っていたらしい。[ブエル]や[レミエル]の歌や踊り。カウントダウンを一緒に行ったことや、初めて見た花火の感想などなど。このまま徹夜で話続けるんじゃないだろうかという勢いだった。


 あまりに夢中になりすぎて、こちらの声など耳に入っていないらしい。ロッカーばりに椅子の上に立って、手をぶんぶんと振っている。……そろそろ机に足を掛け始めるんじゃなかろうか。


『怪我するぞ。ちゃんと座ってから話せ』

『よっぽど楽しかったんだね』






『ふわああぁぁぁ……』


 [ベアトリーチェ]の大きな欠伸。あらかた話しきって疲れが一気にきたのか、心なしか目蓋も重たそうだった。


『あーもう二時前だもんね』

『初日の出までは、流石に起きとけないよね』

『……教えなくていいんじゃないか? 徹夜は俺も勘弁だ』


 気が付けば、半日以上ぶっ続けでログインしていた。

 自分たちはともかく、[ベアトリーチェ]は限界だろう。


『それじゃあ――ふあぁぁぁ……また、明日な……』

『はいはい。おやすみ、ベアトちゃん』


 目を擦りながら、別れの挨拶だけして。椅子から降り、トコトコと休息スペースのあるカウンター奥へと引っ込んで行く。――寸前。


『――?』


 一瞬だけ身体が光り、[ベアトリーチェ]の服装が変わった気がした。


『――っ!? 寝間着スタイルっ!? ちょっとSS(スクショ)を撮りに――』

『おい』


 その瞬間を[ケルベロス]も見逃していなかったらしい。本気で後を追いかねない勢いだったので流石に止める。眠たかったところを妨害して不機嫌になられても困るし。


 それにしても、[ベアトリーチェ]の事になるとキャラが変わるなこいつ……。


『じょ、冗談だってー』

『嘘つけ』


 名残惜しそうに椅子へと戻る様子を見ても、本気としか受け取れない。

 ――かと思えば、今度は『あ、そう言えば』と、何かを思い出したようにまた立ち上がった。[ベアトリーチェ]並みに落ち着きがないな、おい。


『ベアトちゃんが、プレゼントにってこれを――』


 マフラーが良く見えるよう、その場でクルリと回ってみせる[ケルベロス]。そのひらひらと舞うマフラーの端っこに、淡く光る印が浮かんでいる。あの鐘楼で、[ベアトリーチェ]によって付与された印である。


『プレゼントって……その印のことかい?』

『うん。年越しイベントの時に貰ったの――』


 鐘楼であったことを簡単に説明する[ケルベロス]。主観が込み込みで実に伝わりにくい説明だったのだけれど、それでも[ダンタリオン]は理解できたらしい。


『はっきりとは分からないけど――多分、好感度が一定以上貯まったら付与されるシステムにするつもりなんだと思うよ。……[ベアトリーチェ]があんな感じだし、はっきりとしたラインを考えるのは難しいだろうけどね』


 好感度もクソも、[ベアトリーチェ]の感情のそれが現実の感情を模している以上、"こうすればいい"というガイドは作り難いのだろう。構いすぎても逆効果になるときもあるだろうし、システムとして組み込むには些か難があると思う。


『グラたんも貰ったんだよね。大切な友達からの、一生涯の宝物』


 自分の場合、[ケルベロス]のそれ(・・)と違って思い入れのあるアイテムじゃないため、いまいちピンとは来てないのだけれど――まぁ、大切な友達であることは間違いないだろう。


『譲渡・売買不可になってたりしてな』


 付与した本人|《[ベアトリーチェ]》も言っていた通り、彼女の独断(フライング)によるもののため、何一つ詳しいことが分からない。そのアイテムを手放したら印は消えるのだろうか? 残るのだろうか?


『いいじゃん。どうせ手放すつもりもないでしょ?』

『"たいせつなもの"ボックス行き、待ったナシだね』


『……まぁ、そうなんだけども』


 "あらゆる可能性を常に考えている"と言えば聞こえはいいのだけれど、単純に喜ぶことができず、いろいろ悪い方向へ考えてしまうのはもう癖だった。

 目に見えるメリットだけに意識を持っていかれて。いつか大きなしっぺ返しを食らうことになるのではないかと。そんな予感が、常に頭の隅に居座って。


 そして、こういう悪い予感に限って――近いうちに現実へと変わるものなのだ。


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