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電脳戦線黙示録~War of The Apocalypse~  作者: Win-CL
第五章 その名は『ベアトリーチェ』

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2018年12月 第1週―②

 ≪地獄の宮殿(パンデモニウム)≫での会合の翌日――

 さっそく[ベアトリーチェ]と街中を回ることとなった。


『ベアトちゃん、図書館にいるんだよね?』


 ――もちろん、[ケルベロス]付きで。


『ああ。悪魔陣営(こっち側)にいる間、[ダンタリオン]が預かるって話になったからな』


 いつも手口、ロビーで待ち伏せ、とは言ったものの――

 一人で任されるのも辛いと思っていたところだ。


 正直、お守りの対象が増えるという不安要素の方が大きいのだが。

 

――――


 ≪大図書館≫


『……凄いな』


 悪魔(ヒト)悪魔(ヒト)悪魔(ヒト)――

 今までに見たことのないぐらいの悪魔(プレイヤー)で、図書館は埋め尽くされていた。


 普段感じていた暖かさなどは無く。

 むしろ、熱気に包まれているかのような状態である。


『これ全部、[ベアトリーチェ]目当てか……』


 よく見ると列が作られており――

 恐らく、その最前列に目的の少女がいるのだろう。


「あ、ケロちゃん。それと、[グラシャ=ラボラス]も。いらっしゃい」

「お疲れ様ですー」

「凄い人だな、お疲れ様」


 途中途中で列の整理を行っている【ダンタリオン】のメンバーたち。

 すれ違う度に挨拶をしながら、先頭へと向かう。


『アトラクションの順番待ちみたいだね……』

『そんなにがっつく必要ないだろうに……』


 少なくとも、一月末まではいるんだぞ?


 先頭へ近づくにつれ、動きづらくなってくる。

 あまりの人の多さに辟易していた。


 そんな時――


『……? [ダンタリオン]からメッセージが……』


 どうしたものかと考えていた矢先に、メッセージが飛んでくる。

 自分たちが来たことを、メンバーから伝えられたのだろう。


「流石に人が多すぎるから、少し待ってもらえるかな?」


『……なんて?』

『人が少なくなるまで待ってくれってさ』


 仕方がないので、二人で図書館の端へと移動して待機することにする。


 …………


 三十分も経つ頃には人もはけ、どうにかして先頭までたどり着くと――

 [ベアトリーチェ]と[ダンタリオン]がそこにいた。


『やぁ、いらっしゃい。待ちわびていたよ』

『お疲れ様。……大丈夫か?』


 その声音はいつもと違い、少し疲れているように聞こえた。


『昨日、[ベアトリーチェ]を迎えてからずっとこんな感じでさ』


『ずっとって――』

『……まさか、徹夜!?』


『丁度、昨日今日とお休みだしね』


 驚く[ケルベロス]に、そう笑って答える[ダンタリオン]。

 [ベアトリーチェ]が眠った後、起こさないようにと番をしていたらしい。


『流石に眠たかったけど……。この勢いも、初日だけだと思うから』

 と言いつつも、欠伸の一つも出さない。

 なかなかのプロ根性だった。


 …………


 自分たちが入った時点で、入場制限(?)をかけていたのだろう。


 その後、一時間もしないうちに列は無くなり――

 ようやく、図書館にも静寂が訪れた。


 そして――

 今度は自分たちの番。


 案内役として、[ベアトリーチェ]と街を回らなければならない。


『[ダンタリオン]も[括木(くくるぎ)]も、他のみんなにも世話になった!』


 そう言って、図書館の職員(?)に手を振る[ベアトリーチェ]。


『いってらっしゃい。街巡り、楽しんできなよ』

『それではまた夕方に。楽しんできてください』


『それじゃあ、あとは任せるよ』

『お、お疲れ様……』


 どうやら、ログアウトせずに仮眠に入るらしい。

 いそいそとカウンターの奥へと引っ込んで行った。


――――


 テキストでの会話だけではなく、VC(ボイスチャット)にも参加できるらしい。


 相変わらず謎の技術力だが――

 移動しながらでチャットを打つのも面倒だったので、非常に助かっていた。


『こちら側の図書館も、なかなかに居心地が良かったぞ!』

『そりゃなによりだ』


 ひとえに[ダンタリオン]達の頑張りのおかげだろう。

 あの人数をよく捌いていたものだと思う。


 出る前に[括木くくるぎ]から聞いた話によると――

 [ベアトリーチェ]自身に、体力の概念があるらしく。


 写真会も、間に休憩を挟みながら行っていた様だった。


『こちら側では図書館を利用しにくる者が多かったな』

天国(向こう)は少なかったの?』


 [ベアトリーチェ]自身を目的に来るものはいても――

 図書館に調べものに来る天使(プレイヤー)は殆どいなかったのだと言う。


『こちら側に比べれば。[ラジエル]ですら殆ど外に出ていた』


 [ラジエル]――【ラジエル】、知を司る天使。そのグループの第一位。

 恐らく、向こう側の図書館には管理する者がいないのだろう。


『まぁ、[ダンタリオン]が特別な気もするけど……』


――――


 その後も、雑談を続けながら各所を巡ってゆく。

 歩幅も小さく、徒歩での移動は疲れるのか休み休みの街巡りだった。


 そうして二時間が経過した頃――


 ぐぅぅぅぅ。


『ん……?』

『今のなんの音?』


 [ベアトリーチェ]が急に立ち止まったため、追い越してしまう。


『いったいどうし――』


 振り向くと――

 両手でお腹を押さえ、顔を真っ赤に染めていた。


 …………。


『はああぁぁぁぁぁ! これなんてシャッターチャンス!?』

『……まさか、腹の虫まで』


 リアルすぎるだろ。

 ……この先、空腹システムなんて実装されないよな?


『お腹すいた? どこかで何か買ってこようか?』


 [ケルベロス]のその言葉に、少しだけ頷いた。

 本当にお腹が空いているらしい。


『いや、それなら――』


 この近くに、丁度いい店が――


――――


「おや、[グラシャ=ラボラス]じゃないか。またなにか必要なのかい? 最高の料理を振る舞うぞ?」


 ≪Trattoria del Diavolo≫


 訪れたのは、[ニスロク]――地獄の料理長の店だった。

 食事をするならば、ここが一番だろう。

 案内も兼ねて一石二鳥だ。


 ……それに、下手な物を食べさせて体調が悪くなっても困る。


「[ケルベロス]も一緒か。九月もそうだったけどお前ら仲が――」


 ぐぅぅぅぅぅぅぅぅぅ。 


 料理の匂いも感じているのだろうか?


 空腹感が増しているのか――

 腹の鳴る音が、より大きく、長くなっていた。


『[グラシャ=ラボラス]……お腹が空いたのだが……』


 自分の身長の半分ほどしかない[ベアトリーチェ]が――

 服の裾を掴みながら、こちらを見上げてくる。


 ……すごい破壊力だった。


『お、おう。すぐに注文してやるから――』


「へぇ、誰がいるのかと思えば……。例の【サタン】様かね。始めまして、何か食べたいものはあるかい?」


『ケーキ!』

『即答か』


 おいおい。

 料理長にお菓子作りさせるのか。


「よし! ちょっと待ってなよ!」

「いけるのか!?」


「俺を誰だと思ってんのかね。地獄の料理長([ニスロク])だぜ」


 アイテムボックスから次々と材料取り出す。

 そして――


「和、洋、中華なんでもござれ――」


 と言っている合間に、イチゴのショートケーキが完成していた。


「ほうら、バフも完璧!」

「すごい……」


 料理ステータスによる付属補正値もMAX。

 あまりの完成度に、神々しい光さえ放っている。

 紛うことなき、最高の一品だった。


『……いいのか?』

「あぁ、悪魔長様にサービスだ。是非とも食ってくれ」


『……いただきます』


 恐る恐ると言った様子で手を伸ばす。

 そして一口齧って――


『……おいしい!』


 顔をほころばせていた。

 瞳が輝きに満ちていた。


『この料理を作ったシェフを呼べ!』

「目の前にいるだろ」


 むしろ作るところを見ていただろうが。


「いいねぇ。ここまで美味しそうに食べてくれる奴なんていないよ」

「そりゃあ、味は分からないからな。食べてるのはキャラクターだし」


 そう話している横で――

 二つ目のケーキの上に乗っかっているイチゴを摘んでいた。


『ふああぁぁぁ……。か……可愛い……』


 [ケルベロス]だけではなく――

 その光景を見かけた、道行く悪魔(プレイヤー)たちも一緒になって群がる。


 目には見えないが、SS(スクリーンショット)の嵐が巻き起こっているに違いない。


 そんなことも意に反さず。

 [ベアトリーチェ]はひたすら無心にケーキを頬張っていた。


――――


「余分に作ってるから、持って行きな。我らが悪魔長様へのサービスだ」


 お土産用のショートケーキを渡される。

 いつになくサービス精神旺盛だった。


「こんなに貰っても悪いだろ」

「別にお返しなんていいさ。まあ、最後に一枚だけ――」


 そう言って、最後に――

 店中の悪魔(プレイヤー)達を集めて、集合写真を撮った。


「宣伝用ということで。今後とも、ご贔屓に」


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