表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
電脳戦線黙示録~War of The Apocalypse~  作者: Win-CL
第四章 波紋

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

58/74

2018年 11月末 閑話


 バフ付与イベントが始まるまで、多少の待機時間があった。


 アルマゲドン中にリタイアしたプレイヤーも復活し――

 先の戦いについて、語り合っている。


 主力同士、全軍を上げての正面衝突。

 歴史に残る大勝負だっただろう。


 それを間近で見た、参加した。

 冷めやらぬ興奮が、ありありと伝わってくる。


 その興奮の渦の中、自分はと言えば――


『よくまぁ、ギリギリまで《奥義》を使わないで頑張ったよねぇ』

『だって……ねぇ? 「頼んだぞ」って言われたし……』


 [シトリー]と[ケルベロス]に挟まれ、針のむしろ状態だった。

 予告されていた通りの説教タイムである。


『あ、ああ……。ありがとな……』


 アルマゲドンが終わってからのこの時間を――

 こんなに長く感じたことがあっただろうか。


 なるべく逆鱗に触れないよう、慎重に動こう。

 なんとかして別の話題に逸らさないと……。


『く、[括木(くくるぎ)]も助かった。ありがとう』


 とりあえず、これ以上直接話すのは自殺行為だ。

 まずは、[括木くくるぎ]に話題を振って――


『いえ……図書館では“みんなで”って言ってくれましたし。それに、実際に飛び込んだのは叢雲(ムラクモ)ですから』


 ……盛大に失敗していた。

 いきなりの逆鱗タッチかよおい。


『言いだしっぺが“一人で戦いたい病”に侵されてるんだもんねぇ』


 ……冷たい色を含んだ声。

 トゲトゲしたと言うよりは、鋭利な刃物のようだった。


『……カバーできない所まで前に出たのは悪かったと思ってる。でも――』


 あれは半ば事故のようなものだったし――

 そうしないと、[ケルベロス]が《奥義》の的になっていただろう。

 だから、こうするしかなかった。


 ――とは言えなかった。


『……でも?』

『……結果的には勝てただろ』


 自分が[ЯU㏍∀(ルカ)]さんを抑えて。

 その間にみんなが敵の主力を倒して。


 そりゃあ、一対一では負けたけど……。


 全く計算していなかったわけではない。

 どこかで、上手くいくだろうと判断したが故の行動だった。


 過程はどうであれ、全員で勝利を掴んだことに間違いはないはずだ。

 そう自分を納得させながら、言葉を紡ぐ。


『運が良かっただけでしょ? たまたま[ЯU㏍∀(ルカ)]さんが他の天使と乗り込んできて、たまたま決闘に応じてくれて、たまたま――』


 いつもならば、一言二言で終わるはずが――

 今回は止まる様子を見せない。

 妙に噛みついてくる。


『[シトリー]……?』


 [シトリー]のいつもとは違う様子に、[ケルベロス]も不安げに声をかける。


『グラたんさぁ。もしかして――』


 [ケルベロス]の呼びかけに応えず、続ける[シトリー]。


 少なからず、勝利によって高揚していた自分の心を、深く抉ってきた。


『まだ、”自分は一人でもやれる”って勘違いしてるんじゃない?』

『――!』


 血が、噴き出したような感覚だった。


 “カッとなる”よりも、その表現の方がしっくりときた。


 それまでの熱をそのままに。マグマのように煮えたぎって。

 声を荒げてしまう。


『だから悪かったって――!』

『“だから”? だからってなんなのさ!』


『――みんなお疲れ様』


 ヒートアップしかけていたところに――

 静かに涼やかに割り込んだ声。


『[ダンタリオン]……』


 いつの間にVC(ボイスチャット)に参加していたのだろうか。


 そんな自分の疑問をよそに――

 何事も無かったかのように会話に加わる。


『今回のMVPは[グラシャ=ラボラス]だね』


『……本人は負けたけどねぇ』

『……無茶言うな。文句があるなら、お前が戦ってみればいいんだ』


 [シトリー]も出鼻を挫かれたのか、声のトーンは戻ったものの――

 相変わらずトゲトゲとした言葉が飛んでくる。


『……もしかして邪魔しちゃったかな?』

『そんなことないよ!? ありがとう!』


 …………


『もう! 二人ともせっかく[ダンタリオン]が労いに来てくれたんだから!』


 クールダウンに時間がかかっていた。

 上手く言葉が出てこない。


『……[バアル=ゼブル]の方が活躍してたんじゃないか?』


 素直にありがとうとも言えず――

 そう返すのがやっと。


 いろいろ見透かされているような気がして、落ち着かない。


『君が頑張ったから、[バアル=ゼブル]が活躍できたってことさ』

『…………』


 [シトリー]はまだ不満そうに口を閉ざしていた。


――――


『――そろそろみたいだね』


 雲が割れる演出が始まる――


 バフ付与のイベントが始まるのだろう。

 

 割れた雲の隙間から少女が降りてくる。

 前回と違い、服も、背中に生えた翼も黒く染まっていた。


 ――悪魔の翼だ。


 そして、大きく息を吸い――

 高らかに口上を述べ始める。


『我が名は悪魔長[サタン]! よくぞこのアルマゲドンで勝利を収めた! 神への反逆の力を受け取るがいい!』


 ……口調は変わらないらしい。

 今後、ずっとこの調子でいくつもりなのか?


『あああぁ! 来たよ来たよ! ベアトちゃん!』


 過剰に反応していたのは[ケルベロス]だけではない。

 今回アルマゲドンに参加した者の殆どが、この瞬間を待ち望んでいた。


 揃いも揃って単純な者ばかりだったが――

 それ故の勝利だということは認めざるを得ない。


 歓声――


 [サタン]を迎えた喜びで、テキストウィンドウが埋め尽くされていた。


『ほんと、カリスマだけは絶大だな……』


『――皆の者、よろしく!』


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ