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電脳戦線黙示録~War of The Apocalypse~  作者: Win-CL
第四章 波紋

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2018年 10月末 アルマゲドン―②


 自陣から様子を見ていた[シトリー]が、声を荒げる。


『どうしたの!?』

『まさか――』


 嫌な予感がする。

 こういう時は、決まってあの人(・・・)が――


『[カマエル]が直接陣地に乗り込んできた!』

『――!』


 案の定だった。

 このMAPだからこそ、起こり得た事態。

 このMAPだからこそ、起こしてはならなかった事態。


 チェックしていた上で、ここまで慌てているのだ。

 予想以上に速度で突っ込んできたのだろう。


 道中の悪魔()は完全に無視して行ったのか――?


『こっちはもういいけど、そっちは――』

『いいわけ無いだろ!』


『グラたん……こっちもマズいことになってるかも』

『なっ――』


 そして――

 この後に起こる参事は、類を見ないものだった。


 焦って自陣に戻ろうとした悪魔(味方)たちが――

 後ろに任せておけばいいものを、中盤より前の奴まで動き始めていた。


 当然そこから薄くなっていき、次第に戦線が崩れ始める。


()っ――』


 ――鹿()と続けることもできなかった。


 混ざって乱れてどころではない。

 混乱と呼ぶのも生ぬるい。

 むしろ混沌と呼ぶしかない。


 目の前から、横から。

 天使()たちがなだれ込んでくる。


『[シトリー]! まだリタイアしてないよね!?』

『“まだ”、だけどねぇ。括木(くくるぎ)サンが頑張ってくれたけど……』


 装備を揃えた甲斐もなく。

 叢雲(ムラクモ)もろとも一瞬で倒されてしまったらしい。


 仕方のないことだろう、今回は相手が悪すぎだ。


『あらら……。これは酷い。もう今回は完敗だねぇ』


 ため息交じりに出たその言葉は――

 アルマゲドンの敗北を、[シトリー]の諦めを表していた。


『もたないのか!? 今向かうから――』


 …………


 それっきりで[シトリー]からの返答はない。

 恐らく、[ダンタリオン]も――


『…………』


 暫く言葉が出なかった。


 指揮系統の喪失。

 これまでアルマゲドンを経験してきた中で、初めてなのではないだろうか。


 何とか立ちふさがっていた天使たちを倒し、周りの状況を確認する。

 ここはもう、他の奴に任せていても大丈夫だろう。


 ……既に勝ちの目が無いのは明らかだった。



『自陣に戻るぞっ』

『ちょっと! 準備をしてから――』


 このままだと、中盤にいる味方も喰い尽くされてしまう。

 少しでも被害を抑えようと、自分も自陣へと向かった。


 [シトリー]の言っていたように――

 もう結果は決まっているからと、捨て鉢になっていたのかもしれない。


 ≪月影迅≫を使用して、速度ブーストをかけて。

 少しでも早く辿り着こうとしたのだが――


 …………


 泣きっ面に蜂。

 弱り目に祟り目。


 どうやら不運というもの重なるらしい。


 自陣の入り口は天使()によって既にあらかた掃除されており――

 その場所の中心には、決して出会いたくない面子が揃っていた。


「なっ――」


「これはこれは、懐かしい顔が」

「ラッキー♪ [カマエル]に先越されてイラついてたけど、丁度いいのが来たじゃない!」


『ウソだろおい――』


 四大天使(TOPの四人)――!

 [カマエル]に続いて、こんな所にまで来たのか?


「≪Pay (形の) with (ない) blood (恐怖) and life (に怯えろ)≫」


 咄嗟(とっさ)に《奥義》を発動したのはいいものの――


 ここからどうする!?


 このまま四人のうち一人に攻撃を加えても、意味はないだろう。

 それならば、自陣に突っ込むか?

 この四人を相手取るよりは、まだ[カマエル]一人を相手にした方が――


 そう考えていたのも束の間。


 ――不運は、重なってゆく。

 幾重にも、積まれてゆき、重しとなってゆく。


『え、嘘――』


 少し遅れてやってきた[ケルベロス]が。

 敵の姿を確認する。


「今日は、次から次へと因縁の相手が来てくれるね」

「あの時は不覚を取ったが……。今度ばかりはそうもいかない」


 [ラファエル]が炎の剣を構えて、[ケルベロス]へと向かってゆく。


『待てっ! 下がって――』

『グラた――』


 一瞬だった。


 [ケルベロス]までもが――

 天使たちの≪奥義≫によって、一瞬でリタイアさせられてしまった。


 ≪Pay (形の) with (ない) blood (恐怖) and life (に怯えろ)≫の透過効果のせいで、間に割って入ることもできなかった。


『…………』


 たとえ、結果が変わらなかったとしても。


 一撃でも代わりに受けていれば――

 一瞬でリタイアすることも無かったかもしれない。


 そんな後悔をしているうちに、効果時間の二十秒になる。

 デメリットによって無防備になったまま、四人の中に放り出された。


「おやおや……。ずっと、そこにいたのかい?」

「助けに来た味方を見殺しにしちゃったんだ?wwww」

「……これは失笑ものだな。[グラシャ=ラボラス]」


 五秒間の硬直時間――

 それだけあれば、《奥義》でなくても。


 HPを全て削られるのには十分だった。


『くそったれぇ――!!』


 VC(ボイスチャット)のメンバーも全員がリタイアしているからだろう。


 普段では、滅多にしない行動――

 思わず拳を机に叩きつけていた。


 今までWoAを続けてきた中で、初めてのことだった。


――――


 無情にも、終戦の喇叭(ラッパ)が鳴り響く。


 時間切れではない。

 悪魔陣営の全滅によっての終わり。


 大敗だった。完敗だった。惨敗だった。

 どう動いたとしても、勝ちの目はなかった。

 勝負が始まった段階で、結果は決まっていた。


 そう考えて、少しでもダメージを抑えようとする自分がいた。


 それでも――

 ここまで悔しい負け方があっただろうか。


 たかがゲーム。されどゲーム。


『素人かよ……俺は……』


 ……思い知らされてしまった。


 現実世界じゃなくても――

 仮想世界の出来事でも――


 心に傷を負わされることが、往々にしてあるということを。


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