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電脳戦線黙示録~War of The Apocalypse~  作者: Win-CL
第三章 新たな能力

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2018年9月 第2週 ―②

『へー。見た目が結構変わるんだねぇ』


 [ケルベロス]の言う通り――

 悪魔の証拠(しるし)とも言える翼が大きく、禍々しくなっていた。


 ……まぁ、普段はアバターで隠しているから関係ないのだが。


『見た目はどうでもいいんだよ。問題は――その効果だ』


――――


 先ほど購入した物を装備した状態で、決闘フィールドの中で向き合う。


『さて、それじゃあ発動させるぞ――』

『はいはーい』


『…………』


 ちょっと躊躇(ためら)う。


『……どしたの?』


 ――ええい。ままよ。


「≪Pay (形の) with (ない) blood (恐怖) and life (に怯えろ)≫!」


 表示された技名は英文だった。

 『血と命を以て支払え』と読むべきなのだろうが――


 ……これが仕様なのだろう。

 著しく厨二心を感じずにはいられなかった。


 【サンダルフォン】の《Adonai(終わり無き)Melek(戦いの王国)》とは違い文章なのが、なかなかにクるものがある。


『天使は神名があるからな……』


 残念ながら、悪魔にはそういったものは無い。


 ……ということは、悪魔は全部こんな感じなのか?


 今後はwikiのページを開く度に――

 胸が締め付けられる思いをすることになりそうだった。


 あの時のようにカットインは表示されない。

 その代わり――発動後は体が薄く光るようなエフェクトに包まれていた。


『……で、どうなってる?』

『――消えてる。こっちからは姿が見えてないよー』


 ――透明化。これがこのスキルの効果。


 飛んでも走っても、砂煙が立つなどの画面効果は表れていないらしい。

 移動速度も多少は上昇しているようだ。


 確かに、暗殺がメインの仕事となる【グラシャ=ラボラス】にとって、とても便利な能力だが――


『それだけじゃない。ちょっと攻撃してみてくれ』

『了解!』


 と、[ケルベロス]が攻撃する瞬間――


 纏っていた光が消滅した。

 ……透明化が解除されたらしい。


『ちょっ待っ』

『え――』


――――


 ――このやろう。


 あろうことか、最大火力の攻撃を叩きこんできやがった。

 普通はもう少し軽めの技を使うだろうよ。


 ついでに――効果が切れた後は、デメリットがしっかり発生してる状態。

 身動きが取れないまま、直撃を受けた。


『流石に、永続はありえないにしても……。二十秒って、短くない?』

『どうだろうな……。二十秒もあれば、だいぶ戦略の幅が広がる』


 ――別に姿を消している間、必ず攻撃する必要はないのだ。

 その間に全力で戦線を離脱してもいい。


 むしろデメリットがある以上――

 そっちの方がメインの使い方になるだろう。


 《バインド》等の妨害効果と組み合わせて使えば、使い勝手は格段に跳ね上がる。

 一秒一秒引き延ばして戦うスタンスの自分にとっては――

 これほどありがたい能力もなかった。


…………


 そして、リチャージが終わった。


 どうせ決闘フィールドで死んだ所でデメリットはないため――

 回復はせずにそのままテストを続ける。


『よし、それじゃあ行くぞ』


 ――《奥義》を発動する。

 再び、体が薄い光に包まれた。


『今度こそいくよー』


 [ケルベロス]の放った炎の槍が、自分の体を通り抜けてゆく。

 無効化ではなく――透過。


『……十分過ぎるレベルだな』


 派手さも殲滅力もないものの、いかにも自分向きな能力だった。

 戦闘時でも非戦闘時でも使えるというのは、最大のメリットだろう。


 ……使いどころは考えないといけないようだが。


 その後もいろいろ試してみる。


 建物や地形を通り抜けられるかどうか。

 相手によるデバフ効果は受けるのかどうか。

 自身の強化、回復は有効かどうか。


 ……なにか強請(ねだ)られるかもと、声をかけていなかったが――

 [シトリー]にも付き合ってもらうべきだったかもしれない。


 [シトリー](あれ)の“目”でも確認できなければ完璧だろう。


『我を過ぎれば憂いの都あり

 我を過ぎれば永遠の苦患あり

 我を過ぎれば滅亡の民あり――』


『……ん?』


 突如聞こえてきたのは――どこかで聞いた事のあるフレーズ。

 何かの詩だったろうか。


『義は尊き我が造り主を動かし

 聖なる威力、比類なき智慧、

 第一の愛、我を造れり――』


 その詩は[ケルベロス]の方から聞こえてくる。

 ……いきなりなんなんだ?


『永遠の物のほか物として我よりさきに

 造られしはなし、しかしてわれ永遠に立つ――』


『≪This (汝等) gate (ここに) divides (入るもの) hope and (一切の望み) despair(を棄てよ)≫!』


 スキルの発動と共に――

 巨大な門が勢いよく地面からせり出してきた。


 それ(・・)は、あっという間に視界を埋め尽くす。

 ジャラジャラと音を立てているのは、門を覆っている鎖なのだろう。


『地獄の門――』


 [ケルベロス]が詠んだ意味が分かった。

 このスキル名は――地獄の門に刻まれている銘文からの引用だ。


 ダンテ・アリギエーリの『神曲』地獄篇(じごくへん)第三歌。

地獄の門番(ケルベロス)】の名に相応しい《奥義》だった。


 まさか、こんなところで格差が生まれるとは……。

 知名度の低さがここで響いてくるなんて。と、地味に落ち込む。


 せめて――

 『己が(みち)に人に通さず。殺してまでもこれを(さえぎ)る』ぐらいは欲しかった。

 ……ここで文句を言ってもどうにもならないのだが。


『どうよ! 今の詠唱っぽくってカッコよくない!?』


 それより、驚くべきは――

 いくら有名なものとはいえ、一文をそら(・・)で詠んだ[ケルベロス]だろう。


『あ、あぁ。確かに――格好良かった』


 感嘆の吐息が漏れる。

 やっぱり、家に魔導書でも置いてあるんじゃなかろうか。


 ――門が出現している時間は五分間。


 いくら攻撃を加えてもびくともしない以上――

 地形の一部として壁を出現させるものとして考えればいいだろう。


 そのためか、自分の≪Pay (形の) with (ない) blood (恐怖) and life (に怯えろ)≫で通り抜けることもできなかった。


『ここに入るもの』もなにも――

 そもそも入ることができないのは門としてどうなんだ?


 他の《奥義》によって破壊される可能性が無いわけでもない。

 そこらについては、別の機会に確認してみる必要があるだろう。


 それじゃあまた今度、とお開きにしようとしたところで――


 『[ケルベロス]さんに決闘を申し込まれました』とウィンドウが表示された。


『最後に真剣勝負といきますか!』


 別段、断る理由もなかった――


 ――あの時とは違うから。


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