表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
心の無いジョージとドラゴンの少女  作者: yamainu
第1章 『高地の国ドルク』
1/28

「山の頂のドラゴン」

 1、「山の頂のドラゴン」


 真っ暗闇。光のない洞穴の奥。

 宝石が敷き詰められた硬い寝床で、彼女は眠っていた。

「ぐごごごごごご……っス……。

 ぐーすかぐーすか、ぐごごごご……っス……。

 ……」

 可愛らしい(?)寝息に混じって。

 唐突に。

 腹の音。

 ぐううううるるるるるる!!!

 自分の腹から鳴るうるさい音に、彼女は閉じたままの目をしかめた。

 ぐううううるるるるるう!!!

「ううー……っス……」

 ぐううううるるるるるう!!!

「……う……

 うるっさああああああああああいっス!

 どこの誰っス!? 安眠妨害っス! 雷落として黒焦げにするっス!」

 彼女は怒り心頭な様子で頭を上げたようだ。闇の中、光るエメラルドのような緑色の目が開いて、音の出所を探してきょろきょろと周囲を見た。

 その下方、腹の位置から、また音がした。

 ぐううううるるるるるう!!!

「……」

 くたっと、彼女は再び頭を下ろして宝石の枕に顎をつけた。

 緑色の目を閉じた。もう一度寝ようとしたのかもしれない。

 その腹から、また音。

 ぐううううるるるるるう!!!

「……お腹、減ったっス。

 お腹減って動きたくないっスけど、お腹減ってもう眠れないっス」

 それでもまだ未練がましくじっとして眠れないか試した後で。

「……よし、っス。

 何か食べに行くっス!」

 意を決して起きあがって。

 寝床から、出口へと向かった。


 暗い洞穴の中。彼女は進んだ。

 雪のように綺麗な白金色の鱗に覆われた、細くしなやかな体で。

 聞く者のいない、楽しげな歌を歌って。

 やがて、前方に光。

 緑色の目を細めて、光に慣らしながら、さらにそちらへと向かった。

 そして。

 大きく開いた洞穴の出口に姿を見せた。


 ここは、世界最高峰の山。

 雲海よりも高くそびえる険しい隆起。

 薄い空気と厳しい寒気に、山の中腹より上は動植物の姿など見えない無人の霊峰。

 その頂上近く、切り立って崖になった場所に、ぽっかりと開いた横穴。


 彼女はその横穴から出て、長い蛇体を宙に浮かせて、広がる世界を見渡した。


 眼下、散らばる雲の間。氷雪に覆われた山の、さらに遙か下に目を向けた。

 標高が下がれば、森と高原の緑が広がる。

 その所々に、植物の緑とは違う色が見えた。

 人の営みの色。例えば、煉瓦や石の色の建物の屋根。

 彼女は景色を眺めながら、誰も聞く者がない独り言を言った。

「しばらく前までは、あそこは森だったっスね。

 人間たちも、よくやるもんっス。

 わざわざこんな高い所まで来て、町を作るなんてっス。

 じゃ、あそこに行ってみるっスかね」

 伸びをして。

「今年も、いいお天気っス! 何かいいことがありそうっス!」


 ぐううううるるるるるう!!!

 と、お腹の音が、賛同するように高らかに鳴った。 


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ