プロローグ3
目の前には巨大な黄金色のドラゴンだったものが横たわっている。球場程ある広場に他の敵はいないと直感が告げる。
心地よい緊張感から醒めると段々現状が解らなくなってきた。
夢にしてはリアル過ぎると。広場の中空に浮かぶ四角いブロックは現実ではあり得ないと訴えてきているが、剣を受けた感触がまだ残っているし、頬に感じる風はとても夢とは思えない。
夢ならばもう覚めてもいい頃だ。
ふとこのステージの奥にある湖を思い出し、そこへと向かう。
湖面を見るとそこには滑らかな肩まで伸びる白金の髪を持つ美少女が映っていた。自分の頬を触ると湖面の美少女も頬を触る。今更気づいたが、自分の手、指が明らかに変わっていた。自分の手はもっと無骨であった。幼少期から習っていた武術のせいで写真を撮るとさらに無骨さが際だち、そこが嫌でもあり誇りだった。
体に、纏っているのはゲームで何日もかかり手に入れた女性専用レア防具『戦乙女』シリーズであり、この防具は体、腕、脚を揃えると防御力は最防であり、追加効果として攻撃力、防御力、素早さ、魔力、体力が上昇するという所謂チート防具だった。
その防具の下には豊かな双丘がいる。
このゲームはキャラクタークリエイトに優れており、自分好みのキャラを創れることが有名であった。ゲームでは必ず女性キャラを作っていた私は存在するわけがない理想の女性キャラを愛用していた。
所謂ネカマプレイをしていたわけだが、人に媚びず自分の力で、をモットーにプレイしていたおかげで一部廃人たちを覗けば近接職、とりわけ大剣だけを使わせればそこそこの部類だったと自負している。
愛剣は漆黒の大剣で、銘を『ソウルイーター』切った相手の生命力を吸収し自分の生命力へ変換するという、これもまたチート武器と呼ばれる強力なものだった。
身長は154cmで胸は趣味丸出しのGカップ。腰はくびれをつくり、体重は49kgと現実では有り得ない体型。
しばらく湖面を見ていると違和感を感じる。
そう、違和感を感じない違和感に捕らわれたのだ。
夢であることを考慮しても、性別も体型も変わったのにこの体に違和感を感じない。まるで、この体が普通で在るというように。
しかも夢は一向に覚める様子がない。
ゲームのようにボスを倒してから画面が切り替わって街に戻る訳でもない。
ためしに頬を抓ると『痛み』が走る。
ここに来て初めてここは自分の知る世界と違うことに気づいた。
「おい、あんた?
もしかして、このドラゴンを倒したのか?」
この夢の世界で初めて言葉が聞こえた。
仕事やら家のことやらやりながら投稿になりますので、短文が多くなります。
気長に見てやってくださいm(__)m