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巡回楽士

 巡回楽士は、地方の神殿を巡って奉納の舞いを捧げる舞楽団の専属楽士だ。

 マリクは成人後はその舞楽団に入ることを希望しているという。


 マリクとあと少ししか一緒にいられないと分かって、アリアは思いがけないほどの衝撃を受けた。

 なぜかずっと一緒にいられると思い込んでいた。

 マリク以外にも仲良くしている見習い仲間はいるけれど、彼ほど離れるのが寂しいと思う人はいなかった。

 アリアは自分の気持ちがどういう種類のものであるかも気付かずに、自分も舞楽団に入ればずっと一緒にいられるだろうかと考え始めた。


 しかし、アリアが舞楽団へ入ることを希望しても、成人までは旅に同行することはできない。

 四つの年の差は大きい。

 しかもアリアは見習いに入った年齢が他の人よりもずっと遅いのだ。このままだと成人しても一人前の楽士になれるかどうか分からない。


 15歳になったマリクが旅立つ姿を見送りながら、アリアは今以上に修行に励むことを決意した。

 そして四年後、彼女の努力は実り、舞楽団に入ることが決まったのだった――。




 15歳になったアリアは、舞楽団が旅から戻って来るとすぐにマリクの元に向かった。

 四年ぶりに会うマリクは精悍さが増して大人のひとに見え、アリアの胸は高鳴った。

 アリアが近付くと、嬉しさで満面の笑みを浮かべる彼女とは対照的にマリクの顔色は冴えなかった。

 そのことを訝しく思いながらも、アリアは彼に声をかけた。


「マリク兄様、お久しぶりです」

「……ああ。久しぶり。舞楽団に入ったんだってね」


 マリクの声にはアリアと再会したことへの嬉しさは微塵も感じられなかった。

 そのことを悲しく思いながら、アリアは笑顔を保ってマリクとの会話を終えた。

 そして一人になってから考えるのだった。


(私、本当はマリク兄様に嫌われていたのかも)


 そう思うと、アリアが同じ舞楽団にいるのは彼にとって迷惑でしかないのだろう。

 しかし入団を取り消すこともできない。

 なぜもっと早く気付かなかったのかと自分の鈍感さを呪いながら、アリアはこれからのことを思って暗い気持ちになるのだった。

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