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魂霊喰-ソノモノタマシイクライツクス-

作者: 佐野梢

初のホラー挑戦です。


怖くなくても暖かい目で見守ってください

 “おはよう”


 今日も心の中で挨拶する。しっかりと目を合わせてはいるけど、声に出したら周りの人から変な注目されちゃうから出せない。


 ほんとに、どの道もたくさんの方が通っていて、その中にはお友達も多いから困っちゃう。


 まあ心の中で挨拶したら相手にも届いているみたいだけど。



 でもどのお友達も周りの人からは見えないの。



 どうしてかって?


 今まで言ってきたお友達はみんな幽霊。


 私、八乙女梓(やおとめあずさ)は幽霊が見えて、幽霊とお話ができるちょっと変わった女の子。




 学校に着くとなんかみんながそわそわしてる。近くの席に座っていた私の友達(もちろん人間よ)に聞いてみることにした。


「おはよう、あや。ねぇねぇ、何かあったの?」


「おはよう、あずあず。なんかね、隣のクラスの神奈木さんが見ちゃったらしいの。」


 ふむふむ。

 どうやら神奈木さんが見ちゃったらしい。だからみんなそわそわしているみたい。


「へぇ、そうなんだ。」


「そうなんだ。じゃないよ! 怖くないの?」


 何やら興奮してるご様子。


 座ってたのに立って私のそばまで来て聞いてくる。机をバンバン叩くおまけ付き。


 でも、怖いか怖くないかと言われても怖くないって言える。


「怖くないよ。だって、何を見たのか知らないもの。」


 知らなきゃ怖いのかどうかすらわからない。


 話してくれてた友達がズッコケた。


「そりゃ、確かに言ってないけどさ……。見ちゃったって言えば普通何のことかわからない?」


「んー、UFOとか?」


 私が言うとまたズッコケた。


「違うでしょ!」


 違うのか。

 机をバンバン叩きながら否定された。

 どうでもいいけどすごく手が痛そう。


「でもUFO見たら大騒ぎになると思うけどなぁ。後、UMAなんかも!」


 UMA見てみたい。

 ツチノコとかいるのかなぁ。いたら可愛いだろうなぁ。


「ツチノコって……、そりゃあ、大騒ぎになるだろうけどもさ……。なんかニホンマムシの亜種とか聞いたことあるわ。じゃなくて! もっと違うのがあるでしょ? 夏特有のさ?」


 ありゃ口に出してたみたい。ツチノコってニホンマムシの亜種なのか……。てことはヘビなんだ。へー。


 それにしても、夏特有のもの……ねぇ?



「わかんな〜い。」


 とうとうクラスの半分の人がズッコケた。

 どうやら聞こえていたらしい。


「幽霊に決まってるでしょ!! ゆ・う・れ・い! わかる!?」


「おぉ!!」



 気づかなかった。私は毎日見てるからそこにいるのが当たり前。見て大騒ぎしたりしないし、むしろ世間話なんかをしていたりもするくらいだ。


 夏特有って感じもしない。だって毎日いるから一年中見てるし。


 しかし、幽霊を見たからってこんな騒ぎになるとは……。


「もう……。神奈木さんが夜コンビニに行こうとして通った道で足がない男の人を見たんだって。」


 足がないってことは交通事故で死んで胴体真っ二つかな?


 痛かっただろうなぁ。しかもその人迎に来てもらえない限り成仏できないじゃない。足がないから成仏する所まで昇れない(・・・・)もの。


「実はそれ暗くて見えなかっただけじゃないの?」


 考えてることは置いておいて、とりあえず当たり障りないことを口にしておく。


「それがさ、顔だけはっきり見えたんだって。」


 幽霊の特徴だ。 幽霊達は顔だけよく見えて後の部分はあまり見えないのだ。



「それで今日こんな雰囲気なのね。」


「男子たちが肝試しだー! って盛り上がってるのよ。」



「肝試しねぇ……。」


 私の中での興味が無くなってきた。幽霊達は肝試しとかで行く、いわゆる雰囲気のあるところには近寄らない。彼らもそういうところは嫌いだ。



 そのあと、男子たちが女子を誘おうとしていたけど私は断った。


 これで終わると思っていた。





 学校が終わり家に帰る途中周りに誰もいなかったので近くにいた幽霊に今日聞いた話のことを話してみた。


 “肝試しか……。”


「そうらしいの、その神奈木さんが見たって言っていたトンネルに行くんだって。」


 確か家からも近いから参加しようと思えば参加できるわけだ。でもそういうのに興味ないし、幽霊なら毎日会ってる。



 わざわざ幽霊達が近寄らないところに行くなんて意味ないことはしたくない。


 しかも、幽霊よりも怖い不良とか居そうだし。



 “そのトンネルについて妙な話があるんだがな”


「何かあるの?」


 神妙な顔で語りかけてくる。


 “実は人喰い幽霊が居るらしいんだ”




 なんでもその幽霊は人の魂を食べるという。当然魂を食べられたら死んでしまう。そこのトンネルの近くには小さな林がある。そこでミイラ化した身元不明の遺体がよく見つかるらしい。


 不自然な見つかり方をするのだという。


 良く見えるところにある遺体なのにミイラ化してる、そんな遺体が多いのだと。



「それやばくない……?」


 つい最近ミイラ化された遺体が発見されたというニュースを見た。発見場所がそのトンネルからそんなに離れてなかったはず……。


「私、みんなにやめるように言った方がいいよね?」


 “そうだな。だが、信用してもらえないと思うぞ?”


 そうか、私以外にこんなこと出来る人と会ったことない。


 霊媒師や霊感強いって言ってる人と会ったこともあるけど彼らには見えていなかった。幽霊に頼み込んで一人だけ付いていって貰ったことがあったが全然違う方向を見ていた。



「なんて説明すればいいかも分からないの……。」


 “危ないから君は近づくんじゃないよ。”


 この言葉をもっと重く受け止めておくべきだと後で後悔することになる。






 翌日、学校にて、


「おはよう、あや。」


 昨日と同じく近くの席に座っていたあやに話しかける。


「おはよう、あずあず。今日の夜するんだって。ほら、明日休みじゃん?」


 今日の夜か、確かに話題性とかから、考えるとちょうどいいのかもしれない。けれども、私は幽霊さんから噂を聞いてしまった。


 噂だからって馬鹿にすることも出来るけど万が一のことがあったら嫌だし……。


「あや、なんか私変な噂聞いちゃったんだよね。だからやめようよ。」


「噂ってどんな噂? それにやめようよって私に言われても困るよ。」


 笑いながら反応して、まともに相手してくれない。


 一応聞いた噂について話すも、逆に行きたくなってしまったようだ。



 ……結局止めることが出来なかった。



 もう危なくなる前に止めるしかないみたい、付いていくしかない……。






 そしてその夜、トンネルの近くのコンビニの前に集まる学生たち。


 数は20人近く、いかにも若者といった服装をしており、皆比較的薄手の服を着ている。


「準備はいいか?」


 男がヒソヒソ声で確認を取る。周りが答えようとしたその時、



 “ぶぉーーーん”


 バイクの排気音に似た音が辺りに響きわたる。



 しかし、周りにバイクどころか動いてる車すらいない。



 学生たちはしきりに辺りを見渡し、何もなかったのでまた話に戻ろうとした。



 戻ろうとしたところで周りが不思議な明るさに包まれていることに気づく。


 上の方が妙に明るくなっていたから上を見てみると……、



 目の前のコンビニくらいの大きさの顔が透けて(・・・)浮かんでいた。


 その顔が学生たちに語りかける。


 “新鮮な魂、ご馳走だ”


 語りかけるというよりは独り言に近いかもしれない。


 “どれから頂こうか”


 一人続けていく、学生たちは一人を除いてまともに反応できない。ただ呆然と見上げているだけである。


「あなたが、人喰い幽霊なの?」

 唯一まともに反応できた梓が語りかける。


 “人喰い? アハハ“ハハハ“ハハハ”ハハハ”ハハハ”


 不思議に響きわたる声、反響するものがないのに、エコーがかかってるかのように響く。


 “私が食べるのは魂だよ、魂は感情をダイレクトに反映させてね。恐怖を抱いてる時はとても美味なんだよ。ああ、幽霊になっても食べれたなそういえば。”


 彼は嬉しそうに語る。

 そして、梓以外の周りが恐怖に震えてることを分かっていてさらにその恐怖が増すように話している。


「何が目的なの? ただ食べたいだけなの?」


 昨日幽霊に聞いた時から気になっていたことを聞いてみる。この質問をしているうちになんとかみんなが逃げる準備を整えてくれないかと考えながら。


 “魂を食べるとこうして存在することができるからさ、他にも色々あるのかもしれないが、私がとどまるにはこれしかないようだ。”


 かなり自分勝手な理由だった。そんなことのために周りのクラスメートと死ぬなんて嫌だと当然のように梓も思った。その周りのクラスメートだが、まだ正気に戻らない。仕方ないのでまだ時間を稼ぐ。


「それで、あなたの本体がこっちだからあっちはちぐはぐになってるのね。」



 “ほう、さてはお前。普段から見えてるな(・・・・・)? だけどあっちも本体だぞ?”


 時間稼ぎしようとしたらクラスメイトには知られていなかった事実を言われてしまった。


 しかも、やばい事実のおまけ付き。こっちが本体だからあっちも顔だけ(・・・)くっきりしていてそれ以外はほぼ希薄なのかと思っていたのに。


 しかし皮肉なことにこの言葉でクラスメートが正気に戻ったようだ。何やらざわざわし始めている。


 私が振り向くとみんな奇妙なものを見る目で見ていた。


 あぁ、またこれか。


 昔みんなにも見えてると思って喋っていた時と同じ。このまままた生きた人間の友達が減っていくのか。


 そう思うと、時間を稼いでる意味も無くなった気がする。スキを見て逃げよう。


 そう思い上空から目を逸らした時だった。



 誰かが叫び声をあげうずくまり出した。


 それに一瞬で周りはパニックに。


 みんなが一斉に逃げ出す、我先にと走り出す。


 “新鮮な魂共よ。お前らを逃がすわけ無かろう、餌だぞ。怯えて脅えて怯え尽くせ!”


 上空の存在の意識が私以外にそれた! この一瞬しかスキはない。


 私はクラスメイトがいる方とは反対側へ逃げ出した。後ろからパニック音が聞こえる中ただひたすら逃げていた……。





 気づいたら家の前に来ていた。やっと解放されたと思い、安心して家に入ろうとした。


 玄関を開けて家に入ると、足が無い顔だけくっきり見える幽霊が目の前にいた。





 ◇◇◇◇





「こりゃあ酷いな……。」


 朝から電話が鳴り響き、その話を聞かされたときにはまたかと思ったが、今回のはかなり酷かった。



 ミイラ化した遺体が14~15人分あるのだ。


 しかもコンビニのすぐそばにだ。



 他にも民家に2~3人分という連絡も来ている。



 ここ最近多過ぎる事件がここに来て本格化してきた。


「この街で何が起こってるんだよ……。」


 答えれる人はいない……。

読んでいただきありがとうございます。


評価をつけてくださると嬉しい限りです。

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