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墜落現場

第二話です。

 煙の上がっていた現場に着くと、何か生ものが焼ける匂いが鼻をついた。

現場は瓦礫が散乱していた。

瓦礫は鉄板と思わしきもの焼け焦げたものだった。

かなり広範囲に瓦礫は散らばって燻ってはいたが、火は上がっていないようだった。


イスルギ・ハヤトは注意深く、現場の状況を確認する。

『どうやら……飛空艇のようだ……かなり大きいから輸送艦か?

でもこんな辺境になんの用があったんだ?

大樹海の先は「ビナ砂漠」ぐらいしかないはずだが……』


現場を確認して行くと、ふとやき焦げた外装の一部に紋章らしきものを発見する。

煤を払うと其処から出てきたのは『オーランド帝国』の紋章だった。

俺は思わず息を呑んだ。


『こんな所に「オーランド帝国」の飛空艇が来ていたのか!

ここは辺境とは言え、「シルヴァ共和国」内だぞ!

軍の飛空艇が越境したとなれば国際問題だ!』


『オーランド帝国』は『シルヴァ共和国』とは隣国だ。

『シルヴァ共和国』から山脈を挟んで西に位置している。

数年前まで、国境線をめぐって紛争をしていたが、現在は休戦中だ。

こんな軍の飛空艇が越境して何かしていた事が公になったら、

また、戦争になりかねない。


俺は、そんな思いを抱いたが、医者の性分として、

生存者がいれば、助けなければという思いに駆られさらに周りを探索する。


そして、その紋章のあった外装の後ろに巨大な金属の塊がある事に気づく。

俺は、飛空艇の一部かと思い、近寄って確認しようとしたが、

近づいて飛空艇の外壁では無い事に気づいた。


その金属の塊は黒い黒曜石のような光沢の外装の『巨大な人型』なのだと判断できたからだ。

俺は思わず呟いていた……


「ギ……ギガント・ナイト(巨人騎士)か?!」


『巨人騎士(Giant Knight)』……五千年ほど前の古代兵器アーティファクト

全長十八メートルにも及ぶ人型兵器の総称だ。


その数は少なく、稀に迷宮と呼ばれる遺跡から発掘されるものがある程度だ。

さらにそれを操縦するには、『巨人騎士(Giant Knight)』の人工人格……

人工精霊にマスターとして認められないと操縦出来ないという噂だ。


『巨人騎士(Giant Knight)』は各国で力の象徴とされ、

この『シルヴァ共和国』でも二十機程度しか所有していない。


俺も五年前の建国式典のお祭りに祖父に連れられて首都シルベスタに行った時に、式典の祭儀兵として参列していた物を遠くから見た事があるだけだ。


今、目の前に横たわる『巨人騎士(Giant Knight)』はその時見た巨人騎士のそれより流麗なフォルムに見えるが……


「……これは……オーランド帝国の『巨人騎士(Giant Knight)』なのか?」


こんな物が敵国内に墜落して存在するとなると、何か良からぬ企みでもありそうで、かなりきな臭さを感じずにはいられない……かなりヤバそうだ。


早くここから離れて、村の駐在兵に連絡するべきだとは思ったが、

やはり、生存者がいないか気になる。


 俺は取り合えず、『巨人騎士(Giant Knight)』の事は置いておくことにし、その後も注意深く生存者がいないか周辺を探索した。


結果として、何人かの軍人らしき死体があったが、どれも生きてはいなかった。


「生存者は無しか……」


俺は悲嘆にくれたが、ふと墜落地点から目を樹海の林の中を見ると何かが光ったのに気がついた。

俺は、怪訝に思い、その光を確認しに、林の中に入っていく。

すると、林の中に金属で出来た棺?のようなものがある事に気がついた。


近づき、棺のような物を確認すると、前面がガラス張りになっていて、

その中に一人の美しい少女が横たわっていた。

そして、少女の丁度胸の上あたりのガラスの上に塔に落雷が落ちる金色のレリーフがはめ込まれていた。


『??

何処かの紋章だろうか?

オーランド帝国の貴族の紋章とか……』


棺の中の少女は年の頃は十四、五歳で、

軽いウェーブの掛かった背中まであるプラチナブロンドだった。

顔は人形のように整っていて、まるで作り物のようであり、肌は透き通るように白かった。

背は155cm前後ぐらいか?

とてもこのあたりの人間とは思えない……


『シルヴァ共和国』は結構様々な人種が多く暮らしているが、

人間では黒目黒髪で少し肌は黄色掛かった色の人間……が多い。

俺もそれに漏れなく、黒目黒髪だ。

身長も平均サイズの175cm、体は日頃鍛えているので、そこら辺の一般人よりかなり引き締まってはいるが……


後、『人間では』と言うのは、この国が亜人と呼ばれるエルフやドワーフなども受け入れているからだ。

その関係で亜人種も多く暮らしている。

まあ、その事もあり、亜人種を劣等撞とする周辺諸国……

特に『オーランド帝国』とそりが合わないと言う事も紛争の原因になっている。

何せ、『シルヴァ共和国』には、亜人種の評議員が結構いるのだ。

亜人を差別している国に取っては面白く無いし、差別される方はもっと面白くない。


閑話休題……


おっと、思考が変な方向いってしまった。

それより、今はこの少女の事だ。

俺は、ガラス張りの蓋を開ける所が無いか、

棺桶の周りを探るが、

止め具や持ち手などは無いようだった。

どうしたものか困りながら、ガラスに手を触れると、

「プシュー」という空気の抜けるような音をさせながら、

ガラス張りの蓋が少し横にズレ、ゆっくりと上にせりあがっていった。


俺はそれを呆然と眺めていたが、

ハッと思考を戻し、少女の容態を確認をしないといけないことを思い出す。


俺は、先ず、息と脈を確認した。


少女の顔に耳を近づけると僅かに呼吸をしている事が確認できた。

次に手を取って脈を確認する。


「うん、少し弱いが脈も正常のようだ」


そして、体に怪我など負っていないか、ざっと全体を見る。

少女は病院で着けているような貫頭衣だったので、手足がかなり露出していたので、

簡単に怪我の有無が確認できた。

一瞥したところ、異常は無いようだった。


それにしても……

この少女はどんな人物なんだろう?


軍の飛空艇にいるような人物にはとても見えない。


そんな事を考えていると、発動していた感覚強化魔法【インダクション】に、近づく、魔獣の気配を感知した。


『魔獣か?

これは狼型の魔獣「ヘルハウンド」の群れか?!

数は……20匹といった所か……』


いつの間にか墜落現場の爆発も収まり、火災も治まっているようだ。

恐らく死体の匂いでも嗅ぎ付けて来たのだろう。


俺は、少女を見た……

取り合えず、このままだと、魔獣の餌食だ。

少女に声を掛け、体を揺する。


「おい!君!起きろ!

魔獣が迫ってきている!起きないと食い殺されるぞ!」


頬も軽く叩くが、起きる気配は一向に無かった……


俺は、仕方なく、この場をどうやって切り抜けるか考え、

自分の装備を確認する。


今の俺は、カーキ色のシャツに防御魔術を付与した特性の黒色ロングコートに、黒のジーンズ、ロングブーツ。

手には武器の持ち手を握りやすいように皮の指貫グローブを嵌めている。

そして腰の後に『ガンソード』を装備していた。


ガンソードというのは、魔法銃と短剣を合わせた武器だ。

銃身部分が短剣の形状をしていて、魔弾を打つ際には刃の部分が上下に割れて、銃口部分を出して、魔弾を打ち出す事が出来る魔術武器だ。

また、持ち手と、刀身部分は変形伸縮して、魔法剣にもなる優れものだ。


これは古代兵器アーティファクトで、家に代々伝わる一品だ。

弾倉の魔弾に予め魔法を詰め込んでおいて、魔法を打ち出したり、

刃部分に効果を付与させ、魔法剣にしたりできる。


これの一番いい所は、魔法の詠唱が不要と言う事だ。

引き金を引けば、直ぐ魔法が使用可能となっている。

それと、攻撃魔法を使えない人でも使用可能なのが良い。

特に俺は、攻撃魔法が苦手だった。

自身にかける強化系の魔術は無詠唱で掛けられるのに、

攻撃魔法は詠唱無しでは碌に発動しなく、詠唱自体もかなり時間がかかるので、戦闘しながらの使用はとてもきたものじゃなかった。

なので、詠唱に時間の取られないこの『ガンソード』は重宝させてもらっている。


俺は弾倉をチェックする。


『今日は狩りがメインではないからな、全弾、麻痺魔法の「パラライズ」にしてあるな……

メインカートリッジに12発、予備カートリッジが3個だから、全弾で48発……

まあ、これなら何とかなるが……

この娘を運びながらだとキツそうだなぁ……』


俺は、意を決して、コートを脱ぎ、少女をコートで包んで左肩の担いだ。

少女を担ぐ時、自分に強化魔法【ストレングスニング】を掛けているとはいえ、少女はかなり軽く、その軽さに思わず、担ぎ上げる勢いが余って、よろけてしまった。


「な……なんて軽さだ?!

この娘は本当に人なのか?

まあ、軽い分には動きが制限されなくてたすかるけど……」


そして、この場を切り抜けるべく、ガンソードを右手で引き抜いた。


「さて……

強行突破しても、この数じゃ追いすがってくるな……

ここは引き付けて、ある程度の数を無力化するか」


俺は、魔獣と対峙する為、開けた先ほどの墜落現場にゆっくり歩を進めるのだった。


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