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2日目……

俺達は今日もシルヴァ大樹海を『ラウンド・バード』に乗って進んでいた。

ラウンド・バードは通常の馬と違い、こういった木々生い茂っている場所でも、以外と器用に木や草を避けて進む事ができる。


それは、毛の短い馬と違い、丈夫な羽に覆われている為、ちょとやそっとの葉や枝などは物ともしない為だ。


そして、今日も昨日と同じように魔物や魔獣が、ハヤト達に襲いかかってきていたが、オーランド帝国やシルヴァ共和国からの追手はかかっている様子は無かった。


もっとも、『人工精霊ルナ』だけで無く『アルカナ・ナイト』も消えているとなると、こういった密林を進むはずは無いと思うのが普通である。

仮に進んだとして木々を倒しながら進むのだから、追跡は容易になってしまう。

『ギガント・ナイト』のような巨大物体があそこから移動するとするならば、街道を使い、南下し、ある程度開けた場所で進行方向を変えるのがベストと考えるだろう。


俺は、そんな仮想敵の動向を考えながらも草むらから襲いかかって来た『チャージ・ボア』(猪の魔獣)をガンソードのソードモードで一刀両断にする。

死体は、『次元収納ディメンション・スペース』にあった、空の『コンテナ』の中に放りこんでおく。

コンテナは40フィートタイプで30,000kgほどの物体を入れる事が出来た。

只、このコンテナ……に入れるのは、俺が物体に触れば一瞬で『コンテナ』内に収納できるのだが、出す時は、コンテナ毎出す必要があるので、毛皮や肉や魔石を取り出す解体を行うのは、余程開けた場所でないと出せないのが不便ではあった。


……樹海を越えるころには、どれほどの魔物や魔獣の死体が溢れていることか……

まあ、後で肉や皮を換金したり、魔石を魔弾に加工する必要があるからしょうがないのだが。


そして、村を出てからの2日目は、多少の魔物との戦闘だけで過ぎ去り、

俺達は、途中で見つけた、小川の脇の川原で野営を行う事にするのだった。


昨日は、戦闘の疲れもあり、あまり良く確認しないで、『野営キット』なるものを『ウィンドウ』から選んで出したのだが、これはかなり優れものだった。

野営地の中心点となる場所に、30cmほどの鋼鉄の棒を刺す事でそこから半径10mまで結界が張られ、魔物、魔獣を寄せ付けなかったのだ。

そして、結界外からは結界内が回りの景色に溶け込んで見えるようになっていた。

そう、結界には光学迷彩がかかっていたのだ。

もちろん、中の音や光も漏れない至れり尽くせりの高機能の結界だった。

そして、完全循環式の簡易シャワー&トイレのキットと簡易テント。

その他、キャンプ用備品と非常食などを1セットとしたセットが10セット。

『野営キット』として出てきていた。

テントは4人仕様だったので40名が野営可能なセットだったのは驚いた。

実際に使うのは1セットだけというのが何か勿体無い感じではあった。


俺達は、食事を終えた後、脳内リンクを張って、『ザ・タワー』の操縦訓練を行った。

やはり、今後、追ってとの戦闘や、不測の事態の対処として、どうしても『ザ・タワー』の操縦の習熟は必須だと考えたからだ。


ルナの作り出した脳内シミュレーションは、殆ど実際に操縦しているのと変わらない感覚と風景を作り出し、戦闘フィールドも様々なものが選択できた。


『ザ・タワー』内の操縦席は単座で、操縦者は、左右のリンクジェルに手を突っ込み、頭部は、目の辺りまで被るような大きめのヘルメットが覆ていた。

視界は『ザ・タワー』の視界だった。


これらの装置をルナがリンクさせ、制御することによって、俺は『ザ・タワー』を自分の手足のように動かす事が可能となっていた。


そして上手く動かせば、俺が修めている体術もある程度再現できる事も確認できた。

これはかなり大きな収穫だ。


因みにルナは先の戦いのように俺に『融合フュージョン』するのでは無く、俺の座る座席後部に設置されている黒い球体……『ザ・タワー』の『核』に『融合フュージョン』してサポートをしていた。


量産型の『ギガント・ナイト』の『人工精霊』はその状態が普通で、『アルカナ・ナイト』の『人工精霊』のような端末(実体した体)は通常持っていないのだそうだ。


俺達は、シミュレーションで『アルカナ・ナイト』や『ギガント・ナイト』と模擬戦を行い、戦える事を確認する。


「これなら、接近戦も問題なさそうだな」

「はい、マスター。

近接戦闘用のアルカナ・ナイトもありますが、ある程度対処可能だと推測します。

通常のギガント・ナイトは問題無く排除できるでしょう」


「そうか。じゃあ、エネルギーを節約して戦う事も可能だな」

「はい、近接戦闘主体なら、30分の戦闘で3%の消費で稼動可能です」

「そうか、じゃあ今の残エナルギーで270分……4時間半ってところか」

「はい、ですが、今、エネルギーの確保を常時行っております。

効率は悪いですが、魔素マナを取り込んでナノ・エナジーを生成していますので、これからは、多少はエナルギーを追加する事は可能です。

『アルカナ・ナイト』のエナルギーの1%の生成に72時間、6日かかりますが……」

「そうすると、600日、20ヶ月、1年8ヶ月かければ……満タンには出来るのか?」

「はい、そうなります」

「戦闘を避けられれば……北極に行かなくても大丈夫なのか?」

「その可能性は低いと考えます。

『ザ・タワー』は他の『アルカナ・ナイト』にとってもエネルギーの供給を考えれば、『ザ・スター』に次いで重要な機体です。

何らかの接触があると考えます」

「その、何らかの接触の中に戦闘も含まれると?」

「はい、力で服従させようとする者もいる可能性は否めません」

「そうだな……、燃料の確保はしておいた方がいいな」


俺達は、操縦の訓練をしながら、対策を確認しあうのだった。


◇◇◇◇◇


俺達は、習熟訓練を終えると、眠りについた……2日目が終わる。


……そして、俺は瞼を閉じた後、悪夢を見ることになるのだった。


それは、昨日は、余りにも体の負担が大きかった為、気絶するように眠ったが、今日は少し余裕が出来て考える余地が出来たのが要因だろう。


夢の中で、俺は真っ暗闇の中に一人佇んでいた。

周りには死屍累々の惨殺された屍。

そう、俺が殺した帝国兵の亡骸が散乱していた。


俺は、息を呑んで後ずさりする。

すると俺の右手から声が掛かった。

「どうした?そんなに怯えて?」


それは何時のまにか右手持っていた生首からの声だった。

「う!うあああぁ!」


俺は思わずその生首を投げ捨てる。

生首は少し転がった後、停止し、俺に振り向く。

俺は、生唾を飲み込みながらその顔を凝視した。

それは、ジャハト村を襲った帝国軍の指揮官の顔だった。

生首は口の端を吊り上げてニタリと笑う。


「どうした?小僧?そんなに怯えて?ナニを恐れる?

お前は、我々を倒したのだ。

もっと誇ったらどうだ?

圧倒的な力で有無を言わさず殺しまくったんだ。

お前もこれで立派な『人殺し』だな?」


「俺は……俺は、村の人たちを助ける為に……」

「本当にそうか?お前は俺達を殺さずに無力化できたんじゃないか?」


「違う!あの時、俺は自分の体をコントロールできる状態じゃなかった!」

「果してそうかな?お前は俺達の『死』を望んだんじゃないのか?

『アルカナ・ナイト』の機能はそれに応えたにすぎないんじゃないのか?」

「違う!違う!違う!」


「いいや、違わないね!

お前は正気を取り戻した時、優越感を感じたはずだ。

自分達を殺そうとした存在を蹂躙できてな!」


俺は力なく過振りをふるってその場に両手を着いて蹲る

「……違う……俺はみんなを……じっちゃんを助けたかったんだ……」

「そう思いたいだけだろう?他者を理由にして現実を否定したいんだろう?

随分、矮小な男だな。

自分の行いも肯定でいないとはな?

そんなに人のせいにしたいのか?

そもそも、俺達をお前の村に導いたのはお前が『アルカナ・ナイト』と『人工精霊』を見つけたからだ。

お前が死と破壊を村に導いたのだぞ?」


「……俺は只、ルナを助けたかっただけだ……」

「そうか?まあ、そうなんだろうが。

現実として、俺達は村を攻撃し、共和国の兵士や多くの村人を殺した。

お前の行動が多くの人々を死に追いやったのだ。

お前の祖父もな。

お前はまるで死神だな?」


俺は全力で否定の声を上げた。

「俺は死神なんかじゃなぁぁぁぁぁーーい!!」


◇◇◇◇◇


そこで、俺は、上体を起こし、起き上がった。

周りを見ると、どうやら、寝た時と同じテントの中。

俺は脂汗を大量にかいていた。

俺は自分の手を見る。

夢の中で血まみれだった手は脂汗をかいて、震えてはいたが普通の状態だった。

俺は息を大きく、吐き出し、うな垂れる。


隣で寝ていたルナが寝袋から起き出し、心配そうに俺を覗き込んできた。

「マスター、大丈夫ですか?」

「ああ、大丈夫だ。

心配ない」


俺がそう呟くとルナが不意に俺の頭を胸に押し付けて、頭を抱え込むように抱きしめた。

「嘘です。

マスターはこんなに怯えているじゃないですか。

私に遠慮なんてしないでください。

私とマスターは一心同体……

私はマスターの物なんですから。

どんな痛みや苦しみも私に共有させてください」


俺はルナの慎ましやかな胸を頭に押し当てられながら、

少し心が休まるのを感じた。

手を見ると、いつの間にか振るえが止まっている。

俺は細いルナの腰に手を回しルナの膝に頭を預けた。


「ありがとう。ルナ」

「いいえ、当たり前の事です。

マスターの悲しみは私の悲しみ。

マスターの喜びは私の喜びですから」


俺は上体を起こし、ルナを見つめる。

ルナは目を閉じ俺に顔を近づけた。

俺は少し躊躇い、ルナに声を掛ける。


「ルナ……その、もしかして、『人工精霊』として俺を慰めているとか……ってことは?」


そう俺が口ずさむとルナは大きな瞳を開けて驚愕した表情を作った後、そっぽを向いた。

「マスター!いいえ!隼人さん!

私は私の意志で今、貴方を心配してるんです!

システムによるものなんかじゃありません!」


そこまで声を荒げた後、ルナは自分の髪先を弄り、ちょっと照れながら宣言した。

「わ!私は!覚醒して、貴方の『人工精霊』となる前から貴方の事が好きだったんです!

お人良しな所も、優しい所も!あわてんぼうな所も!私は大、大、大好きなんです!

これは決してシステムのせいなんかじゃありません!」


俺はその宣言を聞いて、自分の配慮の無さに苦笑した。

「ごめん。ルナ。デリカシーの無い事を言った。

ついでに言わせて貰うと俺も……ルナの事が好きだ。

『人工精霊』だって関係ない!」


ルナはビックリしたように顔を上げる。

そして涙を溜めて、見つめてきた。

「マ、マスター!ほ、ほんとう?ですか?」


「ああ、本当だよ。

俺もルナと同じ気持ちだ!

ルナの悲しみは俺の悲しみだし、喜びも俺の喜びだ!」


ルナは感極まり俺の胸に抱きついてきた。

「嬉しいです!マスター!いいえ、隼人さん。

私の心も体も全て貴方のものです。

いいえ、貴方のものにしてください」


俺は強く、ルナの華奢な体を抱きしめ返し、頷きながら返事をする。

「もちろんだ。

ルナ!お前は俺のものだ!誰にも渡したりしない!帝国だろうが!共和国だろうが!

他のアルカナ・ナイトだろうが!」


そして、俺達は静かに顔を見合わせて口付けを交わした。

それは、最初は躊躇いがちに……そして徐々に激しく、お互いを求めるような口付けだった。

暫くして、息をするのも忘れてた口付けを終わらせると、ルナは高揚した潤んだ表情で見つめ返してきた。


俺はそっと、ルナを横たえると、寝る時に着替えていた、パジャマのボタンを外していく。

ルナは恥ずかしげに身を攀じるが抵抗せずに俺のなすがままになっていた。


俺は、自分も上半身の上着を脱ぎ捨てると、出来るだけ優しくルナを抱きしめる。

お互いの素肌が触れ合い、俺は、えも言われぬような暖かさと幸福感に包まれた。


ルナも縋るように必死に俺の背中に手を回してしがみ付いてくる。

そんなルナが愛しくて俺は更に力を込めて抱きしめる。


ルナが少し苦しそうに呻いた。

「マ、マスター、いえ、は、隼人さん、少し苦しいです」


俺は少し力を弱め、ルナの顔を見る。

「す、すまん!ルナが、その……とても可愛かったもんだから……」


ルナも頬を赤らめながら……しかしとても嬉しげに見つめた後、軽く俺の頬にキスをした。

「いいんです。少し苦しかっただけです。

とっても嬉しい!」

そして、首に抱きつくように腕を回した。


---18禁---


俺達は、強く激しく求め合い、心も体も一つに溶け合う幸福感を味わったのだった。


今回過激文章部分を18禁としました。

18以上の方で気になる方は下記Xページ19話「絆」をご覧ください。

尚、この部分を読まなくても本文には支障ありません。

http://ncode.syosetu.com/n8068bw/

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