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混乱収まるその後は…。

黒いドラゴン『クロ』が喋り4人はドラゴンと無言で見つめあい、白い虎『シロ』とありすのじゃれあいが暫く続いていたが。


ありすがシロの口の中に頭を突っ込んだ瞬間、ドラゴンと4人が慌てて救い出す(ドラゴンは巨体でオロオロとして、謎謎が悲鳴を上げ、コイルはひきつった顔になり、フーリとリグリットがありすを引き摺り出すといった事)といった1コマもあり、全員が落ち着くまで、またもや暫くの時間が必要となった。





「あぁ~面白かったぁ~、シロチン後でさっきの続きしようね♪」


『がう!』


「「「「止めろ(て)!!」」」」


『主殿、シロだけずるいです…』


4人は残酷描写を2度と見たくはなく、そしてドラゴンのクロはどこか羨ましそうな声で訴えている。「じゃあ、後でクロチンも遊ぼうねぇ~」と言ってクロの前足に抱きつき、それにクロは「主殿…!」と感極まっている。


予想外の展開ではあったが、なんとか全員落ち着いたところで、フーリは黒いドラゴンとありすを交互に見て呟く。


「こいつって喋れたんだな…。いや喋れるようになったのか?」


「そうだねぇ、ビックリしたよ…」


フーリとコイルがしみじみといった感じに黒いドラゴンへ目を向けていると、それに気が付いたドランゴンはどこか恥ずかしそうにもじもじとしはじめた。


『すみませぬ、皆様と初めてお話することになります。と言いましても"こちら"に来てから言葉が分かるようになったのですが…』


「?

 待て、今"こちら"と言ったか?それは今俺達がいる世界の事を言っているのか?」


思わずそんな言葉がクロの口から洩れて、フーリは一瞬何を言っているのか理解出来なかったが、直ぐに疑問に思った事を聞いた。


『はい、皆様もお気づきかもしれませんが、ここは前に(わたくし)達が居た世界とは異なります。

 どう表現していいかは私にも難しいのですが、こちらの世界に来たことで私は皆様と話す事が出来るようになりました。そしてシロも"個性"、"自我"を持つことも出来たのです』


「じゃあ、お前はゲームとこの世界の違いについて認識はしているということでいいのか?」


『はい、そう思って頂いて良いかと思います。

 そして皆様が言う所のGAUZSでの私が関係した、今まで起きた出来事に関しても記憶しております』


「じ…じゃあ!!帰る方法も知ってるの!?」


今まで5人の話し合い中も黙って話を聞いていただけの謎謎は期待に満ちた顔でクロを見る。

しかし、クロかた返ってきた返事は満足の出来る物ではなかった。


クロは目を瞑ると、大きな頭をフルフルと揺らす。

そして申し訳ないといった感じの声で応える。


『申し訳ありません、私にも帰る方法は解りませぬ。

 解ることは、先ほども述べた通り私達が見て聞いたGAUZS内での出来事、そしてこちらに来たことで自我を持つ事が出来たことだけです。

 …謎謎様、申し訳ありませぬ…』


話終わるとクロは頭を下げて謎謎に謝罪する。

そんなクロの姿を見た謎謎は手をブンブンと振って焦る。


「そ!そんな!!誤らないで!

 うちも簡単にわかるとは思ってなかったし、クロちゃんが誤ることないよ」


『ありがとうございます』


謎謎とクロがお互いに恐縮して頭を下げてヘコヘコとお辞儀をしているのを3人は微妙な顔をして見ていた。


「まぁ、帰る方法にこれから調べればいいだろう。

 今は、この後どうするか決めるぞ。スキルの確認は各々がさっき話た内容で行うとしよう。

 だが…ありす!!お前は勝手にスキルを使うな!!使う時は俺かコイルに言って使え!!」


「えぇ~…」


フーリはビシッ!とありすを指さすとそう宣言する、ありすは不貞腐れたように頬を膨れさせると文句を言うが、ここは譲らない。

そしてフーリの隣ではコイルが相談も無く自分もありすの面倒を見ることになっていることに目を剥き、そんなコイルに同情したリグリットは無言でコイルの肩を叩くのだった。





その後は、各々が使用することのできるスキルについて使用感を調べる時間になった。

全員が初級、中級と一部の上級スキルを使うことで、池の畔は若干地面が捲れてしまったり、爆発したり、または大きな水柱を作ることになったが、大体のスキルを問題なく使う事が出来ることに全員が案慮した。


…偶にありすが起動するスキルにフーリが注意したり、コイルがそのスキルの余波で空を飛んでしまうといった事件もあったが、問題ない。

ありすが残りの使役モンスターを召喚しようとした時には全員が止めに入ったことで防ぐ事が出来た。


フーリはスキルについても満足がいくレベルで使用することに安心していた、またゲームとの違いについても確認出来た。

ゲーム内でスキルを使う場合にはSPの残量を計算して使用する必要があったのだが、この世界に来たことでスキル使用について制限が無くなっていることを改めて認識した。

そして、SP以外に2つゲームとの違いを発見した。

1つは、ありすがコイルを空へ飛ばしたように、スキルを使うと力の余波が発生する事が確認出来たことだ。

ゲーム内、今まであればスキルは敵に対して発動、そして対象となる敵にだけダメージを与えていた。しかし、この世界でスキルを使うと対象へのダメージだけではなく攻撃の対象となった物の周囲にもダメージを与える。

考えてスキルを使わないと周囲、仲間へ攻撃が当たってしまう可能性がある。


2つ目は、ありす限定なのだが…使役するモンスターの大きさを調節する事が出来た。

これは偶々発見されたことで、ありすが「シロチンとクロチンの餌どうしようか?こんなに大きいと、い~~~っぱい!ご飯が必要になるよね?」と言ったことで、シロとクロに確認したところ。


『私達なら大丈夫です。皆様とそう変わらない量の食事で身体の維持が出来ます。それに身体を小さくすればもっと少ない食事でも大丈夫です』


とのことで仕組みについては謎ではあったが、今では2体とも10メートルと20メートルの身体が小型犬程の大きさになっており、ありすはそんな2体をキラキラとした瞳で嬉々として捕獲すると、両手に抱いて今はゴロゴロとしている。


「リアルもふもふ~~♪

 シロチンの毛皮サラサラの艶々~♪

 クロチンの鱗はつるつるのヒンヤリ~♪」


ありすはご機嫌である。

フーリとしてはありすが小さくなった2体に夢中になったので、自分のスキル確認へ集中する事が出来た。

(コイルもありすのスキルに飛ばされる事が無くなり、安慮の溜息を吐いていた)





各々がスキルの確認も済んだ頃には陽もだいぶ傾いてきており、辺りを赤く染める時間になっていた。

フーリはこの世界でも夕日は赤いのだな、と思ったが別段何かある訳でもなく、今夜の宿についてみんなに相談する。


「…やっぱり野宿しかないかな。フィールド探索で使ってた野営セットを使えば大分マシだと思うよ?」


そう言ったのはコイルで、ゲーム内のフィール探索でも利用していた簡易テントやモンスター除けの薬剤がセットとなった所謂、野営セットでのこの場に逗留する事を勧めた。


「確かに、あのテントがそのまま使えるなら野外で一晩過ごすのも苦にはならないだろう」


リグリットもコイルの意見に賛成のようで、既に自分のメニューを操作して野営セットを取りだそうとしていた。


「だな。夜に動いて、何が起こるか知れないし、今日はここで一晩過ごして、明日の朝に移動するか。

 謎謎とありすもそれでいいか?」


「うん」、「はぁ~い」


了解を得たフーリはインベントリ内にある野営セットを取りだすと、インベントリから飛び出したテントは一瞬でその場に組み立てられる。

ゲーム内では疑問に思った事が無かったが、こう現実(?)で目の当たりにすると奇妙な光景だった。


全員がテントを取りだし、寝床の準備が出来たところで(実際に取りだすだけなので、直ぐに準備出来た)もう一度5人と2匹(?)が車座になるとインベントリ内から今晩の夕食を取りだしていく。

簡単な調理をしようと思えば出来るかもしれないが、今回は素材そのままで食べる事が出来る肉や果物、飲み物といったラインナップである。


それぞれが好きな食事を取っていると、生肉をありすから貰ったクロが思いだしたかのようにフーリへ話掛けた。


『ところで、フーリ殿は今後どうされるおつもりなのですか?』


その疑問に食事をしていた全員が食べるのを止めて、フーリへ視線を向ける。


フーリは口に入っている物を飲み込んでから応える。


「今日はこのまま、ここで一晩を明かすが、明日にはこの森を出るつもりだ。

 そして話が出来る人間を探す。」


『それは何故?』


「簡単だ、この世界の事を俺達は何も知らない。帰還の方法を見つけるにしても情報が無ければ探すのに苦労することになる。

 だからこの世界の現地住民とコンタクトを取る。出来れば一般の人間ではなく国が存在するのであれば、国の内部、役人に話を聞く事が望ましいな」


フーリの話にコイルが慌てたように話へ割って入る。


「待ってくれフーリ、現地の人間と接触するのは危険じゃないか?

 もし相手が攻撃を仕掛けて来たらどうするんだい?」


コイルが言う事はわかる。確かに絶対友好的な関係で話が出来るとはフーリも思っていない。しかし、情報を集める為に、この世界を知る為には絶対必要となる。

そして、コイルが心配している裏の理由についてもフーリは理解出来た。


それは、人間、もしくは人型の者に攻撃されたとき、どのような対処が自分達に出来るかといったことだ。

フーリ達にはゲームで培った高いステータスがある。そしてスキルという強大な力も持っている。そうそう簡単に怪我をすることはないだろう。

だが、攻撃をされれば反撃することになる、そしてその反撃は高いステータスとスキルから発せられる高い殺傷能力を持った反撃だ。

敵に攻撃が当たれば、間違いなく"死ぬ"。

正当防衛だったとしても人間を殺すことになるのだ。むしろ殺さなければ自分が死んでしまうかもしれない。フーリは自分が死ぬことに関しては嫌だが、納得できる。しかし仲間が死んだ時に自分は落ち着いている事が出来るのだろうか?答えは否だ。


この世界の住人に接触すると言う事は、少なからずそういった可能性が存在する。


それに…。


「コイルが言いたい事は理解出来る。

 だがな、お前も今日ゴブリンと戦っただろ?あんな奴らが居る世界だぜ、四の五の言っている暇も、余裕も無いだろ。

 まぁ、現代のように法治国家があって、治安が守られている世界ならそんな心配もないだろうがよ。

 その可能性は低いだろ。あのゴブリンを見る限り」


『私もフーリ殿の意見に賛成です。自身の命の危険を前にして、敵の命をも守ろうとするのは愚かな行いでしょう』


フーリとクロにそう論されたコイルは苦々しい顔になり、顔を下に向ける。

コイル自身も2人(?)の話は理解出来るが、簡単に納得する事が出来なかった。


「…フーリはどうするの?」


これまで話し合いに全く参加しなかった謎謎が初めて話に参加し、フーリの顔をまっすぐと見ていた。


「…俺は、たとえ人間が敵になっても躊躇はしねぇ」


「そっか…」


謎謎はそれっきり黙ってしまい、その場には重たい沈黙が生まれる。

そんな中で空気を読むといった事をまったくしない、ありすが言う。


「う~ん、別にいいじゃん。

 今の話は覚悟が出来るか、出来ないかであって殺すか殺さないの話じゃないでしょ?

 今決めることはないんじゃない」


…訂正。今回ばかりは空気を読んだようだ。

若干釈然としない気分になるフーリだったが、ここはありすの話に乗っかることにした。


「ありすの言う通りだ。

 覚悟の話であって、人間を殺すと決まった訳じゃない。今はその可能性があるというだけ。

 そして、今後俺達は帰還方法を見つける為に、その可能性が高い場所へ向かう必要がある。

 今はまだいい…。ただ話として聞いて、覚えておいてくれ」


「わかったよ…」、「うん…」


2人も今は納得は出来ないかもしれない、しかしこの覚悟が必要となる時が来るかもしれないのは確かだ。

フーリはそんな2人の姿を見てから、リグリットに目線を向けると、リグリットは無表情でもその瞳にはしっかりとした意思があり、まっすぐにフーリの瞳を見つめ返していた。


リグリットは暫しフーリの瞳を見詰たあとに、小さく頷いた。


彼女もフーリと同じ答えに達したようだ。


【2人が覚悟出来るまで、自分が守る】と。


フーリはリグリットの反応に少し嬉しくなり、2人にはわからないように口の端を持ち上げて笑う。

別にフーリは2人の事をお荷物なんて思っていない、ただ仲間が傷つくのを黙ってみていることが出来ないだけ、そして2人がいつか自分達の中で踏ん切りをつける事が出来ることを信じて疑わない。


5年間の長い付き合いで、それだけの信頼が全員の心にはあった。フーリはそれを信じているだけ。



「まぁ、こんな感じだがよ。

 クロはどうする?何かあるのか?」


『いいえ。

 私もシロも、皆様とご一緒させて頂きます。

 微力ながらお力添えが出来ると思いますので』


『がう!!』


そう言ったクロの顔はドラゴンであるから正確に判断は出来ないが、微笑んでいる気がしたフーリだった。


その後は夕食の続きを取り、明日以降の事について簡単に話をした後に就寝となった。

最後までコイルと謎謎は塞ぎがちではあったが、しっかりと夕飯も食べていたので、フーリは少し安心して自分のテントに滑り込んだ。


一応、見張りは必要かといった話になったが、そこでクロとシロが名乗り出てくれた。


『夜警は私達が行いましょう。今日は皆さんゆっくりとお休みになってください』


その言葉にフーリを含む4人は甘えることにした。ありすだけは「わっ…私のもふもふ…」と渋っていたが、交代でありすのテントで休む事を約束することで納得した。





この世界に来て初めての夜。フーリは明日からの事を考え、仲間と一緒にもとの世界へ帰還する事を1人誓い、眠りにつくのだった。


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