第24話〜プランAはありませんが、何か?〜
どうも、作者のタンポポです。年越しは忙しくて更新に遅れました。すいません…。それでも待っててくれた人(いるかな?)ありがとうございます。最近笑いの要素が少ないですが、見守っててください!
もう部屋中が煙に覆われて真っ白で何も見えない。皆は、皆は無事なのか?
毒ガスが発生してから約5分、俺達はその間呼吸をしていない。
普段当たり前の様にしている事ができないと辛いとは、まさにこのことだ。
いつ意識が飛んでも可笑しくはない状態…と、言うよりもう飛びますね。さようならぁ〜。
「皆、無事か!?」
あきらめたその瞬間だった。智則がロックを解除してドアを開けてくれたのは。
この部屋が地下であったために開いたドアから階段を通りみるみる吸い出される毒ガス。
徐々に視界も良くなりやっと呼吸ができた。
「すまない、暗証番号をハッキングするのに時間がかかった」
そんな事できる高校生がいるかよ。さすが超一流の企業の坊ちゃまだぜ。
『ゴホ…ハァ、助かったぜ智則。俺は大丈…』
俺が最後まで台詞を言えなかったのは智則の表情が強張っていたからだ。嫌な悪漢が背筋を走り、智則の目線の先を見渡す。
最悪の事態。俺以外の奴ら全員が床に屈している。
『冗談だろ?笑えねぇって…!!』
駄目…まるで駄目。誰も反応してくれない。
「落ち着け明、ここをどこだと思っている?我が家には超一流の医者がスタンバイされているんだ。本来、毒を浴びてもその対処が早ければ助かる」
智則の一言に救われた。まぁ、これだけ大きな家だ。それくらいできても当然なのだろう。
「残念ながら、無理…ですな」
俺達の唯一の希望を見事に粉々に打ち砕く言葉を放ったのは、白衣を身に纏い、薄くなった頭皮、伸び放題で不潔そうなヒゲは白髪で、さらに白くなった眉毛は無造作に伸び、目が隠れている。ヨボヨボで艶と張りを失った肌には所々に黒いシミが目立つ。押したら飛んでいってしまうんじゃないかと心配するほど、か細い身体の老人だった。
「ドクター!?どういう事だ!?」
どうやらこの老人が俺達の希望そのもののドクターだった。なのにその老人に無理と言われては、理由を聞くまで納得いくわけがない。
「お気づきでないと…?一年前…いや、今までの事を思い出してみなされよ」
一年前? 智則がこの街を去ったあの頃だ。深く考えている様子だった智則だが解らないと言う表情を浮かべている。
「まぁ、人を人とも思わず、機械のように扱い、すぐに新しい人材を雇う。そんな親子ならば仕方がない」
「何が言いたい…?」
「考えてもみろ、一年前と同じ顔触れの使用人がいるか?優秀な人がいると情報が入ればすぐに入れ換えられる。例えどんなに勤めても…どんなに尽くしても…まるでゴミのようにポイだ!」
俺には深い事など、ましてや辛さなど分からない。…が、なぜか涙が出てきた。
「医療なら自信があったのに解雇されたワシを雇ってくれたのは貴様らのライバル企業さ。そこでだ!貴様ら一家して屋敷を空けていたこの一年、間抜けな奴らを乗っとろうと考えたのさ!この屋敷も!企業の権利も全てだ!!」
ワハハハと悪魔のように品のない高笑いをする老人に、先ほどまでの哀れみが消え、それがそのまま怒りに変わった。しかし、殴ろうとしたところを智則に止められる。
「さらにな、我々企業が送り込んだエージェントで、この屋敷は埋まっているのさ」
気が付けば、俺達がこの家に入る時鳴らした非常ベルに駆け付けた使用人がざっと三十人、その全員が老人の後ろに立っていた。
同く重装歩兵が十人、射撃班が十人、二等兵が十人。こいつらが持っている剣や銃はおそらく本物だろう。向けられた銃口から重い冷たさを感じる。
「…馬鹿が」
この絶対絶命の状況でも智則は何か逆転の策があるように笑った。
この表情が出るからにはマズイと察知した老人は表情をしかめる。
「確かに入れ替えは頻繁にしてきた。だが…渡嘉敷だけは違う。俺が生まれた時から育ててもらった渡嘉敷が…この屋敷を裏切るものか!」
「ほう…それはどうかな?」
そんなものか…そう言わんばかりの老人の言葉に今度は智則と表情が逆転する。
「遅れました…」
「渡嘉敷!!」
渡嘉敷と呼ばれた男は、老人の裏に付いた。この瞬間、渡嘉敷は向こうの企業側に買収された人間の一人だったことが判明した。
その事実がショックなのだろう。万策尽きた智則は言葉を発する事ができず、床に膝を付け座り込んだ。
渡嘉敷は雪ちゃんといっしょにいた。全てが繋がった時だった。
「坊ちゃま…この私が裏切るとでも?」
パッと智則が顔を上げた時には渡嘉敷が老人の頭を殴っていた。…例の地球儀で。
「こうするしかこの屋敷を守る手段はありませんでした。貴方達一家がいないこの屋敷を守る手段は…」
渡嘉敷はずっと味方だった。敵の作戦を見抜くために寝返ったふりをする、最善の戦略だったのだろう。
「な…あんた達、行きなさい」
リーダー格は老人の他にもいた。雪ちゃんだ。その合図と共に射撃班が一斉に攻撃を仕掛ける。
渡嘉敷は鎧を着ているからダメージをくらう事はない。銃の威力もかなりの物なのだが、何せ鎧が頑丈すぎる。傷一つ付いていない。
しかし俺はというとそんな物はなく、まさに無防備。ターゲットは渡嘉敷から俺へと変わった。
渡嘉敷がその事に気付き、俺を庇おうと駆け付けてくれるが遅かった。
銃口を向けられ鼓膜を刺激する音、あぁ…死ぬ……!
……あれ、平気だ。痛みがない。強くつぶった瞼を開けてみると目の前には二人の重装歩兵が銃弾を弾いてくれていた。鉄仮面を被っているため、顔を把握する事ができない。…誰だ?
「…くっ、お前達もか……二等兵、重装歩兵!」
雪ちゃんの合図と共に盾と剣を持った兵士が突っ込んで来る。その数ザッと二十人。
「償うべきだな…」
銃弾を弾いてくれた二人の重装歩兵はそう呟いた。前に出て、渡嘉敷側に付く。またしても寝返りの裏を書いた戦略。
「俺達を忘れちゃいないだろう?明」
忘れるはずがない。その声、拓哉だろう?
「刑務所を出た後、渡嘉敷さんに拾われてな。すっかり更正したよ。俺が犯した罪がこんなので消えるなんて思っちゃいないが…これからは尽くさせてもらいます。智則…いえ、坊ちゃま」
その声は和也さんか。
俺はリョータが握っていた短剣を手に取った。これはリョータが落ちた時から持っていた唯一の武器である。
『プランB!!』
俺の声に体が思わず反応して陣形を取った拓哉と和也さん。
その陣形とは俺がリューファを仕切っていた頃に、少人数の時大人数に囲まれた時の対処方だった。
背中を寄り添うように構え、どの方向からの攻撃にも備えられる。
向かってきた奴らがたとえ何人だろうと…
『よく覚えてたな』
「当たり前だろう。いつもこれで乗り越えてきたじゃねぇか」
向かってきた奴らがたとえ何人だろうと…
自力でブチのめせ!!
それがプランBだ!!