第17話〜舞、リョータ組…スーパーでバイトしていましたが何か?〜
何にしようかなぁ〜。
あ、初めまして☆
今回は私、舞視点でやってきますね。
今は私とリョータで駅から近いスーパーに来ています。
何でも、夕食の食材の調達などと言うかったるい係を任されちゃったわけです。
「…で、何を買っていけば良いんだ?俺はこういう奥様ばっかりいる所は好きじゃねぇ」
『私だって嫌よ…』
現在時刻は3時。お昼も過ぎて空いてるんじゃないかと思っていたのに、まだ店内は賑わっているわ。
その理由は…たぶん目の前のあの人だかりね。
「はーい、いらっしゃいませぇ!ただ今より、タイムサービスで高級霜降りが千円から〜千円から販売しています」
…これだわ!
聞いた話じゃ智則の家はムカツク程の金持ちだったわね。私達が買った市民の料理なんか食えるかぁ〜! なんて言われたくない。
『リョータ、任せたわ!』
「マジ!?だっておばちゃんと主婦達の形相が偉い事になってるんですよ!?」
『いいから行きなさい!その間、私はこの試食品のメロンを喰らうわ』
「今時の女子高生が喰らうって…あぁもう、分かったよ!!」
それでいい…。残った骨は、ちゃんと拾ってあげるからね。
ーーーーーーーー。
リョータだ、フッ、舞がメロンを喰らっているし、俺が人だかりの中に入りこんで見えなくなったため、ここからは俺様視点でやっていくぜ。
「えぇ〜残りあと十個〜あと十個…イタ、お…押さないで…」
それはもうみんな凄い勢いで販売員のお兄さんも参るぐらいだ。
すでに目の前には軽く二十人はいる。この瞬間、十人以上は敗北の涙をすする事になっちまった。
いや、急げばまだ間に合う。なにせ相手は四、五十のオバちゃんだぜ?
どう転んだら現役高校生が競り合いで負けると思う?
しかしなぁ…なんで俺様はこうも運が悪い…?
俺様の足元には六十代の白髪のばあちゃん。この混乱で腰を痛めたのか疼くまっている。誰もこの状況に気付いていない。
いや、気付いたとしても、どこぞの他人のばあちゃんなんかよりも肉が優先の世界なのだろう。そこまでこの世は残酷なのだ。
「うぅ…孫が、孫が待っとるんじゃ…腰が悪いのに孫の誕生日じゃからと言って、こんなババアが来たのは無謀じゃったかのう……うぅ」
などと、痛がっている割りにはしっかりと脚本でも用意しているかの様にすらすらしゃべるばあちゃん。
ここで俺には二つの選択肢が与えられた。
A、ばあちゃんを無視!全力で肉GETの任務遂行。
B、ばあちゃんの手当てを優先。
(Aよ、迷う事なんかないわ。ためらわず…Aを選びなさい)
悪魔(舞)のささやきが聞こえた気がした。
この瞬間に俺にAを選べと言うのか!? ばあちゃんを見捨ててでも…肉を取れとでも…!?
(リョータ…忘れたのですか?明は、今のあなたよりも辛い選択にも関わらず、最後の一口をためらわなかった。リョータが明に負けた理由…鬼になれないあなたはいつまでたっても…)
俺様は、明には…負けない!!
ーーーーーー。
気が付くと俺様は右手に肉を持っていた。
どうやら無意識のうちにAを選んでしまったようだ。
「おつかれリョータぁ〜☆…、?リョータ??」
俺様はさっきまでメロン喰らい終えた舞の出迎えを聞こえないふりをして、先程のばあちゃんの元へ向かった。
予想通り、接戦を終えた主婦達や店員が駆け付けていた。
『あの…、この肉、譲りますよ』
俺様は苦労して手に入れた肉をばあちゃんに渡した。
「うむ、ご苦労」
あれぇ〜?
なんか反応がいくらか違うよねぇ〜?
「いやぁ〜楽して手に入れるにはこの手が1番じゃて。ヒャハハハ」
このクソババァ…
気が付くと俺は…右手に持った地球儀を振り上げ、ばあちゃんに忍び寄っていた…。