第一話 邂逅
挿絵の投稿はPixiv版のみになります(なろうでの投稿の仕方が少し面倒だったので…)。
第二話以降は肥満化要素が強くなるので人を選ぶかもしれませんが、第五十六話以降は多少弱まるので、頑張って付いてくるか、新しい扉を開くか、諦めてください。
シュート君、君には……「…」。
俺の名は横山修斗。ただの高校一年生。こんな名前だけどサッカー経験はない。部活動もすぐに飽きて幽霊か帰宅部が基本だ。基本飽きっぽいけど、ゲームは好きだし、運動も勉強もそこそこ出来る。友達もまあ少なくはないし、これと言って不満がある訳でもない。でも、強いて言うなら普通過ぎる日々に飽き飽きしてる。それが不満かもな…。なんか面白えことねえかなあ?って思って毎日過ごしてる。
「なあ、シュート!今日帰りにカラオケ行かね?」
こいつは俺の幼稚園の頃からのダチで、名前は柳作!昔からケンカもするけど仲はいいって感じの関係だ!俺の初恋の相手取られた時はかなり揉めたな。ああいうのはもう勘弁だ!
シュート「いや、今日はやりたいことがあるんだ。だからカラオケは、また今度で良いか?」
柳「しゃーねえな!んで、何すんの今日は?」
こいつは毎回頼んでもないのに俺のする事について来る。俺がくだらん事をするとわかってもだ!こいつはなんでそんなつまんねー事しないといけねえんだ!ってキレながらもついて来る。頭おかしいんじゃねえかな?
シュート「今日は学校探索だ!」
柳「えー!部活動決める時に回っただろ?もう何も見つかんねーって!!」
シュート「文句があるなら来なけりゃ良いだろ!」
柳「いいや、いくね!」
シュート「なんだコイツ?!じゃあついて来るなら今日一日中文句封印な!!」
柳「ああ、良いぞ?かかってこいよ!」
なんだコイツ!?と思いながら話を進める。
シュート「俺ってやりたい事が特になくてな。でも、この学校部活動必須じゃん?だから、適当に英語研究部入って、3日で辞めたんだよ!でも、なんか、このままで良いのかな?って思ってさ。やりたい事今の内に見つけねえと、多分後悔すると思うんだよ。なんか面白えこと出来る部活動ねえかなって思ってさ。」
柳「でもなかったからこその今なんだろ?だったら意味なく…はないな!是非やろう!」
こいつ、文句封印令をもう忘れそうになってたのか。呆れた奴だなほんと。
シュート「ああ!一ヶ月前の俺とは違う!何か、面白いもの見つけれる気がしてならねえ!」
柳「へえ!良いじゃん!お前勘だけは冴えてるもんな!きっといい部見つかるよ!知らんけど。」
シュート「早速出発!と行きたいところだが、まずはルートの決定をしよう!今我々は4階にいる。1年を最上階に送る忌まわしい制度の犠牲者たる我々だが、その地の利を使い、上層部をコケ落としにするのはどうだ?」
柳「要は、上から順に見て行こうってことだな?」
シュート「そう言ったが??」
柳「いや、そう言えよ!」
コイツは馬鹿なりにも俺に対する読解力だけでいうなら、偏差値70は超えているだろう。俺専用の通訳人になれるレベルだ。
シュート「じゃあ早速行くか!荷物は持ったな?一応水筒も持った方が良いな。最近の5月は体感7月だからな!」
そう言って出発したは良いものの、この棟には基本、教室しかなく、特に大した発見は無かった。だが、その事を柳に詰められるのは癪だ。
シュート「柳よ。ここまでで何か目新しい発見はあったか?」
柳「いや、ねーよ!教室前歩いただけで何も…まさかお前!何か見つけたのか?!」
シュート「ああ、当然だ!我が校舎は4階が1年、3階が2年、2階が3年、というようになっているのはご存知かな?」
柳「ああ、知ってるがそれがどうした?そんなのが発見っていうのなら俺はこの船、降りさせていただくぜ!」
シュート「早まるな柳!お前はただボーッと前だけ見て歩いていたか知らんが、俺はじっくりと観察しながら進んでいたのさ!その結果!1年は放課後居残りする人が最も少なく、3年生が一番多く居残りしている事に気づいた!これが意味する事がわかるか?」
柳「いや、さっぱりだが?お前はどうなんだ」
シュート「ふはは、だからお前はいつまでも柳なんだな。そんなの帰宅部の数に決まっているだろう。1年の内は部活絶対主義な校風だが、2年からそれに反発する者が現れ、3年の時には『受験』という最上位武器を携え、帰宅部に転生する者が多数現れるという事なのだろう!」
柳「すげーや!シュート!お前やっぱすげーや!」
こいつは単純だから勢いつけて喋るといつも簡単に乗ってくれる。コイツのそういう所が面白くて長年友人をやっている所はあるのだ。だがしかし、何か言いたげな顔をしているのに気づいた俺は、
シュート「柳よ、何か言いたい事があるんじゃないか?」
と尋ねた。
柳「バレたか…。いや、実は部活の先輩に聞いた話だけど、3年になったら部活辞めて受験に専念するの認められてるんだけど、2年までは何があっても帰宅部はダメなんだってさ!」
なるほど、適当に考えた俺の考察が強ち良い線いってたせいで、かえって反論の余地を与えてしまったという、パラドックスであったか。まあそれは良いのだが、俺が気になったのはこの学校のイカれようだ。帰宅部によって一度滅ぼされでもしたのか疑うほど、帰宅部を嫌い部活を愛するこの校風、気味が悪い。柳は結構部活サボってるイメージだったから、ここまで部活狂いの学校だと思わなかったな。そういえばコイツはどうやって部活に行かずに俺について来れているんだ?別に1日ぐらいだったらお咎めがないとかなのだろうか??なんなんだコイツは??そのことについても非常に興味深かったが、それよりも気になった事があったので後回しにした。それは、
シュート「何故俺は許されているんだ?」
柳「確か、次の部活に入るまでの猶予期間が2ヶ月だかあったはずだぞ!シュートって、4月に辞めてまだ1ヶ月ぐらいだから声が掛からなかったんじゃないか?あと、お前って辞め方もヤバかったんだろ?たしか。」
シュート「ああ、引き止められないように、完璧な作戦と演技だったぞ!」
ーーそれは1ヶ月前。入部した英語研究部に2日連続で来なかった俺は、3日目ついに放課後放送で呼び出され、部室に強制連行された。その時のことだった。ーー
顧問「何故部活に来ないんだい?」
先輩「そうだよー!結構楽しいよ?うち!ぶっちゃけ他より楽だし良い部活じゃん?」
同級生「オレ、お前と仲良くなりてえよ!」
だり〜なこれ。断りずれえ雰囲気バンバン作りやがって。いっちょかますか?
シュート「い、いや、じ、実は、僕、2重、、、」
顧問&先輩「2重…?」
シュート「2、2重人格なんです!」
先輩「えー!どういうこと?!」
シュート「実は、この部活に入ると決めたのは英語が得意な方の僕でして、僕自身は苦手というか、それ以上というか…」
顧問「でも、克服する良い機会ではないかい?この部活にはね、英語が苦手な子も毎年たくさんやって来るんだけどね?みんなそれを克服して、得意科目になって卒業してくれるんだよ!中にはね、通訳者になった子だっているんだ!だからね…」
シュート「そ、そんなレベルじゃないんです!英語のかた、形を見るだけでもう、気が、ど、動転すると、言いますか、、、、、、
あ!!!!!!!!今、「A」が!!!!!!「A」が目に!!!!!!!!うわあ!!!!!!やめてくれえええ!!!!!!!僕の中に入って来るな!!!!!やめろ!!!!!ああああああああいあ
ああああああい
ああああたああい
いいああああいいあああいあいうあいあああああああ」
その日のうちに俺は英語研究部を辞めた。辞めたのか辞めさせられたのかは覚えていない。俺も演技に夢中になる余り、我を忘れて記憶も無くしてしまっていたのだ。
ーー時は5月に戻る。ーー
シュート「いや確かに、今思い返すと無茶苦茶だな俺。だからやばい奴認定されて声すら掛かっていない可能性はあるか。」
柳「どちらかと言うと、その可能性の方が高いな。」
そう言っている内に棟の一階に来ていた。ここは例の「研究部」がある所だ。
柳「おい、たしかこのフロア…」
シュート「気づいたか柳。ここは危険区域だ。良いか?今から作戦を言う。まず俺が発狂する。するとお前は後ろから『ABCの歌』を歌いながら俺を追え!それで例の部屋を突っ切るぞ!」
柳「ええ…そこまでするなら回り道した方が良くねえか?」
シュート「いや、ダメだ!お前には言ってなかったが、これは学校完全制覇企画なんだ!俺が通っていない道などあってはならんのだ!」
柳「あっそ。じゃあやってやんよ!!掛かってこいよ!!おら!行くぞ!!!エービーシーディー…」
シュート「お、おい待て!ここはまだ部室前じゃねえ!まだ職員室前も通ってねえって!」
そう言ってもガン無視で柳は歌い続ける。こいつキレてるな。やり返しのつもりだろう。俺に恥をかかせるつもりか?あるいは、俺の作戦を破壊して中止させる算段か?!どちらにせよ、俺の道はひとつだ!!
シュート「くそ…!う、う、うわああああああああああああ
あああああいああいああああああああああああ
ああ
あああいああああああああああ
ああう
あああうあいあああああ」
俺は闇雲に走った!おそらく何人か通行人はいただろうし、職員室の先生も驚いて飛び出して来てただろう。だが、もう俺は止まらない!止められる者などありはしないのだ!!そう、俺自身でさえも!!!!
柳「オーピーキューアールエスティーユー!ヴイダブリュー……あれ?この歌の終わり方どんなんだっけ?」
???「君、LMN止めの者だね。」
柳「おい、シュート!!演技はもう良いのか?」
シュート「ああああああああああああああ
あああああ
あああああああああああああ
ああああああああああ
あああああいあああああああ
あああああああああ」
柳「あれ?じゃあ今のって、誰だ?」
???「私だが?」
柳の歌が止まっていた。何故だ??まだ俺は走れるぞ???俺は狂った男。バーサーカー。もう誰にも止められな……。そう思いつつも後ろを振り返ると、柳は英語研究部の部室前で誰かと話している最中であった。よりによってなんでそんな所で止まってやがるんだ?早く歌の続きをくれないと、俺の計画ががががが。
だがしかし、あんな先輩英語研究部にいたか?まああの日にたまたまいなかった可能性もあるし、あるいは、最近入部した同級生の可能性だってあるか?などと考えていると柳の方から声が掛かった。
柳「おいシュート!この人英先輩なんだって!!あの噂の!!」
シュート「(はなぶさ先輩だと?!)」
この学校でその名を耳にせずに過ごせたのは精々3日程だっただろう。帰宅部で縦の繋がりのない俺でもその名を幾度となく耳にした。英英太高校ニ年生。彼は学校始まって以来の超天才。模試などは常に全国一位らしく、Sん台東大模試も高一の時に満点近い点を叩き出し、ぶっちぎりの一位だったそうだ。ぶっちゃけ、自称進学校止まりのここに何故来たのか不明。まあどこでも良かっただけかも知らんが。
彼の伝説は疑わしいものもいくつかある。0歳で大人並みの言語能力を有し、1歳の頃には既に大学レベルの物理と数学を修得した、などがその代表だろう。また、その天才さだけでなく、変人なことでも有名だ。恐ろしいのが、特にこれといったエピソードがないにも関わらず、彼と話した人皆が口を揃えて「奴は変人だ!」という所である。そんなの変人以外の何者でもない!!
彼を知る者なら一度は彼と話してみたいと思うものだろうが、俺は違っていた。何故なら、
シュート「(こいつ、俺とキャラ被ってんだよなあ…。変人キャラで売っていこうと思ってたのによお…。俺より変な奴いたら、俺の立場がなくなるっつーの!)」
柳には悪いが、柳の声は俺に届かなかったものとして扱い、俺は発狂を続けてこの場を去るとするか
シュート「ああああああああああああああああうわああああああいあああああああああえええああ
えああああああああああああああ
ああああああああああ
あああああああ
あ」
???「何してんの?シュート!」
その声は?!
シュート「あああああああああああああ、ああ!あ!お!?え?!あ、ああ、桜か」
彼女は桜、市川桜。俺と柳の共通の幼馴染兼、柳の元カノ兼俺の初恋の人だ。ぶっちゃけ今でも気があるので、この醜態を晒したのは精神的にかなりまずかった!!
シュート「死にたいです。」
桜「え!大丈夫?!取り敢えず部室で休んだら?」
英先輩「君の部室ではないだろう?」
桜「あ、すみません…、じゃなくて!そろそろ新しい部室手配してくださいよ!!」
シュート「何の話をしているのですか?」
正気を失った俺は何故か敬語になっていた。
桜「シュートはすぐ辞めたから知んないかもだけど、英先輩に英語研究部の部室取られちゃったの!!それで、アタシ達今部室無くて困ってるの!」
シュート「ええ!!!?嘘だろ!!!?桜、お前!英語研究部入ってたの?!」
桜「いやそっち?!入ってたよ!!シュートとの部活楽しみにしてたのに!すぐ辞めちゃったんだってね!!私その日は季節外れのインフルで休んでたから知らなかったけど、なんか変なことしたってのは話聞いててわかったよ?」
シュート「な、なんだ…。休んでたのか。なら良いんだ。」
柳「それより!部室取られたってどう言うこと!?何してんすか英先輩!!」
桜「あ!柳もいたんだ!!」
柳「おいひでーなそりゃ!」
こいつら今でも仲良さげなんだよなあ…。なんで別れたんだろうな?俺に気を遣ってるとかじゃねーよな?
そういえばもうここは英語研究部の部室じゃないのか。俺の発狂は何だったんだ?!完全に無駄じゃないか?!
英先輩「まあ良い。君たち入りたまえ。私の部室に。ここだとなんだろう?」
頭が冷えた今、周りを見渡すと、複数人の先生と生徒が俺たちを見ていることに気づいた。他2人もそれに気付き、バツが悪そうにしながら、「英先輩の」部室に入ることにした。




