第1話:義弟の大変身
シーン1:帰宅と衝撃の出会い
夕暮れ時の郊外、静かな住宅街。月城拓也(高2)はバスケ部の練習を終え、汗だくで家に帰ってくる。制服のブレザーを肩にかけ、白いシャツの袖をまくり上げたラフな姿。カバンから鍵を取り出し、玄関を開ける。
「ただいまー。 千佳、帰ったのかー?」
家の中は静かだ。母・美織は夜勤の看護師で、今日は不在。義弟の星宮千佳(中1)は学校から帰ってるはずだが、気配がない。
拓也と千佳は3年前に美織の再婚で義理の兄弟になったが、現在は美織がシングルマザーとして2人を育てる。拓也は千佳を溺愛するブラコンだが、表ではクールな兄貴を装う。千佳は中性的な美少年で、拓也のことを慕っているが、無邪気な愛情表現で拓也を振り回す。千佳と同い年の親友、日向未沙は近所に住む元気な女の子で、よく千佳と拓也の家に遊びに来る。
拓也はキッチンで冷蔵庫を開け、麦茶を一気飲み。
「千佳、どこだよ? また未沙とゲームでもしてんのかな…」
リビングに向かうと、階段から軽い足音が聞こえる。トタトタと、誰かが降りてくる。拓也は振り返り、いつもの調子で声をかけようとする。
「おい、千佳。何して…」
言葉が止まる。階段の上に立つのは、千佳のはずなのに、まるで別人だ。長い黒髪をゆるく結び、星型のヘアピンがキラリと光る。白いブラウスに膝丈のフレアスカート、裾から覗く細い足。顔はいつもの千佳だが、頬にほのかなチーク、唇に薄いピンクのグロスが光っている。
「ね、お兄ちゃん! どう? 美沙ちゃんが貸してくれたんだ!」
千佳は無邪気に笑い、くるっと一回転。スカートがふわっと広がり、拓也の心臓がドクンと跳ねる。
「…は!? 千佳、お前、それ…何!?」
拓也は麦茶のグラスを握り潰しそうになり、慌ててテーブルに置く。頭の中はパニック状態。
(何!? 千佳、いつも中性的だったけど…こんな、こんな女の子みたいに…! いや、義弟だぞ! 落ち着け、俺!)
シーン2:千佳の無自覚な攻撃
千佳はリビングのソファにぴょんと座り、足をぶらぶらさせる。ブラウスから覗く鎖骨がやけに白く、拓也は思わず目を逸らす。
「未沙ちゃんがさ、『千佳、絶対これ似合う!』って。で、試してみたら楽しかったんだ! ね、お兄ちゃん、似合う?」
千佳は上目遣いで微笑み、髪を耳にかける。その仕草があまりに自然で、拓也の喉がゴクリと鳴る。
「…まあ、悪くねえよ。いや、めっちゃ似合ってるけど! でも、なんで急にそんな…女の子っぽいんだよ!」
拓也は声を裏返らせながら、ソファの反対側にドスンと座る。距離を取らないとヤバい気がする。千佳はケラケラと笑い、ソファで膝を抱える。
「えー、未沙ちゃんが『千佳の顔なら、絶対イケる!』って。で、やってみたらハマっちゃった! お兄ちゃん、過保護すぎるよ~。ほら、もっと近くで見てよ!」
千佳がソファでずいっと近づき、拓也の顔を覗き込む。唇のグロスが夕陽に反射し、甘いフルーツの香水がふわっと漂う。拓也の脳内警報が鳴り響く。
(近すぎ! 千佳、義弟! 家族! でも、なんでこんな可愛いんだよ! いや、ダメだ、俺は兄貴だ!)
「ちょ、近いって! 離れろ、千佳!」
拓也は慌てて立ち上がり、キッチンに逃げる。心臓がバクバクだ。千佳は「えー、冷たいなぁ」と笑いながら、ソファに寝転がる。スカートが少しずり上がり、細い膝がチラリ。拓也は冷蔵庫のドアに頭を押し付け、深呼吸。
(落ち着け…これは家族愛だ。千佳を守るのが俺の役目。こんなドキドキ、ただの錯覚だ!)
シーン3:未沙の乱入
玄関のチャイムが鳴り、千佳が「来た!」と飛び起きる。ドアを開けると、日向未沙(中1)がニコニコで登場。金髪ツインテール、元気いっぱいの女の子だ。
「千佳ー! やっぱ超可愛いじゃん! ね、拓也くん、どう? 千佳、めっちゃイケてるよね?」
未沙は千佳の変身っぷりに、満面の笑み。拓也は「うお、美沙! いつの間に!」と驚きつつ、平静を装う。
「まぁ…似合ってるよ。千佳らしいな」とぶっきらぼうに答えるが、未沙はニヤリと笑う。
「ふーん、拓也くん、顔赤いよ? 千佳のこと、めっちゃ見てたでしょ? ブラコン全開じゃん!」
「バ、バカ言うな! 俺はただ…家族として心配なだけだ!」
拓也はムキになって反論。千佳は「え、お兄ちゃん、ボク似合ってる? 嬉しいな!」と無邪気に笑い、拓也の腕に抱きつく。柔らかい髪が頬に触れ、拓也は「うおっ!」と飛び退く。
「お前、急に抱きつくな! ったく…未沙、てめぇ、変なこと吹き込むなよ!」
未沙は「えー、千佳が楽しそうだからいいじゃん!」とケラケラ。千佳は「ね、お兄ちゃん、未沙ちゃんと一緒にメイクの練習していい?」と目をキラキラさせる。拓也は「…勝手にしろ」と呟きつつ、内心(メイク!? まだ可愛くなる気か!? 俺の理性、保つかな…)と戦慄。
シーン4:夜の葛藤
夜、拓也は自室でベッドに突っ伏す。頭の中は千佳の女の子っぽい姿でいっぱいだ。長い黒髪、ふわっと広がるスカート、キラキラした笑顔。拓也は枕に顔を埋め、深呼吸する。
(千佳、今までは普通に接してたのに…今日のあの姿、ヤバすぎる。いや、俺は兄貴だ。義弟を守るのが使命。ドキドキは…ただの錯覚だ!)
廊下から、千佳が鼻歌を歌いながらやって来て、拓也の部屋のドアを開ける。
「お兄ちゃん、明日も未沙ちゃん来るよ! 楽しみ!」
「…お、おう。早く寝ろよ!」
拓也は電気を消し、暗闇の中で独白する。
「千佳、こんな可愛い義弟、反則だろ…でも、俺はちゃんと兄貴やるぞ。」
心臓のバクバクは収まらず、拓也の「優しいお兄ちゃん」像を守るための生活は、波乱の予感しかしない。(つづく)