1話
目が覚めた。
気持ちのいい朝...ではない。
見知らぬ天井がまず目に入る。俺の家には屋根なんてものはないし、当然天井など存在しない。
次に暖かい人の温もりを感じた。それは本能的、とでもいうのか。言葉にできない温かさを感じる。
俺は崩壊した国で、1人だけ残され、雪の中眠りについたはず。それなのにこんな知らない空間にいるのはなん
「ほーら。朝ですよー」
俺の思考を遮るように背後から話しかけられる。柔らかい声色、女性の声だ。
それと同時に俺の視点はぐるりと変わり、声の持ち主の顔が目の前に。
ん? 俺は成人男性であったはずだが...?
「朝ごはんが欲しいのかな? なら朝ごはんにしましょうねー」
そういうと目の前の女性はおもむろに服をめくり、胸を出す。
俺はこの女性に抱えられて...乳房を向けられている? 何かがおかしい。何が起きている?
まずは離れなければ!!
「あ、あぅ!!!」
小さい手のひらが女性の胸を拒絶する。
女性も驚いて俺の体? を手放してしまう。
まずは脱出成功と言ったところか...
離れられれば後は逃げるだけ。受け身をとって...体が思うように動かない...!?
俺は体をひねり、手足で着地するつもりだった。落下しているのだからそうするのが当然だ。いくら体が弱っていようともそれくらいはできる。はずだった。
落下する中俺の体は思うように動かず、90度程しか回ることは出来なかったのだ。
俺はその時、瞬間的に悟った。この体は赤ん坊なのだと。
同時にこうも思う。
これはまずいんじゃ?
必死に何とかしようとした時、ふと周りの景色がスローモーションになった。落ちる中も周りがよく見える。
そんな時ふと壁にかかる旗が目に映る。
前勇者軍の...旗?
赤ん坊になった俺は首から落下。
そのまま死んだ。