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直哉、くる

【☆★おしらせ★☆】


あとがきに、

とても大切なお知らせが書いてあります。


最後まで読んでくださると嬉しいです。


 エルメルマータとともに、わたしは極東城の地下へと潜入していた。

 中ボス的な鬼を倒したあとは、雑魚鬼しかいない。皆、外の対応に向かっているのだ。


 ケミスト領の皆さんのおかげで、ここまでは順調に進んでいる。

 わたし一人では、きっともっと妨害されていただろう。


 ……だからこそ。

 最後の最後まで、油断は禁物だ。


「もうすぐ祭壇です。はい、では」


 走りながら、通信用のマジックアイテムをアイテムボックスに戻す。


「もうちょっとでぇ、ゴールですぅ!」


 エルメルマータは、わたしが通信していたことにも気づいていないようだ。

 それも当然。さっきから、わたしはちょこちょことケミスト領に残している九頭竜くずりゅう白夜さまあてに、定時連絡を入れていた。


「これで終わりですねぇ……!」


 到着したのは、城の最下層。

 そこには巨大な鉄の扉があり、この向こうに祭壇がある。


 わたしはエルメルマータを見る。


「準備万端ですぅ~! ばっちこーい!」

「……よし。行こうか」

「ですぅ~!」


 扉をくぐると、そこは天井の見えないほど巨大なホールだった。

 まるで迷宮の最深部――ダンジョンのボス部屋のような空間。


 その中央に、異様な存在が鎮座していた。

 呪符と呪縄でぐるぐる巻きにされた、巨大な卵。


「あれですねぇ……あれが鬼神の卵! あれをぶっ壊せば、えるたちの勝ちぃ!」


 エルメルマータが弓を構え――ぐらり、と。

 その場に崩れ落ちる。


 そして、わたしもまた膝をついた。


「あれれ……? 力が……抜けるですぅ~……?」

「…………」


 しまった、とは思わない。

 これは……想定通りだ。


「ようやっと来はったか。遅かったやないか、嬢ちゃんたち」


 カンサイ訛りの、その声。


「……九頭竜直哉」


 白王女の兄、今回の黒幕。

 和装を着崩し、ピアスをつけたグレー髪の男が、ニヤニヤとこちらに歩み寄ってくる。


「おやぁ? ボクのこと、ご存じなん?」

「まあ、ちょっと」


 【びにちる】をやりこんでるからな。


「なに冷静ぶってますのん。嬢ちゃんら、今まさに呪術にかかって、動けへんのやでぇ!」

「……焦っても意味がないでしょう」

「でもぉお!」


 にちゃあ、と直哉は不気味に笑う。


「いや~君らには、ほんま手ぇ焼いたわぁ。せやけど♡ そろそろ快進撃も終わりやでぇ?」


 そう言って、わたしの顔面を殴る。

 口の中に血の味が広がり、肩を打ち、倒れたわたしの顔を容赦なく踏みつけてくる。


「女の顔を殴るなんて、最低ですぅ……!」


 涙をこぼしながら、エルメルマータが叫ぶ。

 ――ごめんね。でもこれは、わたしの“賭け”でもある。


 屈辱の姿勢。

 だが、心までは揺るがない。


「今回も、いつもの謎知識で切り抜けてみぃや? まぁ、無理やろけどなぁ!」


「ちくしょぉ……どうなってるんですぅ!? 全然……体が動かない……!」


「せやなぁ。エルフの嬢ちゃんには特にキツいやろなぁ。この【吸魔の陣】……」


「吸魔の陣……!?」


「まさか、あんたがそんな高等呪術を……」

「そらそうよ。ボク、天才やさかい♡ 知らんかったんが、あんたの敗因やでぇ~?」


 エルメルマータの耳がぴくりと動く。

 ……まずい、気づかせたらいけない。


「逃げて……! える……!」


 わたしはアイテムボックスへと手を伸ばす。

 呪符を取り出す【そぶり】だけを見せて――


「っとっと、あきまへんわぁ」


「きゃっ!」


 足を踏まれ、痛みが走る。

 手から呪符が落ちる。


「転移の呪符かいな? 嬢ちゃんだけでも逃がそうってか? ほんま、美しい友情やなぁ~?」


 ……やはり、見られている。監視されていた。


「なんで……呪符の存在を……」

「情報は戦の心臓やでぇ。知ってたら、勝てるんや。……せやけど残念やなぁ、君らここで終わりや♡」


 直哉が勝ちを確信した――

 そのことが、むしろわたしにとっては“勝ち”だった。


「君らは吸魔の陣の中におる。ここでは魔力が吸い取られるんや。つまり、魔法もスキルも使えへん。完全な無力や」


「そ……んな……」


「万事休すやなぁ。さて――ここで仕舞いや」


 ぱちん、と指を鳴らす直哉。

 鬼神の卵が縮み、小さな黒玉となる。


「鬼神の完全受肉はムリや。せやけど……その魂だけ、君の体にぶち込む。つまり、セントリアちゃん、君が鬼神の器ってことや♡」


「な……!?」

「逃げて、センちゃん! あいつ、本気やでぇ!」

「あはは、無理やて。こいつ、魔力がなきゃただの女やさかいなぁ~!」


 直哉が、笑いながらわたしの顔を何度も蹴る。


「女はなぁ、魔法とかスキルがなかったら、所詮男には敵わへんのや!」


 怒りをあらわにする直哉。

 わたしを何度も蹴り飛ばし――


「これで、ゲームセットやぁ」


「いやぁ……! やめてぇ! センちゃぁああああああん!」


 直哉がわたしの髪をつかみ、玉を口に押し込んできた。


「さぁ……目覚めよ、鬼神……!」


 ――しかし。


「は……? どないなってん……?」


「【従魔召喚】!」


 わたしの呼び声とともに、上空からふぇる子が落下。

 ぐったり倒れる彼女。


「……なんや、フェンリルがどうしたちゅうねん。魔力なきゃ、ただの犬やろ」


 ……そう、だが――


「直哉ぁあああああああああああああああああ!」

「う、うそやろ……!? 一郎……!?」


 ふぇる子の毛皮から現れたのは、一条一郎。

 異能殺しを持つ、少年だ。


 すぐさま、吸魔の陣に手を伸ばし――


 パキィイイイイイイイイイイン!!


「ぐえええええええええええええええ!」


 吸魔の陣が粉砕される。


 その瞬間、エルメルマータが魔法矢を構え――

 直哉の腹に撃ち込む!


 直哉は空中を舞い、地に叩きつけられる。


「センちゃん、大丈夫ですか!?」

「ええ、なんとか……」


「でも、鬼神が……!」

「大丈夫。ちゃんと、対策取っておいたから」

「……まさか……」


 わたしはにっこりと笑って言う。


「当然、温泉です」

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★茨木野の新連載です★



↓タイトル押すと読めます↓



『【連載版】追放聖女はキャンピングカーで気ままに異世界を旅する』

― 新着の感想 ―
名前からして呪術廻戦のあいつしか思い浮かばないよな…と思ってたら異形化復活までなぞってきましたな
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