第8話 入れば美人になる温泉、爆誕
女湯に浸かって、さっぱりした。
ふぅ……気持ちよかった。
手早く着替えて、女湯から出る。
外では、ルシウムさまが立っていた。
「おや……これは……」
「? どうしました、ルシウムさま?」
ルシウムさまはわたしを見て、目を大きくむいていた。
「とてもおきれいになられてたので、驚きました」
「お世辞がお上手ですね」
「いえ、本当です。驚きました」
「?」
一体どうしたっていうんだろう。
「嬢ちゃん、風呂でたか?」
「ええ……って、」
「「えええっ!?」」
わたし……そして、アインス村長もまた、驚きの声を上げる。
「じょ、嬢ちゃん……本当に、セントリアの嬢ちゃんかい?」
「それは……こっちのセリフですよ。ほんとにアインス村長なの?」
アインス村長は、生え際が後退した、おっさんだった。
けれど、今のアインス村長は、髪の毛ふっさふさだった。
……おかしい。確か、男湯には、若返りの湯はなかったはず……。
「嬢ちゃんの薬草湯による、湯治のおかげで、髪の毛が生えてきたみたいだぜ」
「そ、そう……」
鑑定結果を、ちゃんと見てなかったな。男湯は、薬草を混ぜた温泉。
怪我だけを治すものだと思ってけど……。まさか、薄毛にも効果あるんだ。
怪我に薄毛がカウントされてたってこと……かな。
「それにしても、見違えましたよ」
髪の毛ふさふさになったアインス村長は、かなりかっこよく見えた。
元々、顔の作りは整っていたからね。
「いやそれを言うなら、こっちのセリフだよ。嬢ちゃん、あんた……めっちゃ美人になってんな」
「村長もお世辞が上手ですね」
「いやマジだって、なあ、おまえたち?」
衛兵さんたちも、男湯から出てきてた。
皆さん風呂上がりだからか、頬が上気していた。
「ああ、やべえ……」「すんげえ美人……」
「肌ぷるぷるだし、髪の毛もつやっつやだ……」「しゅっとしてて、綺麗だよな……」
……????
何を言ってるんだろう……。
「セントリアさん。お風呂上がってから、自分の姿を、きちんと見ましたか?」
「いえ、特に……」
お風呂入って、さっぱりしたら、そのまま出てきたけど(すっぴんで)。
「では、もう一度、よくご自分のお顔を見てくることをおすすめしますよ」
「? はい」
なんか周りの皆さんも、強くうなずいていた。気になったので、いったん女湯へと戻る……。
「なっ!?」
……なんだ、これは。姿見に映っていたのは、トンデモなく……綺麗になったわたしだった。
まず……肌。
肌に散見された、ニキビが全て消滅していた。
次に、髪の毛。不摂生のせいで、ごわごわだった髪の毛が、艶々になっていた。
バランスの悪い食生活のせいで、崩れかけていた体形は、スレンダーボディになっていた。
「……うそ。別人じゃん」
姿見に映っていたのは、セントリア・ドロとは思えないほどの、超美人だった。
……どうなってるんだろう、これ。
わたしは女湯の湯船に向かう。
女湯の露天風呂は、確か、作る際に【治癒レモン】を混ぜた。
男湯を作るときに、上薬草は使い切ってしまったから。
代わりに、治癒レモン(これも薬草と同じ回復アイテム)を使ったのである。
「【土地鑑定】」
~~~~~~
・美容温泉(S)
→入ると、肌荒れ等が治り、美しい外見を手に入れる
~~~~~~
……なるほど。やっぱり、温泉を作る際に、まぜたアイテムによって、異なる効果の温泉を作れるみたいだ。
神の力をいれただけの温泉は、若返り温泉。
薬草をまぜると、治癒温泉(怪我がなおる。発毛効果あり)
治癒レモンを入れると、美容温泉になる……と。
「きちんと検証しておくべきだった……」
今回のは、たまたま、無害な効能だったから良かった。
でも、たとえば、入ったら死ぬ温泉みたいなのが、できてしまう可能性もある。
まあそこまで極端な事故は起きないだろうけど……。
でも、全くないとは言い切れない。
……温泉については、今後、ちゃんと検証していこう。
さて。
わたしが女湯から出ると……。
「出てきた!」「わぁ……! すっごい美人さん!」「なんかもう美人オーラがすごいわ!」
……いつの間にか、銭湯の入り口前には、たくさんの見知らぬ女性達が立っていた。
だれだろう、この人達……。
「あ、アインス村長……この人達は一体……?」
「衛兵たちの奥さんや恋人達だよ。嬢ちゃんの激変っぷりを一目見ようと、やってきたんだってさ」
「激変っぷりって……」
まあ、確かに外見はかなり変化したけど……。
「お嬢ちゃんっ!」
がしっ、と一人の女性がわたしの肩を掴む。
「あ、はい。なんでしょう……」
「ここのお風呂、入ると美人になるって、ほんとかい!?」
「え、ええ……そうらしいです」
わ……! と女性達から歓声が上がる。
「お嬢ちゃん! あたしらも、入りたいんだけど、いいかなっ?」
集まっている女性達が、じっ、とわたしを見つめてくる。
皆目が血走っていた……。こ、怖い……。
「ど、どうぞ……。村の共有財産なんで」
「ありがとう、お嬢ちゃんっ!」
皆さん口々に、わたしに感謝の言葉を述べると、女湯に突撃していく。
……まあ、気持ちはわかる。わたしも女だ。
綺麗になりたい、っていう世の女性の心理は、理解はできる。
「ふぉお! すごぉおい!」「お肌すべっすべ!」「みて! お腹の贅肉が綺麗に消えたよぉ!」「きゃー! すっごぉおい!」
女湯から嬉しい悲鳴が上がってる。まあ、喜んでもらえて良かった。
「すまねえな、嬢ちゃん」
と、アインス村長が頭を下げてくる。
「さっきの、あんたに最初に話しかけてきた女いるだろ? あれ、おれのかみさんなんだ」
「あ、奥様でしたか」
「ああ。ごめんな、嬢ちゃん。温泉のこと、勝手にしゃべっちまってよ」
「別にかまいませんよ。さっきもいいましたが、ここは村の人たちが使うために、作った施設ですし」
ここを利用すれば、だれもが、その効果に気づいただろうし。遅かれ早かれね。
「しかし……こりゃ、大変なことになりそうだな」
アインス村長の言葉に、わたしもうなずく。
入っただけで若返る、綺麗になる、怪我が治る、髪の毛がふさふさになる。
そんな夢みたいな温泉があるのだ。……余所から、温泉を求めて、色んな人がやってくるだろうことは、想像に難くない。
皆が皆、ルシウムさまや、アインス村長みたいに、いい人達ばかりではないだろう。
温泉を悪用しようとしたり、独占しようとしたりする輩が来る可能性だってある。
「わたしの作った温泉のせいで、不要なトラブルに巻き込んでしまい、申し訳ありません」
「セントリアさん、どうか、頭を上げてください」
ルシウムさまが、真剣な表情で言う。
「迷惑だなんて、思っておりません」
「そうだぜ嬢ちゃん。あんたのおかげでけが人は助かったわけだしよ。感謝こそすれ、迷惑なんて思うわけねーだろ?」
……お二人は、本当に優しくて、いい人達だ。そんな温かい人たちのいる領地に、わたしは……好感を抱いたのだった。
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