表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

75/148

第75話 次の結界へ


 都市化スキル。

 土地神の加護から派生する、上位スキルのひとつだ。

 すでに存在する村を“都市”、つまり街へと変える。

 外壁が生え、建物が立ち並び、地面まで整備される。スキル一発で。


「セントリアさんって、本当に叡智の神の生まれ変わりかもですねぇ……」


 エルメルマータが、感心したように呟く。


「だから、神の生まれ変わりなんかじゃありませんってば」


「わかってますよぉ。でもでも、都市開発って、普通は国家事業でしょう? それをスキル一発でドーン! なぁんてやれちゃうの、神様くらいですよぉ?」


 ……まあ、そうか。

 ゲーマーの感覚だと、建物がぽんと出てきても違和感ないけれど、現実でそれをやったら……神扱いされてもおかしくない。


 否定してきたけれど、もしかしたら私(※転生前:セントリア・ドロ)、本当に神の生まれ変わりなのかもしれない。


 いや、わからないことを考えても仕方ない。先に進もう。


「アインス村長……いえ、もうアインス“街長”ですね」


「ちょうちょー?」


 エルメルマータが両手を広げてぱたぱた動かす。蝶の真似らしい。


「……お、おう、オレのことか……ああ……」


「後の管理は、お任せしてもよろしいですか?」


「え、ええ、ああ……嬢ちゃんも忙しいだろうしな」


「助かります」


 私は手早く、街に設置した施設の詳細図と地図を紙に描いて、アインス街長に手渡す。


「どの施設がどこにあるか、ここにまとめてあります。街の運営にお役立てください」


「わ、わかった……。嬢ちゃん、気ぃつけてな」


 アインス街長がぽん、と私の肩を叩いた。


「人手が足りねぇ時は、いつでも声かけてくれよ。あんたには、いつも世話になってるからな。オレにできることなら、なんでもやるぜ」


 にかっと笑うその顔に、嘘はなかった。


「ありがとうございます」


「敬語、別にいらねえけどな」


「そうですか? でもこれがデフォルトなので」


「そっかい……じゃあ、嬢ちゃん。気をつけて、いってらっしゃい」


「はい、いってきます」


 私はエルメルマータたちと合流した。


「では、行きましょう」


「次の目的地はどこですぅ?」


「筑波山です」


 知波ちばのさらに北。つまり茨城県の筑波である。

 栃木、群馬、埼玉、東京──その順番で、残る結界を破壊していく。


「忙しいですねぇ」


「仕方ありません。悠長にしていると、こちらが不利になりますので」


「不利?」


「わたしたちの行動が筒抜けになる。敵が先回りして、対応策を打ってくる可能性があるということです」


「なはは~。セントリアさん、心配性ですねぇ~?」


 ……なんでこの残念エルフは、こんなにお気楽なんだろう。

 こっちはもう、わりと派手に動いているんだが。


 横濱、知波──二つの結界を壊したとなれば、敵には即座に伝わっているはず。

 まともな相手なら、黙って見てるはずがない。


「セントリアよ、呪符が必要ではないかの?」


 はく王女が訊いてきた。


「はい。街の人々を転移させるため、大量の呪符が必要です」


「ならば──ちょっと待っておれ!」


 だー! と叫んで、はく王女が街の方へ走って行く。

 そして木更津の住民たちに、何やら声をかけ始めた。


 しばらくして──

 彼女は両腕いっぱいの呪符を抱えて、駆け戻ってきた。


「これでどうじゃ!」


「すごい……! しかし、こんなに大量の呪符、いったいどこから……?」


「木更津の人々が分けてくれたのじゃ。皆、異能者じゃからの!」


 なるほど。

 【びにちる】の情報では、異能者たちは普段から呪符を携帯していることが多い。


 はく王女は、それを知って人々に呼びかけ、譲ってもらったのだろう。


「……本当に、使わせていただいてもよろしいのでしょうか?」


「無論じゃ! 皆、喜んでおったぞ!」


 ……はく王女が、この地の人々に愛される理由がわかった気がした。

 素直で、まっすぐで、国のために行動している。そして──可愛い。


「セントリアさんってぇ、はく王女と似てますよぉね」


「………………は? 似てる? どこがですか?」


「かわいくってぇ、がんばりやさんなところ……♡ よーしよしよし」


 残念エルフが私をぎゅっと抱きしめ、頭をわしゃわしゃ撫でる。

 ……なんか、完全に年下扱いされてる。中身はもう成人済みの大人なんだが。


 けれど──まあ、悪くない。

 私にはきょうだいがいなかった。

 もし、お姉ちゃんがいたら……こんな感じだったのかもしれない。


「さぁ、セントリアさん! 残りの結界も、ぱっぱらぱーって片付けちゃいましょ!」


 ぱっぱらぱーって……。


 相変わらず残念な人だ。

 でもまあ、「残念エルフ」と呼ぶのは、やっぱりちょっと控えておこう。


「はい。残りの結界も、さくさくっと片付けましょう」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
おお今回は百目鬼が出てこなかった、これで無駄な時間を取られずにサクサク残りの結界を壊しにいけますね。
2025/06/10 20:03 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ