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第64話 信頼される


 篝火花の風呂に入り、鬼対策をしっかりしておいた。


「セントリアさん」

「ルシウムさま……」


 風呂から上がると、ルシウムさまが笑顔で、近づいてきた。

 ……そうだ。ちゃんと、これからのこと、話しておかないと。


 ……でも、優しい彼のことだから、きっと心配してしまう……。


「良い香りですね」

「え……?」


 ルシウムさまがわたしの側へやってきて、きゅっと抱きしめてくださる。


「これは何の香りですか?」

「あ、っと……篝火花です」

「そうですか。とてもいいかおりですよ」

「あ、ありがとうございます……」


 彼はそういって、頭を撫でる。


「その……極東ヒノコクから、大量に人が来ておりまして。彼らを領地にしばらく置いてあげたいのですが」

「構いませんよ」


 ……なぜ、とは決して聞いてこなかった。


「その……色々と、ヒノコクがごたついてるようでして」

「そうですか。私は構いませんよ。いつでも、居ていいです」

「…………」


 彼は、全てを受け止めてくれる。

 余計なことは、聞いてこない。


「……何をしてるのか、聞かないのですか?」

「話してる時間はあるんですか?」


 ……まったく、敵わないな、この人には。


 わたしの心をまるで、覗いてしまってるかのようだ。

 わたしが危険を冒そうとしてる。でも……わたしがどうにかできると、信じている。


 わたしなら、困難を乗り越えられると信じてるから。


「……き、です」


 言って、思わず頬が赤くなってしまう。

 それを言うのは恥ずかしくて、つい……ごまかしてしまった。


「私もですよ」


 彼は微笑みながら、頭を撫でてくださる。


「本当に良い香りです。全てを終えたら、ゆっくり温泉に浸かりましょう」

「ええ、必ず」


 彼がわたしを離してくれる。

 手を振って、きびすを返すと……。


「いやぁ、あちあちのあちですぅ~?」


 ……にやついた顔の、エルメルマータが居た。

 こいつ……見ていたな……。


「覗きなんて、趣味悪いですよ?」

「覗きじゃあないですぅ。バレないように、こっそりと、二人のラブロマンスを見てたんですぅ~」


「ひ、人それを、覗き見っていうんですよ……」


 わたしはスタスタスタ、と歩く。その後ろから、エルメルマータが着いてくる。


「いいんですぅ? 鬼の王をとっ捕まえに行くってぇ、言わなくてぇ?」

「はい。言ったらきっと心配してしまうので」


「でもでも、行き先はちゃんと告げた方がぁ」

「行き先は告げました」


 その先に何がいるかは言っていないけども。

「えるはねぇ、いけないとおもうなぁ?」

「……まあ、領主の了承を得ずに、他国に干渉するのはよくないとは思いますが」


「ちーがいますよぉう。ちゃんとね、思いはねぇ、伝えないとだめだとぉ、えるは思うっちゃう……あう」


 エルメルマータの耳をひっぱる。


「お黙り」

「ひゃいん……」


 ややあって、わたしはエルメルマータ、一郎、そして二葉と合流する。


「では、土地瞬間移動ファスト・トラベルで、横濱へ飛びますよ」


 スキルが発動。横濱へと、一瞬で転移する。

 ……横濱には人の気配がなかった。


「敵は気づいてないようですぅ~?」

「みたいですね。派手に暴れ回ったから、てっきり気づかれたとばかりに……」


 エルメルマータと一郎が、当たりを見渡す。

「いや、敵はお出迎えのようですよ」

「「え!?」」

「集中モードを使ってください」


 敵との戦闘時に使う、集中モード。

 すると建物や物陰に、赤い▼カーソルがいくつも出現してる。


「ひぇええ……ほんとだぁ~」

「……これ、気づかずに進んでいたら、奇襲を受けて死んでましたね」

「すごいです、セントリア姉様!」


 ……やれやれ。


「いいですか? ここは敵地なのです。常に、命を狙われてるという意識で進んでください」

「「ふぁーい……」」


 さて、と。

 わたしは懐から拳銃を取り出す。


「さて、せっかく向こうは、こちらを待ち伏せしてるのです。どうせなら、それを利用してやりましょう」


 間抜けな奴らだ。一網打尽にしてやろう。


「悪い顔してるですぅ~」

「そりゃ、悪役令嬢ですから」

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