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第61話 温泉に入りましょう


 横濱の人たちを、鬼から人へ戻すことに成功した。

 着替えて、巨大スパへと戻ってきた。


「セントリアさぁん、おかえりですぅ~」


 エルメルマータがわたしを出迎えてくる。

 一郎、二葉の隣に……赤み掛かった黒髪の、青年が立っていた。


 その黒い詰め襟のような服装。


「異能狩りの方ですか?」

「!? よ、よく知ってんな、嬢ちゃん」


 異能狩りの青年が驚いてる。


「ほえ? セントリアさん、異能狩りってなんですかぁ?」

「極東にいる、異能犯罪者達を取り締まる、国家組織のことです」


 警察的な人たちだ。


「オレは五十嵐 烈日れつじ。一郎と二葉の、親戚だ」


 親戚……?

 一郎たちと名字が違うような……。


 いずれにせよ、【びにちる】の名前持ち(ネームド)キャラではない。


「烈日さんは、横濱で異能狩りとして働いているんです。だから、横濱で起きた詳しい事情を知ってるかと」


 と、一郎が言う。


「他国の人間に、手間取らせてしまってすまないな。それと……」


 ぺこり、と烈日さんが頭を下げる。


「オレの弟分たちを、助けてくれたこと、心から感謝する!」


 ……この人も、家族思いのいい人なんだろうな。


「いえ、おきになさらず。それより、五十嵐さん。一体横濱で何が起きたんですか?」


 彼の話をまとめると、こんな感じになる。

 数日前、鬼が大量発生した。

 そして同時に、突如として領域結界が横濱に展開。

 だれも横濱から出ることも、また横濱に入って来れなくなった。

 あっという間に横濱の町は、鬼で溢れかえる。


 あまりに突然だったことで、対応が後手に回ってしまった。

 結果、異能狩りは鬼をしずめることができずに、自らも鬼になってしまった……と。


「横濱に結界を張った人物を、目撃しましたか?」

「ああ。見たよ。あれは……鬼じゃあなかったな」

「! それは間違いないのですか?」

「ああ。そいつだけは、ツノも爪も生えてなかったしな」

「人相は?」

「夜だったし、遠くからだったから、詳しい人相はわからなかったな」


 結界を張ったのは、人間。

 つまり鬼の王には協力者がいるということだ。


「ヨコハマを襲撃した理由ってなんなんですかねぇ?」


 とエルメルマータ。


「海路の封鎖でしょうね。船に乗って人が逃げたり、助けを呼びにきたりしないようにと」


 まあ封鎖される前に、一条兄妹は運良く逃げてこられたわけだけども。

 横濱襲撃は、烈日から聞いた話だと、一郎達が出て本当にすぐくらいのことだったらしい。


「ありがとよ! 一郎、二葉! おまえたちがいたおかげで、横濱は救われたぜ!」


 むぎゅっ、と烈日が一条兄妹を抱きしめる。

 二葉は嬉しそうに笑っていたけど、一郎は沈んだ顔のままだ。

 何か気にするようなことあっただろうか……。


「で、嬢ちゃん。これからどうする?」


 烈日がわたしに方針を聞いてくる。


「鬼にされた極東の人たちを、元に戻します」

「まあ、嬢ちゃんのこの温泉があれば、皆戻せるだろうけど……。極東の人間全員ってなると、大変じゃあねえか?」


 極東は現実の日本と同じくらいの広さをしてる(人口は極東の方は少ないけども)。

 現代日本人全員を、ここへ連れてきて鬼から人に戻す……となると、確かに大変だ。


「でも、まだ極東中に、鬼の被害は広がっていないと思います。が、ほっとくと被害は指数関数的に増えていくかと」

「ってことは……」


「はい。元凶である、鬼の王を捕まえ、鬼の増殖を食い止めます」


 それをまずしないと、どんどん鬼が増えていく。

 対症療法的な感じで、極東人を治療していっても、徒労になってしまうから。


「オレも手伝うぜ、もちろん!」

「ありがとうございます。では、横濱の人たちのとりまとめをお願いします」


「あん? オレも鬼と戦えるぜ? 一級異能者だからよ!」


 【びにちる】では、異能者には強さに応じて等級分けされている。

 一級異能者というのは、上から二番目の、強さに該当する異能者だ。


「いえ、それより、横濱の人たちと一緒に、ケミスト領で待っていて欲しいです。今回の作戦は、少数精鋭で行いたいので」


 人が増えると、その分、鬼が(敵が)増えるリスクもあるから。

 それよりは、鬼から人に戻って、困惑している人たちをまとめて、ここで待っていて欲しいのだ。


「嬢ちゃんがそうして欲しいっていうなら、わかった!」


 烈日はとても聞き分けのいい人のようだ。助かる。


「あたしはセントリア姉様に協力する! 護衛が必要だから!」

「…………」


 やる気満々の二葉とは対照的に、一郎は……沈んだ顔をしてる。


「ぼ、ぼくは……残ります。役に立てないから……」

「役に立てない……? どうしてよ、兄さん! 兄さんは役立たずなんかじゃあないわ!」

「でも……ぼく、異能使えないし……」


 そういえば、前にそう言っていたな。


「異能の使えないクズのぼくじゃ、かえってセントリアさんの迷惑になるだけだし……」


 ……まあ、言いたいことはわかる。

 わかる、けど。


 わたしは知ってる。一郎は異能が使えるってこと。

 現に、【びにちる】本編では、一郎は異能が使えていたのだ。


「一郎、わたしは……あなたに着いてきて欲しい。この先の戦いで、あなたの異能はとても役に立つので」

「は、話聞いてました? ぼくは異能使えない……」


「いえ、使えます。使えるように、してみせます」

「え? ど、どうやって」


 わたしには一つの仮説があった。

 それを、実行しようと思う。


「温泉に、入りましょう」

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― 新着の感想 ―
あ〜、温泉入りたい
やぱり温泉……温泉はすべてを解決する……(しこうほうき)
( ̄▽ ̄;)「鬼滅の刃」ならぬ、「鬼滅のスパ」… ( ̄▽ ̄;)…もう、何でもありやな、セントリア様…
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