第6話 怪我人を治す露天風呂つくる
外壁の外にて。
「これで終わりではありません。すぐ第二波がきます」
わたしはルシウムさま、そしてアインス村長に言う。
「まずいな。このまま魔物が第二、第三波……と大量に押し寄せてきたら、さすがにルシウムひとりじゃ対処しきれなくなる……」
アインス村長の言うとおりだ。
ルシウムさまのほうが、大灰狼よりレベルで上回れてる。
けれどいくら強くても、体力には限りがあるのだ。
戦い続けたらいつか倒れてしまう。だから、その前に早急に、手を打つ必要がある。
「アインス村長。このメモに書かれてるものを、村の商店からとってきてください」
わたしは持ってきていたメモ帳に、必要な素材を書いて、村長に渡す。
「どれも、この村で売ってるもの、備蓄してるものはずです」
「あ、ああ……あるけど、しかし嬢ちゃん、なんで知ってるんだ? あんたここに来たばかりなんだろ……?」
「後で説明します。お早く」
「お、おう……」
ゲーム時代、何度もこの村に来たことがある。ショップで購入できるものも、当然、把握済みだ。
ほどなくして、村長が、薬草やら花やらを入れた籠を持って、わたしたちの前へやってくる。
ぱっ、と目を通して、必要なモノがそろってることを確認する。
「セントリアさん、今から一体何をするのですか?」
「【魔除けの匂い袋】を作ります」
「まよ……? なんですか、それは?」
ルシウムさまは知らない様子。
まあゲーム内でもかなりレアなアイテムだったしね。
「魔物の嫌いな匂いを発する、匂い袋です。それを使うことで、魔物が一匹も寄りつかなくなります」
ルシウムさまたちが、ぽかんと口を開いている。
「そ、そんなものが存在するのですか……?」
「魔物が一匹も寄りつかなくなるって、そんなすげえアイテム、一体どうやって作るんだよ……?」
わたしは素材の前に手を置く。
「【錬成】!」
わたしの持つ、土地神の加護の力、【錬成】スキルを発動する。
錬成スキルとは、錬金術を使うスキルだ。
このゲームにおける錬金術とは、物体(複数の物体)の形をかえ、別の物体を作る行為。まあ、簡単にいえば素材を合成して新しいアイテムを作るスキルだ。
アインの村でとれる素材から、わたしは、魔除けの匂い袋(の中身)を錬成する。
薬草などが光り輝くと、少しくすんだ色の薬草へと変化する。よし、問題なく完成した。
「あとはこれを、布袋の中にいれれば完成です。村の方にあとで手伝って貰いましょう」
「い、いや……嬢ちゃん。これでマジで、魔物が寄りつかなくなるのか……?」
「はい。あ、ちょうど魔物が来たようですね」
大灰狼が森からやってくる。
ルシウムさまが剣を構えるが……。
「きゃんっ!」「きゅーん!」「きゃいぃいん!」
大灰狼達が、きびすを返して、去っていった。
「し、信じらんねえ……」
「あの凶悪なモンスター達が、尻尾を巻いて逃げていきます……」
よし、OK。魔除けの匂い袋は、問題なく効果を発揮してるね。
「すげえなこれ……。よくこんな物の作り方を知ってたな」
とアインス村長。
まあ、ゲームで何度も、このアイテムを作ったことがあるからね。
びにちるをやりこんだ私は、魔除けのお香をはじめとした、レアアイテムのレシピを、全て把握してるのだ。
……そのことを、正直に伝えたところで、ゲームの住人である彼らにはなんのこっちゃだろうし、理解もされないだろう。
「まあまあ」
「まあまあって……嬢ちゃんマジなにもんなんだよ……」
「ただの、婚約破棄された、哀れな令嬢でございます」
「いや全然ただの令嬢じゃあねえだろ……」
ルシウムさまがわたしに、またも、深々と頭を下げる。
「本当に、ありがとうございます。セントリアさん。二度も領地の危機を救ってくださって。あなたには、感謝しても仕切れません」
「いえいえ。気にしないでください。さっきも言ったとおり、わたしは領主の妻として当然のことをしてるまでですよ」
「君は美しく、能力があるだけでなく、謙虚でもあるのですね。本当に、素晴らしい」
別に謙虚に振る舞ってるつもりは無いんだけども。
「さて……。これで魔物がしばらく来ないので、この間に、けが人の本格的な治療を行いましょう」
ルシウムさまと、アインス村長に、わたしが言う。
「治療って言っても、村でできるのは、簡単な応急処置くらいだぜ? 大きな怪我を直すなら、王都から治癒師か薬師を呼ぶかしねえと」
「土地瞬間移動で、王都へ行くのですか?」
いえ、とわたしは首を横に振る。
「その必要はありません。外部から人を呼ぶと、お金がかかりますし」
「では、どうするのですか?」
「温泉を作ります!」
ルシウムさまは「なるほど」と、一方でアインス村長は「はぁ~~~~~~~~~?」と困惑顔で言う。
「温泉を作る、だぁ? 何の冗談だよ」
「冗談ではありません。けが人を治すために、温泉を作ります」
「だから! なんで温泉を作ることが、治療になるんだよ!」
まあまあ、とルシウムさまが、アインス村長をなだめる。
「アインス。セントリアの好きにさせてください」
「ルシウム……」
「彼女の作る温泉は、特別な温泉なのです。彼女の温泉の効果で、私はリウマチが治り、さらに若返りまでしたのです」
「………………………………マジで言ってるのか?」
「ええ」
アインス村長がルシウムさまを見やる。
「………………わかった。温泉作ってもいいぜ」
「ありがとうございます」
どうやら、わたしではなく、ルシウムさまの言葉を、アインス村長は信じることにしたみたい。
ルシウムさまは、領地の皆さんから、信頼されてるんだな。
「では、さっそく温泉作りにとりかかります」
「何か必要なものはあるか? スコップとか。力仕事になるだろうから、若い連中にも声をかけておくか?」
「いえ、必要ないです。わたし一人で温泉作れますし」
「はぁ……? さすがにそれは嘘だろ……?」
「大マジですよ」
わたしの目を見て、次に、ルシウムさまの目を見やる。
アインス村長は「まじか……」とつぶやく。
「あ、上薬草だけ、用意してください。店に売ってますよね?」
「わ、わかった……」
で。
わたしたちは、アインの村の中へ移動する。
空き地を使わせて貰うことにした。
「上薬草とってきたぞ」
村長から、草の束を受け取る。
わたしはそれを握りしめて、空き地の地面に、両手を付ける。
「【採掘】」
そのときだ。
ごごごごごお……! と地面が揺れて、地中からお湯が噴き出す。
「は!? お湯が吹き出ただと!?」
勢いよく吹き出すお湯をみて、村長が言う。
「る、ルシウムよぉ? まじこれ、どうなってるんだ……?」
「セントリアさんは、神に選ばれし特別な御方なのです。これは、彼女の持つ土地神の力の一端です」
「まじかよ……」
「ええ。アインス。貴方はけが人を連れてきてください」
「わ、わかった……」
さて、アインス村長が戻ってくるまでの間に、必要となるものを作って、露天風呂として機能できるようにしておこう。
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