第56話 ツノ鬼、撃破
二葉は地面を蹴ると、弾丸の速さで、ツノ鬼めがけて跳び蹴りをかまそうとする。
ツノ鬼はギリギリで回避する……が。
ドゴオォオオオオオオオオオオン!
「うぇええ~……!? ケリ一発で、た、建物が破壊されたぁ……!?」
3階建ての建物が、今ので、完全に崩落したのだ。
「ふ、二葉……! 大丈夫なのっ!?」
一郎が叫ぶと、がれきのなかから、二葉がけろっとした表情で出てきた。
「だいじょうぶっ!」
あの崩落に巻き込まれても、怪我一つ負っている様子もない。
「なんかパワーと頑丈さがめちゃくちゃあがってないですかぁ……」
「それが鬼化によるものです。体のつくりが人間とは全く別の、別の生き物になるんですよ」
「はえ~……って、あれ!? 腕が戻ってる!?」
「はい。治癒の湯をぶっかけましたので」
ここへ来る前に、ボトルの中に、温泉を入れておいたのだ。
危険地帯に行くのだから、これくらいの準備はして当然である。
「改めてですけどぉ、失った腕までもどるなんて、やっぱおかしいですぅ」
ツノ鬼が二葉に襲いかかる。
二葉はハイキックで、敵を上空に蹴り上げる。
ぶっ飛んでいったあと、先回りして、二葉が両手でハンマーを作りたたき落とす。
ドゴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!
「ぎ、が……がぁあああああああああああ!」
ツノ鬼はふらふらと起き上がると、ジャンプする。
「なんでまだ戦うんですかぁ~……? 勝敗はもう決してるのにぃ~……」
「理性が残っていないからでしょう」
鬼化による弊害だ。
目の前に、餌がいると、食わずには居られない。
彼我の実力差を、はかることができないのだから、獣よりも遙かに知能で劣る。
……一方、二葉は、違う。
鬼の力を持ちながら、人間の理性を併せ持つ。
空中に居る二葉めがけて、ツノ鬼が無謀にもつっこんでくる。
二葉は体をひねって攻撃を避ける。
そのままツノ鬼の腕を掴んで、思い切り地面に向かって投げ飛ばす。
ツノ鬼は地面に叩きつけられ、バウンド。
「せやぁああああああ!」
一方で二葉は上空から凄まじい速さで、回転しながら落ちてくる。
そして、強烈なかかと落としを食らわした。
ドゴォオオオオオオオオオオオオオン!
……地面には、巨大な穴が空いた。
まるで隕石が直撃したかのようだ。
中心部には、動かなくなったツノ鬼。
そして、その上に足を載せている、二葉が居る。
「兄さんっ、勝ったよー」
二葉がこちらに向かってVサインしている。
……二葉の一撃は、ツノ鬼の心臓を完全に潰して……。
「あたし、こんなに強くなったよっ。すごいで……」
ズドンッ……!
わたしは二葉めがけて、発砲していた。
「ちょ……え!? せ、セントリアさん!? 何をしてるんです!? 二葉ちゃんを撃つなんて……」
がくんっ。
「……え!? お、鬼……? ま、まだ生きてたの!?」
二葉ちゃんの後ろで、鬼が膝をついて、俯いてる。
「そんな……完全に心臓を潰したはずなのに……どうして……?」
やはり、二葉は理解してなかったようだ。
「ツノ鬼には、再生能力があるんです。それも、半端じゃあないスピードです」
二葉の開けた穴は、完全に塞がっていた。
ツノ鬼はわたしの麻酔銃をうけて、その場で動けないで居る。
「ツノ鬼は心臓を潰したくらいでは死にません。完全に殺すなら、首をはねなさい」
わたしは二葉の元へ向かい、ツノ鬼にさらに麻酔銃を放っておく。
「……完全に、油断してた、アタシ」
「そうですね。次からは、油断しないように」
二葉がしょぼくれている。
ちょっと強く言いすぎてしまったろうか。
「二葉……!」
一郎が二葉の元へ駆けつけてきて、ぎゅっと抱きしめる。
「すごいよ二葉! ツノ鬼を圧倒しちゃうんだもん!」
「でも、アタシ……危うく、みんなに迷惑かけるところだった……」
「迷惑なんてとんでもないよ! 君はぼくらを救ってくれたじゃあないか! すごいよ!」
一郎に励まされて、二葉は気持ちをもちなおしたようだ。
「それにしてもぉ、助かりましたよぉ」
ツノ鬼をワイヤーで拘束し、エルメルマータが言う。
「セントリアさんが、鬼の生態にめちゃ詳しくてぇ」
【びにちる】で、ツノ鬼の強さには手を焼いた物だ。
その苦い記憶があるから、わたしはツノ鬼に対処できたのである。
「二葉さん。鬼から人に戻れそうですか?」
「え、あ、はい」
二葉の額から生えていたツノが引っ込んでいく。
少しすると、完全に人間の姿に戻っていた。
「すごいよ二葉……! 鬼から人間に戻れるなんてっ」
「うん……でも、あんまり自分の力って感じしないんだ」
「どういうことだい?」
「ずっと体に、温かい力がまとわりついてる感じがするの。鬼になって体が冷たくなろうとするんだけど、その温かい力のおかげで、人間で居られるみたいな」
……【びにちる】では、鬼になったら人間には決して戻れない。
だから、今この現象は、現実になった影響と考えるのがいいだろう。
「これ、温泉パワーじゃあないですかぁ~?」
と、エルメルマータ。
「温泉に入ったおかげで、鬼化をコントロールできるようになった的な」
なくは、ないか。魔力温泉に入ったトリムは、魔法のコントロール能力と威力が向上した。
それと同じように、鬼化コントロール力が、温泉に入ったことで向上した……と。
「アタシも、エルメルマータさんと同意見です。鬼から人に戻れたのも、セントリアさんの温泉のおかげでしたし」
「他の鬼と二葉の違いって、セントリアさんの温泉に入ってるか否かですし、やっぱり温泉パワーですよ。すごい……」
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