第47話 懲りない、バカ聖女
このゲーム、【びにちる】のコビゥルに転生した、あたし。
共通ルートでは、ゲーム知識を使って無双、イケメンたちを魔道具を使ってメロメロにしてやったわ。
そんで、メインヒーロー・テンラク王太子の婚約者の地位について、あたしの人生勝ち組確定……!
って思ったんだけど……。
どーにも、思っていた通り事が進まないのだ。
先日行われた、マデューカス帝国でのパーティでは、散々な目にあった。
新たに発見されたイケメン(トリム)には逃げられる。
怪我した皇族を直そうとして、失敗し恥をかく。
さらにテンラク王太子から、バカ女扱いされる始末……。
もぉお! ストレスがたまるったらありゃしないわ!
「ちくっしょう……全然おもしろくないわー」
あたしは現在、ゲータ・ニィガ王国の王都に住んでいる。
王太子の婚約者って立場を利用し、王城で一番広くて豪華な部屋を私室として使っている。
あたしはベッドに寝そべりながら、バリボリ……と甘いお菓子を食べまくっている。
イライラしたときは、あまいものに限るわよね。
「あー……ほんっとイライラする……! 今思い返してもはらわたが煮えくり返るわ……!」
マデューカス帝国から帰ってきても、このイライラは収まらなかった。
ここは、主人公にとって都合の良い世界のはずなのに!
なんで主人公の思ったとおりに事が進まないんだっつ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~の!
「またイライラしてきたわ!」
あたしはバリボリとクッキーを寝そべりながら食べていた、そのときだ。
コンコン……とドアがノックされる。
入ってきたのはあたし専属のメイドだった。
「コビゥルさま、そろそろ夜会の準備をする時間でございます」
「もうそんな時間か……しゃーない」
あたしは残りのクッキーを食べて、立ち上がる。
今日は王城で夜会が開かれるのだ。
あたし、パーティって好き。
なぜなら、やってくる女ども相手に、マウントが取れるからね!
なにせあたしはこの世界の主人公。
そして、あたしの彼は王子様。
この国の夜会にやってくるのは、この国の貴族の人たち。
つまりは、あたしより下の人間どもだ。
あたしに絶対逆らえないやつを相手に、マウントとるのって、この世で一番楽しいことよね~。
マデューカスは外国だったし、襲撃事件もあったしで、あんまりパーティを楽しめなかった。
でも今回は違う。国内だし、マデューカスみたいな小さい国と違って、ゲータ・ニィガは大国だ。
前回みたいなトラブルは、絶対、100%、起きやしないんだから。
もし起きたとしても、あたしの彼がスマートに解決してくれるだろうし~。
メイドはまず、あたしにドレスを着せてきた。
……が。
「あ、あれ……? なんか……きつくない……? このドレス……?」
用意されたドレスが、すっごく、きっつきつなのだ。
腕の周りとか、腰回りとか、めっちゃキツい。なにこれ……?
「ちょっと、サイズが合ってないわよ! 古いドレスなんて持ってくるんじゃあないわよ!」
「い、いえ……これはつい先日、テンラク王太子殿下が、コビゥル様に送ったプレゼントのドレスです……」
テンラク王太子……こんなの送ってきたっけ……?
なんか色んな人から、色々もらうから、いちいちなにもらったのか覚えてないのよね。
まあそれはどうでもいいんだ。
問題は……つい最近買ったドレスに、体がフィットしないってこと。
……もしかして、太った……?
いや、いやいやいや、そんなまさか……。
なんで太るのよ?
あたしはこの世界の主人公なのよ……?
ゲームの顔ともいえる主人公が、デブるわけないじゃん!
それに、ゲームでは主人公が料理をいくら食べても太らなかったし……!
「あたしは太ってない! 今すぐ別のドレス用意してきて!」
「サイズの合うものをそんな急にこしらえるのは不可能ですよ……」
「なんでよ!? ゲームならパッと買ってさっと装備できるのに!」
あーもー! このゲームどうなっちゃったのよ!?
ちょっと最近、主人公に厳しくない!?




