第44話 セントリアの元パーティメンバーが森で迷子になってた
わたしたちはまだ森の中に居る。
「【土地再生】」
地面に手をおき、山神の加護の力を発動させる。
エルメルマータの一撃によって、えぐれた大地や、倒れた木々が元通りになっていく。
「すごいですぅ~! 森も土地も元にもどってるですぅ! スキルですかぁ~?」
「ええ。【土地再生】スキルです。壊れたり、汚染されたりした土地を、元に戻すスキルです」
使用すると範囲内の土地を元の状態に戻せるのだ。
「壊れたものを一瞬で直すとかぁ、まさに神様みたいですぅ~♡」
どうやらすっかり、エルメルマータから好かれているようだ。
その後もエルメルマータの壊した土地を、スキルで直していく。
そのときだ。
ぴた、とエルメルマータが足を止める。
「どうした、える嬢ちゃん?」
「……人が倒れてるですぅ」
……ふむ。魔物に襲われたけが人かもしれない。
領地内で、怪我してる人を見かけてしまった以上、放置はできない。
「助けに向かいましょう」
「あ……」
「どうしました?」
「あ、いえ……なんでもないですぅ~……」
「エル嬢ちゃん大丈夫か? 顔色悪いけど」
「いえ……ほんと、大丈夫……ですぅ~……」
……アインス村長も、エルメルマータの様子がおかしいと思ってるらしい。
「体調が悪いなら、先に帰っても良いんですよ?」
「……いえ、着いてきます。斥候役が、仲間を置いて一人帰ることなんて、できないですぅ……」
良い心がけだ。本当にエルメルマータは優秀な斥候だと思う。
そして、わたしたちはけが人(推定)のもとへ向かう。
そこには、冒険者らしき数人の若者達が、倒れていた。
わたしは手早く、彼らの状態を調べる。
「怪我はしてるようですが、どれもかすり傷程度ですね」
「じゃあなんでこいつらは伸びてるんだ?」
「まあ、エルさんの魔法矢に驚いたのかもしれませんね」
彼らがいたのは、エルメルマータの放った魔法矢の痕跡の近くだ。
あれだけド派手な攻撃を目の当たりにしたんだ、びっくりしすぎて、気を失ったのだろう。
「とりあえず治癒します。温泉もってきてるんで」
ボトルの中にいれてある、温泉を、彼らの顔にぶっかけていく。
彼らはすぐに目を覚ました。
「かはっ! はあ……はあ……い、生きてる……? ぼく、生きてる……」
男はホッ……と安堵の息をつく。
残りのお仲間たちも目を覚ました。
「君が助けてくれたのかい? ありがとう!」
と男がわたしに頭を下げる。
「あなたたちは?」
「申し遅れた。ぼくらはSランク冒険者パーティ【黄昏の竜】!」
聞いたことのある名前だった。振り返ると、エルメルマータが辛そうな顔をしていた。
やはり、この子がもといたパーティだ。
「そしてぼくはリーダーのカスクソーさ!」
……最初に目を覚ましたこの男が、エルメルマータに酷いことをした、カスクソ-のようだ。
なるほど、エルメルマータは、倒れている人たちが黄昏の竜の面々だと気づいていたのだろう。
だから、顔を合わせたくなかったようだ。
……エルメルマータに悪いことをしてしまった。
会いたくない相手に、無理矢理会わせてしまったのだから。
これ以上、長居したくない。エルメルマータを辛い思いさせたくないし。
「では、我々はこれで」
「ちょ、ちょっと待ってくれ……!」
がしっ、とカスクソーがわたしの手を掴む。
「……なんですか?」
わたしはこの男のことが嫌いだ。
仲間を理不尽に追い出したカスだと知ってるからだ。
「出口までのルートを知らないかい? 実はぼくら迷子でね」
まさかとは思うけど……。
この人達、エルメルマータを追い出してから、ずっと迷っていたのか……?
「数日前にここへ狩りに来てね、そこからずっと迷い続けてるんだ」
やっぱり……。
「頼む、出口までのルートしっていたらおしえて欲しいんだ」
「知りません。いきましょう、二人とも」
わたしは村長とエルメルマータにそういって、その場から離れようとする。
「いやいやいや、ちょっと待ってくれたまえ!」
カスクソーが後ろから近づいてくる。
わたしの肩を強く掴む。
「新進気鋭のSランカーであるぼくらに、何だねその態度……あいたたた!」
カスクソーの手を、アインス村長がひねり上げる。
「痛い痛いって!」
「助けてくれた恩人に対して、その態度はねーだろ」
「わ、わかった無礼を謝罪するから……!」
ぱっ……と村長が手を離す。
カスクソーは「すまなかった」と頭を下げる。
が、この人の謝罪なんて別に欲しくはない。早く、ここから立ち去りたかった。
「頼む、我々はとても今困ってるんだ! 森から、何故か全然出れなくて……」
何故か、だって……?
ちょっと、いや、かなりイライラした。
「何故出れないか、その理由は単純明快。パーティに斥候がいないからですよ」
「斥候が……? いや、あれは雑用係だろ……?」
カスクソーは何にもわかっていない。
パーティメンバーも、同じ顔をしている。
「斥候は、確かに活躍が地味です。敵を単体では倒せないですし。でも……彼らがいるおかげで、ダンジョンで迷わず進めたり、トラップを回避できたりしてるんです。重要な職業なんですよ」
斥候は地味な職業で、仲間に入れないプレイヤーも多い。
けれど、彼らの持つサポートスキルは、冒険になくてはならないものだ。
……彼らは斥候を、単なる雑用係としか思っていないようだったけども。
「あなた方が今日まで気持ちよく冒険できたのは、あなたたちが追い出した斥候がいたおかげです」
「いやそれはおおげさじゃ……」
「でも現に、斥候がいなくて凄く困ってるんですよね?」
「うぐ……」
自分たちから、困っていると言ったからか、カスクソーは何も言い返せていないようだった。
……こっそり、エルメルマータが泣いてるのが視界の端に見えた。
「斥候を自分たちで追い出したんです。それで困ってるんだから自業自得です」
「いや……あれ? なんでこのパーティに斥候がいたことと、追い出したことを、知ってるんだい……?」
「答える義理はありませんね。では」
わたしは彼らを置いて、その場を後にする。
「あ、ちょ、ちょっと待ってくれよ! たのむ! たすけてくれ!」
「仲間を大事にしない人間を、助けるつもりは毛頭無い」
わたしは茂みに入った瞬間、土地瞬間移動を発動。
村長とエルメルマータを連れて、アインの村へと帰ってきた。
ふんっ、とアインス村長が言う。
「嬢ちゃん、よく言ったぜ。迷い込んだ一般人ならともかく、あんなやつら助ける必要ねーよ」
わたしもそう思う。まあ、せめてもの情けとして、彼らには魔除け(の温泉)をかけておいた。
散々迷うだろうけど、まあ、魔物に襲われて死ぬことはないだろう。
「ありがとう、セントリアさん。えるのこと、あんなに褒めてくれて……お世辞でもうれしいです」
「お世辞じゃあない、事実ですよ。大丈夫、あなたは優秀な人間です。自信もって? ね?」
エルメルマータが顔を上げる。晴れ晴れとした、笑顔をわたしに向けるのだった。
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