第43話 エルメルマータを超強化する
エルメルマータの強さを確かめることにした。
アインス村長と、わたし、そしてエルメルマータの三人で森の中に入る。
「エルメルマータさん」
「エルでいいですぅ~」
「エルさんは、本当に優秀な斥候ですね」
エルメルマータが首をかしげている。
「どういうことだい、嬢ちゃん?」
アインス村長は、エルメルマータ同様に、わかっていないらしい。
「ここまで、魔物に一切出くわしてないでしょう?」
「言われてみりゃあそうだ! すげえ!」
一方で、「はえ?」とエルメルマータが首をかしげる。
「ここは奈落の森だぜ? 一歩森に出れば、すぐに魔物に襲われるんだ」
ところが、我々は一度も敵に遭遇していない。
「エルさんが、魔物と出くわさないルートを選んで進んでいるからですね」
「それのどこが凄いことなんですぅ? 普通のことじゃあないんですかぁ?」
エルメルマータ自身、自分のすごさに気づいていなかったのだ。
パーティメンバーであるカスクソーも、彼女の功績を褒めてあげていなかったのだろう。
……いや、そもそも彼女がやっていた凄いことを、知らなかったのかも。
「エルさんには斥候の上位スキル、【空間把握】があるんだと思います」
「空間把握ってなんだよ嬢ちゃん?」
「自分を中心とした、周囲の空間に、何があるかを全て把握できるスキルです。地形だけでなく、どんな魔物がどれくらいの数いるか、全て正確に」
「はぁ!? ヤバすぎるだろ……!」
ひっ、とエルメルマータが怯える。
「や、ヤバすぎるって……使えないってことですぅ~?」
「いやいや! スゲえって事だよ!」
エルメルマータが本気で驚いてるようだ。
「そうですよ、エルさんの空間把握スキルは、本当に凄いスキルなんです。それを獲得できるまで、地道にレベル上げした貴方の努力は、評価に値します」
「うぐ……ふぐ……うわわわーん! うれしいですぅ~!」
エルメルマータが泣きながらわたしに抱きつく。
「努力を褒めてもらえたのはじめてで~」
よしよし、とわたしは頭を撫でる。
さて……斥候として有能なのはわかった。
「次は、狩人の力を見せてもらえませんか?」
「OKですぅ~!」
ふがふが、とエルメルマータが鼻息荒くしながら、背負っていた弓を装備する。
エルメルマータが弓を持った状態で、音もなく消える。
「消えた!?」
「落ち着いてください。狩人のスキル【潜伏】です。敵から視認されなくなります」
「はえー……そんなスキルまであるんだな、狩人って」
「はい。ただ、取得には長い修練が必要となります」
彼女はそれだけ、影で見えない努力を積んできたのだろう。
狩人、そして、斥候。二つの職業から派生するスキルを彼女は持っている。
……これは、かなりいい拾いものをしたかもしれない。
「ギャウッ……!」
という悲鳴とともに、何かが倒れる音がした。
「恐らくエルさんが魔物を倒したんでしょう」
「まじか。いつの間に……」
「空間把握スキルで敵の位置を割り出し、潜伏状態からの狙撃を行ったのでしょう」
「はー……すごいな。一瞬で魔物倒しちまうなんてよ」
わたしたちは、エルメルマータの倒した魔物のほうへと向かう。
猪の魔物が倒れている。黒猪だ。
脳天に1本、両目に1本ずつ、合計3本の矢が刺さっている。
スキルを解いて、わたしたちのもとへと、エルメルマータがやってくる。
ここまで正確な狙撃が行えるのだ。
本当に優秀な狩人だったんだな。
しかしよくこの優秀な子を追放する気になったな、カスクソーとか言うリーダー。
「しかし倒すのに3発かかるんだな」
「えるじゃ一発で魔物を倒す火力がないんで。両目を潰し、ひるんだところで、脳天に一発。これがえるの、現状できる必勝必殺のコンボですぅ」
これが最大火力……?
「エルさんは、魔法矢を習得してないのですか?」
「魔法矢? なんですぅ?」
……本気で知らないようだ。
「狩人としての訓練はどこで受けたんですか?」
「ママンから基礎をならって、あとは独学ですぅ」
なるほど。だから魔法矢を知らないんだ……。
「魔法矢ってなんだよ? 嬢ちゃん」
「魔力を消費して放つ魔法の矢です。魔力の消費量を増やすと威力も増します。この黒猪程度なら一撃で倒せるようになるかと」
「まじかよ! すげえな魔法矢!」
わたしはエルメルマータに尋ねる。
「魔法矢、覚えてみる気はないですか? 使えると、もっと狩りが楽になりますよ」
3発も撃つ必要がなくなるし、今以上に強い敵を単体で倒せるようになる。
エルメルマータが一瞬目を伏せた。そこには、なにか迷いのようなものが見えた。
「無理強いはしないです。決めるのは貴女です」
「あ、いや。覚えたくないわけじゃあないんです。ただ……なんか、怖くて」
「怖い?」
「なんか、セントリアさんに出会ってから、えるにとって都合のいいことしか起きてなくて……それが怖いって言うか……」
エルメルマータがわたしには理解できないことをつぶやく。
顔を上げて、エルメルマータがうなずく。
「える、魔法矢覚えたいです!」
彼女の瞳には決意の色が見えた。
「しかしどうやって魔法矢ってやつを覚えるんだ?」
「簡単ですよ。知ってる人からやり方を聞く。それだけです」
狩人の魔法矢の取得条件は、簡単だ。
魔法職で魔法矢を取得してる人から、やり方を習う。
「知ってる人って?」
「トリムですよ」
ルシウムさまのお孫さま、トリム。彼は宮廷魔導士だ。
もちろん、魔法矢を覚えている。
わたしは貰った通信用の魔道具を使って、トリムに連絡を取る。
その後、通信用魔道具経由で、トリムからやり方を、エルメルマータが習う。
「なんとなくわかったです!」
エルメルマータがうなずくと、弓を構える。
「魔力を手に集めて、その状態で弦をひく……」
エルメルマータの弓に、凄まじい量の魔力が集中していく。
「お、おいエル嬢ちゃん! なんかやべえんんじゃ……」
「ふぁいやー!」
エルメルマータが弦から手を離す。
ズドォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!
……木々が、消滅していた。
地面もえぐられている。
直線上にいたとおもわれる、黒猪の死体が、数体……いや、10体くらい、散らばっていた。
「なんつーバカ火力! 魔法矢ってこんなスゲえのかよ!」
「いえ……魔法矢はあくまで、魔力を矢に変えて放つ技です。こんな地形を変えるほどの力はないはず……」
まてよ。この現象に、覚えがあるぞ。
「なるほど……エルさん。アインの村の魔力温泉に入りましたね?」
「はいったですぅ~。狩りに行く前に」
やっぱりか……。
「どういうことだよ、嬢ちゃん」
「村の魔力温泉に入ると、魔力量、魔法出力があがるんです」
トリムの時にも、似たような現象が起きていた。
「つ、つまり……嬢ちゃんの作った温泉のパワーで、エル嬢ちゃんの魔法矢がとんでもなくパワーアップしたってことか……すげえ」
エルメルマータが涙を流しながら、わたしの手を掴む。
「ありがとうですぅ、セントリアさん! えるをこんなに強くしてくれて……!」
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