第41話 主人公の仲間(予定)を、仲間にする
【びにちる】は、共通ルート(学園パート)の後、個別ルートが存在する。
学園で、どのパートナーと結ばれるかを、主人公が選択し、ルート分岐するのだ。
分岐した後は、個別ルート(アドベンチャーパート)に突入する。
アドベンチャーパートでは、コビゥルが、選んだヒーローとともに世界を旅するのだ。
その際、ヒーロー以外にも仲間になるキャラというものが存在する。
主人公は、ヒーロー、そして仲間キャラ(名前持ちキャラ)とともに、苦難を乗り越えていく。
そして、目の前にいる痩身美女エルフこそ、コビゥルの仲間になる名前持ちキャラの一人、エルメルマータなのだ。
「ふぉおおお……! めっちゃ痩せてるですぅー!」
露天風呂の湯船にうつった、自分の姿を見て、エルメルマータが歓声を上げる。
「何度ダイエットを試みても、失敗ばかりだったのに……!」
【びにちる】本編では、エルメルマータは痩身(目の前の彼女と同じ見た目)だった。
現実化による影響か、はたまた、主人公の選択による影響か。
「どうしてえる、痩せたんですかぁ~?」
エルメルマータがわたしに近づいてきて、尋ねてきた。
……どうするべきか。
彼女は名前持ちキャラだ。
コビゥルの仲間になるキャラクター。
ということは、コビゥルがエルメルマータの前に、スカウトに現れる可能性が高い。
……正直、わたしはコビゥルと二度と関わりたくない。
が、この子が領地にとって有用であることは事実。
「セントリアさぁん?」
「あ、えっと……すみません。ぼうっとしてました」
ルシウムさまと領地のため、わたしは領主の妻として、この子をスカウトしよう。
「この温泉は特別に温度が高いんです。また、代謝を促進する成分が溶けてます。結果、大量の汗をかき、超短時間で痩せることができるんです。名付けて、【痩身の湯】です」
「入るだけで痩せる温泉って事ですかぁああ! 夢みたいな温泉じゃあないですかぁ~~~~~~~~~~~~!」
エルメルマータが耳をピコピコ動かす。
「えるがどれだけご飯食べてもぉ、このお風呂に入れば一発で痩せるってぇことですよねー!」
「そうですね。また何度かこの痩身の湯に入ることで、体質が改善されるのです」
「ふぁ……!? た、体質改善って……ま、まさか……!」
「はい、太りにくい体質へと、改善されるのです」
「ふぁ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡」
やっぱりわたしの知ってるエルメルマータと、目の前のこの子、ちょっと性格が違うな。
【びにちる】のエルメルマータは、もっと険しい表情の、歴戦の弓使いって感じだったのだが……。
「温泉に入ってきもちよーくなるだけで!? 太りにくくなるってことですかあぁ!?」
「ま、まあそうなりますね……」
「ふぉおおお! すごいぃい~~~~~!」
ぴょんぴょん、とエルメルマータが飛び跳ねて喜ぶ。
……原作のエルメルマータは、もっとハードボイルドな性格をしていた。
わたしの後ろに立つな的な、そんなキャラだった。
どうしてこんな緩い雰囲気のキャラになってしまったんだろうか……。
「でもぉ、入ると痩せるってことはぁ、おっぱいも萎んじゃうってことですよねぇ……それはちょっと残念」
「豊胸の湯ありますよ」
血走った目で、エルメルマータが顔を近づけてくる。
「ほんとですか!?」
「え、ええ……あっちにあります……」
ばびゅんっ、とエルメルマータが指さした方向へと走り、豊胸の湯へとだいぶ。
落ちていた胸の脂肪が、みるみるうちに戻っていく。
結果どうなったかというと……。
痩せた状態は維持したまま、胸は太っていたときと同じくらいの爆乳。
という、グラビアモデル体型へと、変化していたのだ。
「なんですかここ!? 天界ですかぁ!?」
天の神々が住む世界を、ここでは天界という。
そこは理想郷らしくて、理想を現実にする力があるんだそうだ(フレーバーテキストによると)。
「入るとやせてー、胸までおっきくなるなんてー♡ 世の女子の理想が詰まってるじゃあないですか~」
ふにゃふにゃと笑いながら、エルメルマータがクロールしてる。
温泉で泳ぐな。
「おやまぁ、綺麗な子が風呂に入ってるよぉ?」
アインの村のおばあさんたちが、ぞろぞろと露天風呂に入ってきた。
ちょうど農作業を終えて帰ってきたようである。
「ぬへ♡ ぬへへへ~♡ きれいですかぁ~?」
領民達がエルメルマータを取り囲んで、口々に褒める。
「ああ、きれいだねぇ~」「嬢ちゃん女吟遊詩人かい?」「本当にきれいなお嬢さんだことぉ~」
……【びにちる】の設定では、アインの村にはかつて異種族が住んでいたらしい。
異種族、つまりは人外だ。天使だとか、犬や猫の獣人だとか。
この村では人間以外も受け入れていた過去がある。
だから、ハーフエルフであるエルメルマータも、受け入れているのだろう。
おばあさんたちによしよしと可愛がられて、ふにゃふにゃ~♡ と笑うエルメルマータ。
「気持ちいいお風呂に、優しい領民。しかも美味しい食事まである! えるは、ここで一生はたらくですぅ! 何があっても、絶対に余所にいくつもりはないですよぉ!」
……さて、主人公はどうするんだろうか。
仲間になるはずの名前持ちが一人、ここから出たくないと言ってるけども。
……まあ、わたしには関係の無いことだ。
友達でも、家族でもないあいつの面倒を見る義理なんて、わたしにはないのである。
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