第40話 太っちょエルフを痩身美女にしたら主人公の仲間キャラだった
アインの村、集会場にて。
ここは村の人たちの憩いの場として使われ、食事も提供されている。
現代で言えばファミレスとか、喫茶店のような場所だ。
少女は振る舞われた料理を次々と食べていく。
「しっかしよく食べるな嬢ちゃん……。だから、そんなに太っ……げふっ」
呆れるアインス村長の脇腹を、ルシウムさまが小突く。
……改めて、ハーフエルフ少女を見る。
身長は170くらいある。女性としては高いほうだろう。
髪の毛は緑色。手入れが行き届いていないのか、艶もなく、皮脂でべたついてる。
そして……ほっぺたにも、お腹にも、太ももにも。トンデモナイ量の贅肉がついているのだ。
ハーフエルフ少女がガツガツとご飯を食べてる、その正面に、ルシウムさまが座っている。
「ごくん! 本当においしいですね、ここの料理!」
「ありがとうございます。妻の考案した料理なんですよ」
ちら、と少女が、ルシウムさまの隣にいるわたしを見やる。
「きれーな奥さんですねー!」
「ありがとうございます」
とわたしは頭を下げる。お世辞だとしても、うれしいものだ。
「大丈夫、貴女は本当に美しいですよ」
頬が思わず、熱くなってしまう。駄目だ。今は仕事中だ。
領主、そして、領主の妻として。
「それで、貴女のお名前は?」
とルシウムさまが尋ねる。
「えるは、【エル】ともうします」
「エルさんはどうして森の中に?」
わたしが尋ねると、エルが答える。
「えるは、冒険者なんですぅ。森には魔物狩りに来てましてぇ。でも仲間達に置き去りにされてしまったんですぅ」
この奈落の森は、高レベルモンスターのうろつくフィールドダンジョンだ。
そのことはこの国の人間なら誰もが知ること。
一般人や、低ランク冒険者が不用意に入ると言うことは、まずない。
「あなたは、高ランク冒険者なんですか?」
「はえ? いやいや! える【は】ランクの高い冒険者じゃあないですよぉ」
「あなた、は、ってことは他のパーティメンバーは高いんですよね?」
「ですぅ~」
……となると、この子の所属している冒険者パーティのランクは高いことになる。
ルシウムさまが尋ねる。
「では、なぜ仲間に置き去りにされてしまったのですか?」
「それはぁ……えるがデブでのろまな、ハーフエルフだからですぅ~」
エルが肩を落としながら、自分の身に降りかかった不幸を説明する。
話をまとめるとこうなる。
この子は高ランク冒険者パーティに所属していた。
ある日、そのパーティが大きな仕事の依頼を受けることになる。
仕事の依頼者が面食いで、パーティに不細工なハーフエルフ(エル)が居るなら、依頼を取りやめる、と言ってきたのだろう。
リーダーはその大きな仕事による、莫大な報酬を手に入れるため、エルをパーティから追放した。
奈落の森で置き去りにされた彼女は、手持ちの食糧が尽きてしまい、道ばたに生えていた毒キノコを食べた。
そして、森で偶然ふぇる子に拾われた……と。
「なんとも酷い話ですね」
ルシウムさまが眉をひそめる。わたしも聞いていてあまり気分が良い話では無かった。
「しょうがないんですぅ。もともとえる、パーティ内で酷い扱い受けてましたしぃ」
【びにちる】におけるハーフエルフは、迫害されてる存在だ。
誇り高いエルフ族からは、混じり物だと蔑まれる。
人間からは、エルフの出来損ない、劣等エルフと馬鹿にされる。
人間からもエルフからも嫌われてるのが、ハーフエルフという種族だ。
でも本当は、ハーフエルフは人間よりステータスが上だったりする(知性やMPが人間より上)。
「リーダーからいつも言われてました。おまえは、太ってるし、ぶさいくだし、汗くさいし……。女として使えないなって」
……ほんとクソだな、そのパーティリーダー。
話を聞いてると、この子が不憫に思えてきた。
彼は微笑みながらうなずく。
「良いですよ。貴女の好きなようにしてください」
「よろしいのですか?」
まだ何も言ってないないのに、ルシウムさまは、わたしのすることを肯定してくれた。
「もちろんです。本当に優しい人ですね、貴女は」
「あ、ありがとうございます……」
顔が熱くなる。駄目だ仕事中だ。
「エルさん。これからどうするんですか?」
「どうしましょぉ。もうどこもパーティ入れてくれないでしょうしぃ」
「提案なのですが、うちで衛兵として働きませんか?」
わたしは、ハーフエルフのステータスが、かなり高いことを知ってる。
現に、彼女は高ランク冒険者パーティに所属していたのだ。
彼女にはかなりの実力がある、とわたしは睨んでいる。
衛兵としてスカウトできれば、かなり、この領地の防衛力があがる。
「で、でもぉ~……えるはぁ、ハーフエルフだし」
「種族は関係ないです。わたしは貴女の能力が欲しい」
「で、でもでも……ぶさいくだし、でぶだし、あせくさいしぃ~……」
……きっとパーティ内で、ずっとそう言われてきたんだろう。
その呪いの言葉が、今も、彼女から自信を奪ってしまっているのだ。
まずはその呪いをとかないと、能力を褒めても、言葉は届かない……か。
「エルさん。ちょっとつきあって欲しいとこがあるんですが」
「ふぇ……? つきあう? どこですか?」
「お風呂ですよ」
「うぅ……そんなににおいますかぁ~?」
アインス村長が「少し汗く……げふっ」と
ルシウムさまに肘鉄くらっていた。
「うちの自慢のお風呂を紹介したいのです。きっと、風呂に入れば、この領地を気に入ると思いますよ?」
「うう……そうですねぇ。さっきはゆっくりお風呂に入れなかったですし~」
こんらん状態の異常をとくために、湯船に入れただけだからな。
「じゃあ……お風呂いただいてもいいですかぁ?」
「もちろん。さぁ、こちらへ」
わたしはエルを連れて、公衆浴場へと向かう。
服を脱いで、露天風呂へと向かう。
……エルは、なるほど、お肉が体にたっぷりついていた。
胸や腹、太もも、そして、お尻にも。
「うう……こんな醜い体をじろじろみられたくないですよぉ~」
「大丈夫、さ、こっちのお風呂へ」
いくつかある露天風呂の1つに、エルを連れていく。
ちゃぽん……とエルが湯船に足を入れる。
「ひっ……! あ、あつぅうい! あつすぎますよぉ!」
確かにこの風呂は、他の風呂より温度が高い。
「こんな熱湯に入ったら火傷しますよぉ!」
「大丈夫ですよ。熱いのは、すぐ慣れます。さぁ……」
文句言いつつも、エルは湯船に入る。
「ふぉぉおお……♡ た、確かに最初は熱いなって思ったけどぉ、慣れるとぉ~……♡ 心地ぇえ~……♡」
エルの額に、汗が浮かぶ。だらだら、と汗をかく。
「あ、あれ……? あ、汗が止まらない……あれあれあれぇ~?」
さっそく温泉の効果が現れてきたようだ。
エルの顔についていた脂肪が、みるみる落ちていく。
「あ、あれぇ!? え、える痩せてってますぅ!?」
「な……!?」
……痩せるのは想定内だ。
でも……想定外なことが、ある。
「あの、エル……さん。貴女って、もしかして【エルメルマータ】って名前じゃあないですか?」
「ふぇえ……? そうですよぉ?」
……やっぱりだ。
エルメルマータ。それは、【びにちる】本編に出てくる、主要キャラの名前だ。
主人公コビゥルの仲間になる、凄腕弓使いの。
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