第33話 愚かな聖女の愚行2
……【びにちる】主人公に転生したあたし。
帝国のパーティで知り合ったイケメン、トリム・ケミストにを、魔道具で魅了しようとした。
でも!
なんでか! 魅了が効かない!?
ど、どうなってんの……?
そ、そうだ。わからないときがあるなら……。
「【鑑定】!」
【びにちる】には、NPCやアイテムのデータを見るスキル、鑑定というものがある。
これは、主人公に与えられるスキルの一つだ。
しかも主人公の鑑定は、鑑定スキル(上級)。
こまかいステータスの数値や、NPCの覚えてるスキル、相手の状態までわかる。
~~~~~~
トリム・ケミスト
【加護】
魔法神の加護
山女神の加護
【状態】
完全状態異常耐性
MP自動回復
MP最大値上昇
HP自動回復
知性上昇
攻撃力上昇
取得魔法数上昇
~~~~~~
「んな!? な、な、なによこれぇええええええええええ!?」
トンデモナイ数の、上昇を受けてる!?
なにこれ!?
「きみ」
しかも……加護が二つ!?
そんな……【びにちる】って、たしか加護は一人につき一つなはずじゃあ!?
「ちょっと」
加護が二つって、すごい……レアじゃあないの!
ますます、あたしのものにしたいわ……。
ああ、でも……完全状態異常耐性があるのか。そのせいで、魅了が効いてないのかも……くそっ!
「おい!」
「え? な、なによ……」
レアキャラ……もとい、トリムがあたしに話しかけてくる。
でも……変ね。なんか、すごくこちらをにらんできてない……?
「失礼だろ」
「は、し、失礼って……?」
「いきなり、相手に向かって鑑定スキルを使うのは」
「…………………………は?」
意味不明すぎ……。
え、鑑定を使ったから、なに?
ゲームだと普通に、NPC相手に鑑定使うでしょ……?
なに文句言ってるの、この人……?
「君のやってることは、プライバシーの侵害だぞ?」
「は……? プライバシー……?」
なーにバカなこといってるんだ、このNPC……?
ゲームキャラのステータスを、確認したくらいで、それがプライバシーの侵害……?
なに言ってるのかしら。偉そうに。
ま、良いわ。
あたしは寛容だから。
それより! やっぱりこのキャラ……レアだわ。
だってこんなにたくさんのバフを持ってて、しかも加護2つ持ちなんてレア中のレア! しかもイケメン。うん、やっぱりあたしのものにしたいわ。
「って、あれ!? 居ない!?」
あのイケメン……居なくなってるんですけど!?
嘘でしょ!?
あたしはこの……【びにちる】の主人公よ!?
この世界で唯一の、制作者に選ばれし、特別な存在を、放置する……!?
ありえないでしょ!
ゲームでは、主人公は特別な存在で、どんなNPCも、ユーザー(あたし)には親切にするはずなのに!
「主人公に冷たいNPCとか……イケメンじゃあなかったらキレ散らかしてるわよ!」
あたしはトリムを探す。
どこ行ったのよあのイケメンっ。
パーティ会場へ到着する。
周囲を見渡して……いたっ!
「トリムさまぁ~~~~~~~~~~ん♡」
あたしは手を振りながらトリムに近づく。
状態異常耐性のせいで、魔道具による魅了が効かない相手だ。
それを落とすためには、どうすればいいか?
答えは簡単!
主人公自身が持つ、この美貌で、落としてやればいいのよ!
幸い、この世界での主人公は、とびきりの美少女だもの!
あたし以上の美人なんて、そうは居ない。だからこの顔で、体で、あのイケメンをメロメロにしてやればいいんだわ!
……魔道具が通じないから、お手軽に落とせないけど。時間がかかってでも、あのレアキャラは手に入れておきたい!
あたしの目標は、イケメンハーレムだもんね!
「ぇ……コビゥル?」
「げぇ!? せ、セントリア・ドロぉ!?」
またあの女が、トリムのそばにいやがった!
「……呼んでますよ、トリム。わたし、席外しますね」
すすす、とセントリアがそそくさと去っていこうとする。
悪役令嬢がソンなムーブするかは……今は置いておこう。そんなの重要じゃあない。
「セントリア・ドロ! なんであんたが、トリムさまの隣にいるのよ!?」
「なんでって……」
「はっ……! もしかしてあたしのトリムを、横取りしようってわけ!?」
くっそ、そういうことかっ。
させないわよ! そんなこと!
あたしはトリムの腕に、抱きつく!
どうよ、この豊満ボディ!
年頃の男ってバカだから、こんな美少女に、しかもおっぱいのでっかい女に、抱きつかれたらドキマギしちゃうもんでしょ?
しかもここは、【びにちる】の世界。
主人公に都合のいい世界なんだから。
これでトリムは、もうあたしを意識しちゃうでしょ?
ほれちゃうでしょ?
チョロいんだから、この世界……。
「離れろ!」
ばしぃ!
……って、え? トリム……?
なんで、あんたがあたしの手を……払うの……?
「さっきから失礼だぞ、君……!」
え、なんで……そんな目を、あたしに向けてくるの……?
なんで怒ってるの……?
NPCのくせに、主人公に……?
「セントリアは、横取りなんて、そんなことするような女性じゃあない」
「…………………………は?」
「セントリアは、心の清らかな女性だからな」
「……………………………………はぁ!?」
な、なにそれ……悪役令嬢が、心の清らかな人ぉ!?
「ありがとうございます、トリムさま。庇ってくれて」
「ふ、ふん! か、勘違いしないでくれよ! べ、別に君のことが好きだから、かばったとか、とか、そういうんじゃあないんだからな!」
……はぁああああああああああああああああああああああ!?
なにそれ!?
ツンデレじゃん! 普通に好きじゃん!
セントリア・ドロのこと、好きじゃん!?
なんで!? あたしより、こんなざまぁされて破滅される、ユーザーが気持ちよくなるためだけの矮小な存在に!
主人公様が、男を取られなきゃいけなのよぉおおお!?
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