第32話 愚かな聖女の愚行
あたし、コビゥルは転生者よ。
この【びにちる】の主人公に、転生したとき、よっしゃきたー! って思ったわ。
なにせ、【びにちる】はめっちゃいいゲームだし!
いいっていうのは、キャラのビジュがいいってことね。
ストーリー? 戦闘要素? クラフト? 正直ぜんぜん興味ない。
あたしが興味あるのは、【びにちる】に出てくるイケメンとの、めくるめくロマンスよ。
【びにちる】に出てくるヒーローたちは、そりゃあもうみんなイケメンばっかり!
どのイケメンも大好き! ちょーすき! キャラグッズもめっちゃ持ってる!
でも【びにちる】には不満点がいくつかある。
ダルいストーリー、ダルい戦闘要素、だるいクラフト要素。
てゆーか、乙女ゲーにそんなもん載っけるなって話よね。
イケメンと恋愛できりゃそれでいいでしょって思ってるわ。
話を戻すと……。
あたしにとって、【びにちる】最大の不満点。
それは……ハーレムルートがないってこと!
ハーレムルート。つまり、主人公が複数人のヒーロー達を囲って、幸せになるルートね。それが【びにちる】には、不思議なことにないのよね。
前に、【喜びにみちる世界】のシナリオを担当したアゲマツ? うえまつ? って人のインタビュー読んだことあるんだけど、『ハーレムルートは書きませんでした。自戒を込めて』って書いてあって、ちょーショックだったわ(自戒ってなんだろ)。
公式メインライターが、ハーレムルートを否定してる。だから今後アプデとかで、あたしの望むハーレムルートが解放されることはない。
それを知ったとき深く絶望したわ。
【びにちる】のイケメン達は、どれもビジュが良すぎてね、全員を侍らしたいってずっとずっとずぅぅぅううううっと思ってたのに!
……ああ、神様。ハーレムルートを実装させてください……。
とか思っていたら、あたし、気づいたら【びにちる】世界のコビゥルに転生していたわけ!
そしたらもう、目指すでしょ!
ハーレムルート! 全イケメンヒーロー、コンプリート!
あたしは、イヤイヤだけど【びにちる】を周回した。
だから自分の興味のある、欲しい! って思ったアイテムの場所はわかってる。
【びにちる】が始まってすぐ、あたしは禁忌のアイテム、【魅惑の香水】を手に入れにいったわ。
これは本来、悪役令嬢セントリア・ドロが使うアイテムだ。
この香水を使うことで、ドンナ男もあたしにメロメロにできる! まさに魔法のアイテムよ。
あたしは【びにちる】に来て、それをすぐに手に入れ、使うことにしたわ。
結果、テンラク王子を始め、序盤で出会うヒーローたちをゲットしたわ!
アイテム使うだけで、あいつら全員あたしの愛の奴隷になったわ!
あ~~~~~~~~~~~~~~~~~~ちょれぇ~~~~~~~~~!
魔法のアイテム、便利すぎるぅ~~~~~~~~~~!
この調子で、めざせハーレムルート! 待ってなさい、まだ見ぬイケメンたち!
皆あたしがまとめてゲットしてやるんだからねー!
……って、思ってたんだけど。
☆
「なんっでこうなるのよ!!!!!!!!!」
場所は、帝都カーター、帝城のお手洗い。
あたしはイライラしていた。
原因はあいつだ!
セントリア・ドロ!
なーんであいつが目立ってんのよ!
あいつは主人公に意地悪したあと、婚約破棄&ざまぁされて、最終的には破滅するキャラのはずでしょ!?
皆から嫌われる、悪女のはずでしょ!?
なぁああああああああああんで好かれてるのよ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!
しかも腹立つことに、なんか本編より綺麗になってるし!
なにあのすべっすべの肌!
つやつやの髪!
ほっそりとして、それでいて出るところはでてる、うらやまけしからんボディは!
……【びにちる】って、ゲームの時だと気づかなかったけど、基本は中世ヨーロッパの文化水準をしている。
お洋服は、全部なんか重いしごわごわしてる。
化粧品も使うと、結構肌がぴりぴりする。
結果どうなるかというと、肌が荒れるのだ。あと運動。ジムとかないし、運動用の軽くて動きやすい服とかもない。
あと医療が発達してない。栄養バランスとか何それおいしいの? って周りも思ってる。
だから、太る。肌も荒れる。髪の毛も、上質なシャンプーとかリンスがないから、ごわっごわになる。
この世界で、美しいを保つためには、かなり努力が要るのだ。
まあ、とはいえ……。
周り(の貴族たち)も、だいぶ美を保つのには苦労してるし、あたしだけが浮いてるってことはない。
むしろ、【びにちる】主人公のコビゥルは、主人公だからか、外見にプラス補正がかかってる。
だから他の女達と比べて、綺麗ね、美しいねとちやほやされる。
……が。
ここに来て、衝撃を受けた。
セントリア・ドロが、なんか美人過ぎるんですけど!?
本来なら、セントリア・ドロはざまぁされて破滅する悪役であるからか、かなり外見不細工に描かれていた。
それがなによあれ!
とんでもない美人になってるし!
「いったいどんなマジックを使ったっていうのよぉ! もぉおおおお! あああ~~~~~~~~~~! むかつくぅう~~~~~~~~~~~~~~~!」
今日は予定だと、セントリア・ドロ相手に、マウント取りまくって、いい気持ちになるつもりだった。
このパーティにセントリア・ドロが参加するって噂を耳にしたあたしは、彼を連れてここにきた。
男を取られて、ね、今ドンナ気持ち? ドンナ気持ち~! ってやるつもりだったのに!
きー! 予定が狂ったじゃあないのよぉ!
「はー……マジ最悪……。しかもなんか、テンラクさま、セントリア・ドロに惹かれてるっぽいし……なんなのよ……おまえはあたしのだっつーの!」
ふんっ、とあたしは鼻息をついて、外に出る。
あー、いらいらするわー。
と歩いていたそのときだ。
ドンッ。
「きゃっ」
「大丈夫ですか、お嬢さん?」
廊下を歩いていたあたしとぶつかったのは、ちょーイケメンだ!
えー! なにこのイケメン!
【びにちる】にこんなイケメンいたっけ~~?
「あ、はい。大丈夫ですわぁん。あのぉ、お名前はぁ?」
「僕ですか? 僕はトリム・ケミストと申します。この宮廷で、魔導士として働いております」
トリムくんねー♡ きゃー! いっけめーん♡
【びにちる】のヒーローではないけど、なかなかのイケメンだわ。
よぉし、こいつもあたしのものにしちゃお~!
あたしはこっそり隠れて、【魅惑の香水】をしゅっ、と振りかける。
この香水を振りかけて、10秒以内に、この匂いを嗅がせた男を、虜にするっていう魔法のアイテムだ。
あたしはトリムさまにぴったりくっつく。
「ねえ、トリムさまぁ。パーティなんか抜け出して、あたしと良いこと♡ しませんか~♡」
はいイケメンげっと~!
ちょれ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!
パシッ。
「え?」
「お断りします」
「……………………は?」
え、え?
なんで? 魅惑の香水……ちゃんと使ったよね?
どうしてこいつ、あたしにメロメロにならないのぉ……!?
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