第30話 自分を捨てた男と、再開
自分を捨てた男と、再会
帝都カーター、DBホテルに一泊して、翌日。
皇帝陛下の誕生日パーティに、わたしとルシウムさまは参加することになった。
帝城には、多くの貴族、王族達が集結していていた。
この中には、【びにちる】の主要人物たちもいるだろう……が、わたしには関係のないことだ。
もうわたしは【びにちる】本編から、離脱したキャラクターなのだから。
……さて。
レイネシア皇女からいただいたドレスに身を包み、ルシウムさまのエスコートで、わたしは帝城へと足を運んだ。
「今日のルシウムさまのお召し物、とても似合ってますよ」
ルシウムさまは、藍色のスーツに身を包んでいる。
西洋風のパーティ用のスーツだ。青色の髪にとてもよく似合ってる。
「そういうセントリアさんのドレス、とてもお似合いですよ」
わたしが身に纏っているのは、黄色いパーティドレスだ。
とても薄くて軽いドレスである。
オーダーメイドだけあって、中々にこじゃれた見た目をしてる。
「まるで光の精霊か、太陽の女神さまかと思いました」
「まぁ、ルシウムさまはお世辞が本当に上手ですね」
「いえいえ、お世辞ではありませんよ」
「ふふ、そうですか。嬉しいです」
わたしたちがポワポワと笑いながら、会場入りをする。
「お、おい……あれって……」
「うそだろ……あの美人、もしかして……」
「セントリア・ドロ……?」
「いや、別人すぎるだろ。綺麗すぎる」
「そ、そうだよな……噂の悪女があんな綺麗なわけない!」
……会場につくなり、周りがざわつきだした。
確かに温泉効果で、以前のわたしよりは、まあ見てくれは良くなっている。
とはいえ、だれもわたしに話しかけてはこない。
噂の悪女に、わざわざ絡みに来るような、奇特な奴は……。
「あんれぇ~~? セントリアさんじゃあないですかぁ~~~~?」
……耳に障る甲高い声。
聞き覚えのある女性の声だ。
声のする方を見やると、離れた場所から、一人の女がやってきた。
「あー……コビゥル」
……なんてことだ。【びにちる】の主人公キャラ、コビゥルがやってきたのである。
……おかしい。
ゲームでは、主人公は帝国で開かれるパーティになんて、参加しないはずだ……。
だというのに、どうして……。
「婚約破棄されて、ど田舎で引きこもってるって聞いてたのに、どーしてこんなところにいるんですかぁ~?」
ニタニタ笑いながら、コビゥルがこちらに近づいてくる。
そして……その隣には、会いたくない男がいた。
「テンラク王子も……」
ゲータ・ニィガの王子、テンラク。
彼はわたしを婚約破棄した張本人だ。
……どうして、会いたくないツートップがこんなところに……。
「ふん、セントリア・ドロ。こんなところまできて、男あさりか? それ……と……も……」
わたしの近くまで来て、ぴたり、とテンラクが足を止める。
「…………」
「なにか?」
テンラク王子はわたしの顔を見て、ぽかんとしてる。
……なんだその表情は。
「…………」
「ちょ、ちょっとぉ! テンラクさまぁ! どうしたんですかっ。こんな奴に見蕩れてっ!」
コビゥルが柳眉を逆立てながら言う。
……見蕩れて?
テンラク王子が?
まさか。この人はわたしとの婚約を破棄した、張本人だぞ?
「み、見蕩れてなんか、だ、断じてない……ないさ。コビゥル」
「うそっ! うそでしょっ! じっとこの女を見つめてっ!」
コビゥルがキレている。なんでこんな切れてるんだろうか。
「あんたは主人公であるアタシにだけ惚れてれば良いの!」
……主人公?
聞き間違いだろうか……。
「す、すまない……コビゥル。君を怒らせるつもりはないんだ。ただ……セントリア・ドロが……その……」
またも、テンラク王子がわたしを見つめてくる。
「もういい! テンラクさまっ、あっちに行きましょう! 不愉快よ!」
コビゥルがテンラク王子の手を引いて、離れていく。
彼は何度もわたしを見ていた……。
「……嫌がらせしてやろうって思ったのに、台無しだわ! 悪役は悪役らしく、主人公にざまぁされなさいよっ、たく!」
コビゥルがブツブツと何かをつぶやいていた。
遠かったし、人も多かったので、何を言っていたのかまでは聞き取れなかった。
「一体何だって言うんですかね、あれは」
顛末を、後ろで見ていたルシウムさまが、話しかけてきた。
「きっと、セントリアさんがあまりに美しくなっていたから、」
「ああ、驚いてたんですね」
見蕩れてたのではなく。
彼は目を丸くすると、苦笑する。
「貴女も、まだまだ子供だったんですね。あまりにしっかりしてるから、つい、忘れてしまいますけど」
「あら、バカにしてます?」
「いいえ、可愛らしいところもあって、ますます素敵だな、と思ったまでですよ」
ふふふ、とルシウムさまが笑いながら、わたしの頭を撫でる。
……子供扱いされてる。しかたない、60のお爺ちゃんからみれば、ね。
「殿下たちへの用事を済ませたら、早めに退散してもよいですよ。あとのことは任せてください」
「よろしいのですか?」
「ええ、挨拶回りなどは、私がやっておきますので」
正直、パーティは苦手だったので、その提案はとても助かる。
「ありがとうございます。では、お言葉に甘えさせていただきます」
「ええ、ええ。存分に甘えてください。むしろ、普段からもっと甘えても良いんですよ?」
「それはできませんよ。わたしは貴方を支える妻なので」
「そうですか、ふふ、私は幸せ者です。しっかりものの良妻をもてて」
「本当にお世辞がお上手ですのね、ふふ」
……周りからの奇異な視線を向けられても、彼が居ると、不思議と嫌な気持ちにならないのだった。
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