第29話 帝都の高級ホテルにタダで泊まれる
帝都カーターへは、土地瞬間移動で一瞬で到着した。
パーティは明日の夜行われる。
「これが……帝国ですか。いやぁ、活気に溢れる、素晴らしい街ですね」
ルシウムさまが帝都カーターの町並みを見て、目を輝かせる。
ゲータ・ニィガの王都よりは、敷地面積は狭い。また建物が全体的に新しい。
伝統あるゲータ・ニィガ、新進気鋭のマデューカス。それが、【びにちる】での設定だ。
「魔道具を求めて、国内外から人がたくさん来ますからね。しかも、ゲータ・ニィガとちがって、人種差別しませんので」
ゲータ・ニィガは別名人間国とよばれてる。
代々人間の王が国を治めているため、多種族を認めない傾向がある。
一方、マデューカス帝国は実力者を外部から率先して取りこんでいる。
だから、種族による差別というものがない。……けど。
「うわ、あれって……」「もしかして……セントリア・ドロ?」「えー……噂の悪女じゃあない? どうしてここに?」
……とまあ、元悪役令嬢の悪名は、ここまで轟いていたりする。
「大丈夫ですよ、セントリアさん」
ルシウムさまがわたしの肩を抱く。
「周りが貴女を嫌っても、私だけは貴女の味方です」
「まぁ……ルシウムさま……」
本当にこのお爺ちゃん、優しい人だな。
周りの反応を見ればわかるが、セントリア・ドロはそうとうな悪女だ。
嫌がらせはもちろん、平民を見下したり、踏んづけたり、平気でやるような最低最悪の女。
……そんな女を、この人は嫌がるどころか、受け入れ、支えてくれている。
……守ろう、この人と、だいじな領地を。
と、改めて思った。
「セントリア、お爺ちゃん」
わたしのもとへ、トリムがやってきた。どうやら迎えに来てくれたのだろう。
通信用魔道具で、ここへ土地瞬間移動で来ることはあらかじめ伝えておいた。
すぐに迎えに来るとは、孝行息子である。いや、孫か。
「べ、別に! 君に早く会いたかった訳じゃあないからな! お爺ちゃんを迎えに来ただけなんだからな! 勘違いしないでくれよ!」
「はいはいわかってますよ」
何でいちいち、わかりきったことを言うんだろう……。
トリムを見て、周囲がざわつく。
「宮廷魔導士さまと、あのセントリア・ドロが仲良くしてる!?」
「氷の魔導師様が!?」「どうして!?」
……どうやらトリムはここでは有名人みたいだ。
いけない、このままでは、トリムの評判を落としかねない。
「トリムさま、あまり近づかないでくれますか?」
「な?!? ど、どうして……? ぼ、僕何か不快にさせるようなことを!?」
「いえ、悪女と一緒にいると、貴方の評判が落ちかねないです」
「あ、そういう……」
ほぉお……とトリムが大きく息をついた。なんのため息なんだろう……。
「ふん。僕はだれにどう思われていようと、関係ない」
「そうですか」
芯の強い人なんだな。
「そうだ。では、参ろう。馬車を待たせている」
トリムの用意してくれた馬車を使い、わたしたちは今日の宿へと、やってきた……のだが……。
「……ここって、ダークノワール・ブラックシュバルツホテル、ですよね?」
通称、DBホテル。
帝都カーターで最も高い……物理的にも、値段的にも高いホテルだ。
「そうだな。安心してくれ。費用は全額レイネシア皇女がお出ししてくれる」
「……さすがにそれは気が引けます」
【びにちる】では、DBホテルに泊まると、なんとレベルが上がる特典がついてるのだ(この世界ではどうかしらないけど)。
また、帝都1高いホテルということで、夜景も綺麗なホテルとして有名である。
そんな高いホテルに……ただで泊まるのはさすがに気が引けた。
「まあまあ、セントリアさん。せっかくのご厚意なんですから、甘えておきましょう。受け取らないと逆に失礼ですよ」
「それも……そうですね」
ということで、ホテルに泊まることになった。
受付をすませ、そして部屋に通された……んだけども。
「まさか最上階とは……」
DBホテル最上階、スウィートルーム。
レイネシア皇女はここを用意してくれたようだ。
……ゲームでは確かトンデモナイ金額……、いや、やめておこう。
ゲーム時代では、だれがこんなとことまるんだ?
どの階にとまっても効果は一緒なんだから、最上階にわざわざ高い金を払って泊まる意味がわからない。そう思っていた。し、今もそう思ってる……。
「ごらん、セントリアさん。良い景色ですよ」
「あら、まあ……」
そろそろ日が暮れる。(出発に準備がかかって夕方になってしまった)
魔道具による人工的なあかりが、街を照らしていた。
……東京の夜景を思い出してしまった。
「綺麗ですね」
「はい、とても綺麗です」
ルシウムさまがわたしに寄り添って、肩を抱いてくる。
「どうなさったんですか? ルシウムさま?」
「いえなに、少し寂しそうにしていらしたので」
……ほんとに優しいお爺ちゃんだ。
「あとでトリムと合流したら、食事を摂りに行きましょう」
「そうですね」
わたしたちはしばし、沈む夕日に照らされてるカーターの街を見つめてるのだった。
【★☆大切なお願いがあります☆★】
少しでも、
「面白そう!」
「続きが気になる!」
と思っていただけましたら、
広告の下↓にある【☆☆☆☆☆】から、
ポイントを入れてくださると嬉しいです!
★の数は皆さんの判断ですが、
★5をつけてもらえるとモチベがめちゃくちゃあがって、
最高の応援になります!
なにとぞ、ご協力お願いします!




