第22話 皇女に気に入られ、友達になる
※投稿する話数を間違えてました。
21話の続きが、こちらになります
12時に投稿された話は、18時に投稿します。
ケミスト領に、マデューカス帝国の第三皇女レイネシアがやってきた。
場所は、アインの村の公衆浴場。
脱衣所にて。
「ふぉおお~……♡ しゅごぉおい……♡」
レイネシアのお側付きであり、女騎士のキャシーが、姿見の前に立っている。
自分の肌を見て、目をむいていた。
「お肌が、まるで玉子のようにぷるっぷるだ。汗疹もないし、マメでかっちかちだった手も、綺麗になってる……!」
現代だろうと、中世ヨーロッパ風の世界だろうと、女性の悩みは共通してるようだ。
特にこっちの世界化学繊維なんてない。
風通しの悪い服をきてるうえに、鎧なんて着込んでいるのだ。
汗疹ができてしまうのはしょがない。
また、手荒れを防ぐハンドクリームなんて便利なモノもないのだ。
結果、現実世界の人たちよりも、異世界人は肌が荒れてしまうようである。
そんなお肌の悩みが、一発で解決してしまった。
だから、驚き、感動してるのだろう。
「素晴らしいですわ……♡ これで、トリムのハートもキャッチできれば……」
「殿下」
「ひゃいっ!」
トリムが話しかけると、レイネシア皇女は体を過剰にこわばらせる。
「マデューカス第三皇女殿下が、どうして、こんな辺境の地にいらっしゃったのですか?」
「そ、それは……その……あなたが心配で……」
「僕が、ですか?」
「は、はい。生真面目で、休暇なんて滅多に取ったことのないあなたは、いきなり休暇を取り、実家に帰ったという……。しかも、何日も帰ってこない。何かあったのではないかと思い……気が気でなく……」
「それで僕のいるケミスト領へやってきたんですね」
「そ、そうですわ……。押しかけてしまい、申し訳ありません……」
なるほど……。
「隅に置けませんね、トリムさま」
「は? 何を言ってるんだ君?」
トリムはレイネシア皇女から向けられてる、好意の視線に気づいてないようだ。
トリムはハンサムだし、若くして宮廷魔導士になったほどの天才。
皇女が惚れるのも無理もない相手である。
でも本人は好意を向けられてることに気づいてない様子。
もどかしい。
わざわざ危険地帯を通ってまで、トリムに会いにきた。それほどまでに、すいてるというのに、好きだと気づかれないなんて。
なんだか可哀想になってしまった。
……余計なおせっかいだとは、重々承知してはいる。けど、なんとかしてあげよう。
「皇女殿下は貴方に気があるようです」
「ち、ちち、違いますっ」
助け舟出してあげたのに、どうして否定するんだろう。
「そ、そそそそうだぞ! ぼ、僕みたいなのと、殿下とでは、釣り合いませんよ」
「ガーン……しょんぼりですわ……」
レイネシア皇女が肩を落とす。
「そうですわよね。トリムは、若き天才魔導士。ハンサムですし、優しいですし、人気者……。一方、わたくしはこんな貧相な体つき、女性的魅力に乏しい女だから、釣り合わないのは当然ですわね……」
「い、いや! 別に皇女殿下が魅力に乏しいなんて一言も言ってませんよ!」
「気休めはいいんです……トリム……しょぼん……」
……貧相な体、か。レイネシア皇女は、顔は整ってる。普通に美人だ。
ただ……確かに体がほっそりしすぎてる。特に、胸の部分。
彼女の胸部は、まな板と言っても過言ではないほどの、絶壁だった。
……そういえば。
トリムはやたらと、わたしのほうを目で追っていた。
もしかして……トリムは胸フェチなのかもしれない。
元悪役令嬢は、遊び人の悪女らしく、そこそこ胸が大きいのだ。
なるほど、胸か。
「大丈夫です、殿下。あなた様のお悩み、このセントリア・ドロが解決してみせましょう」
「悩みを、解決?」
「ええ。少し、待っていてください」
わたしは露天風呂へ行き、作業をして、戻ってくる。
「殿下。外の露天風呂まで、ご足労いただけないでしょうか?」
わたしたちは、ぞろぞろと露天風呂へ移動する(アインス村長たちは公衆浴場から出て行ってる)。
「殿下、こちらの温泉に浸かってください」
「わあ、白い温泉なんて、初めて見ましたっ」
湯船を満たしているのは、牛乳のごとき真っ白なお湯だ。
素材アイテムを使い、作り出した、試作温泉である。
「怪しい、なんだこの白い液体はっ」
キャシーがじろりとにらみつけてくる。
「殿下、ここはこのキャシーめが、入って効能を確かめてみます」
「へえ、入っていただけるんですね」
てっきり、怪しいから入るのはやめろ、と言ってくるのかと。
「う、うるさい! では、殿下。あたしが先に入りますね」
ちゃぽん、とキャシーが風呂に入る。
「……なんだ、何も変化が起きないではないか」
と、がっかりしたようにつぶやく、キャシー。
ああ、なるほど。美容効果を期待した訳か。
「……殿下。ただのお湯です。害はありません」
「では……」
ちゃぽん、とレイネシア皇女が湯に浸かる。
「ほぉ……♡ とっても気持ちいいですね……それに、とても良い香りです。すんすん……ミルクですか?」
「ええ、牛乳風呂と言います」
村でとれる牛乳と、温泉とをまぜて作った、新しい温泉である。
「これに入るとどうなるというのですか?」
「すぐにわかりますわ」
そのときだ。
「う、うわあああ……! で、殿下ぁ……!」
キャシーが大声を上げる。
「で、殿下のちっぱ……小さなお胸が!」
「胸が? って、ええええっ?」
ようやく、自分の変化に気づいたようだ。
「わたくしの、お胸がっ! 大きくなってますわ!」
レイネシア皇女の胸は、絶望的なまでの真っ平らだった。
しかし今は、小玉スイカくらいのサイズになっている。
「ど、どうなってるんだ……!? これは!」
「新しい温泉の効能です。名付けて、【豊胸温泉】です」
「ほうきょう……入ると胸が大きくなる温泉ということかっ」
「そのとおりです」
キャシーが驚愕している。自分の胸を触って、「た、確かにあたしの胸も、前より大きくなってる……!」と目を丸くしてる。
「ぐす……うう……」
「どうなさったのですか、殿下?」
「わたくし……ずっとこの小さな胸が、コンプレックスだったんですわ……」
ぐす……とレイネシア皇女が目元を拭う。
「そのせいで、好きな人に告白できずにいたんですね」
「そうなんです……でも、これでやっと、自信が付きましたっ」
ざばっ、とレイネシア皇女が風呂から上がる。
「わたくし、トリムに……告白します!」
ぐぐぐっ、とレイネシア皇女が拳をにぎりしめて宣言する。
「ありがとうございますわ、セントリアさん。でも……どうしてわたくしに、ここまでよくしてくださるのです?」
「頑張ってる子には、報われてほしいと思ったまでです」
と、はっきり告げておいた。別に隠すことでもないし。
「とても正直な方なんですね……わたくし、気に入りましたわ」
にこっ、とレイネシア皇女が笑う。
ちょっとチョロすぎないだろうか……。
「悪女のうわさを聞いていたので、どんな酷い御方かと思っていたんですが……。こんなに優しくて、素敵な、気持ちの良い性格のかたとは思っておりませんでしたわ」
優しい……?
どこが……?
「セントリアさん。お友達になりましょう」
「え? と、友達ですか……」
おかしい、どうしてそう言うんだろう……。
「お嫌ですか?」
「い、いえ。願ってもないことです。よろしくお願いします、レイネシア皇女殿下」
「レイネシアでいいですわ♡」
「は、はあ……れ、レイネシアさま」
「さまもいいですのに~」
一方で、わたしたちを見て、キャシーがつぶやく。
「人見知りな殿下が、会ってすぐの人間を気に入り、友達になろうと自分から言うところなんて、初めてみた……すごい……」
【★☆大切なお願いがあります☆★】
少しでも、
「面白そう!」
「続きが気になる!」
と思っていただけましたら、
広告の下↓にある【☆☆☆☆☆】から、
ポイントを入れてくださると嬉しいです!
★の数は皆さんの判断ですが、
★5をつけてもらえるとモチベがめちゃくちゃあがって、
最高の応援になります!
なにとぞ、ご協力お願いします!




