温泉と悪女と、ちょっとの尊敬
馬車に揺られながら、わたしはイオと話をしていた。
そう……彼女は理解しているのだ。温泉がもたらす“可能性”について。
「魔道具を、誰でも簡単に生成できる。これ……本当にすごいことだわ」
「そうですね。ただ……弱点も存在します」
一瞬、イオが首をかしげる。
だがすぐに、合点がいったようにうなずいた。
「永続しないのね」
「はい。特に、非生物は」
「生物は……なるほど。パパみたいに不可逆の変化を起こすけど、非生物だと、そうじゃない。温泉が乾けば、効果が切れるのね」
「…………」
「なによ」
「いえ。頭の回転が速いお方だなと思いまして」
弱点があるとだけ言っただけで、そこまで読まれるとは。
「別にたいしたことじゃないわ。ただ、温泉で魔道具が作れるのに、何のデメリットもないんだったら、とっくにあんたのところは大金持ちのはずでしょ? でもそうなってないってことは、売れない理由があるってことじゃない」
「おっしゃるとおりで」
……じっと、イオがわたしを見つめてくる。
「どうしたんですか?」
「……ちょっと見直したのよ」
「?」
言葉が足りなさすぎて、イオの真意はよくわからなかった。
「ふえぇ~……。二人の会話、レベル高すぎて、追いつけないですぅ~。さみしいですぅ~。かまってほしいですぅ~」
エルメルマータが不満をこぼす。子供かこいつ……。
「後で代わってあげますから」
「代わらなくていいですぅ。隣に座ってほしいですぅ~」
「はいはい」
わたしはエルメルマータの隣へと移動する。
そのとき――イオが、小さくつぶやいた。
「……温泉効果が効いてる状態で、魔道具として人をだまして売ることもできるのに、そうしない……か。ずいぶんと、噂と違うのね、あの悪女」
【★☆読者の皆様へ 大切なお知らせです☆★】
新作の短編投稿しました!
タイトルは、
『現代最弱の退魔士、異世界を行き来できるようになり、最強唯一の魔法使いとなって無双する〜霊力のない無能は要らぬと実家を追放された俺、異世界で魔法を習得し現代に戻る。今更土下座されても戻りません』
広告下↓にもリンクを用意してありますので、ぜひぜひ読んでみてください!
リンクから飛べない場合は、以下のアドレスをコピーしてください。
https://ncode.syosetu.com/n1358kw/




