胡散臭い
マギア・クィフに蔓延する奇病の調査依頼を受けた。
それは、愛する人の家族からの頼みだ。断る理由など、どこにもない。
「呼ばれる気がしたですぅ〜!」
ばーん! とルシウムの部屋の扉が開かれ、残念エルフことエルメルマータが勢いよく入ってきた。
「エルさん」
「センちゃんの相棒にして親友にして、無二のパートナー、エルメルマータですぅ〜!」
イオに向かって自己紹介をかますエルメルマータ。
「……なにこの、アホっぽい女」
「むむっ! アホっぽいとはなんですかっ」
「そのアホっぽい女は、わたしの神聖騎士です」
「センちゃんまでアホって言うなんて〜。でもセンちゃんなら言われても平気ですぅ〜♡」
エルメルマータが近寄ってきて、ソファに座る私を後ろからぎゅっと抱きしめてくる。
……大きすぎる乳房が、私の頭に乗っかる。正直、思った以上に重い。
「センちゃん、どっか出かけるんでしょ〜?」
「ええ。マギア・クィフへ」
「あれだ! 魔法の国だ!」
この世界の住人である彼女でも、マギア・クィフの名は知っているらしい。
国を挙げて魔法研究を進めている機関──それが、マギア・クィフだ。
「そのハーフエルフ連れてくの? やばくない?」
「そうですね……」
「なんでなんで〜?」
首をかしげるエルメルマータに、私は答えた。
「マギア・クィフは、反ハーフエルフ主義者が多いんです」
創始者がエルフだったことから、ハーフエルフを認めない思想が一部に根強く残っている。
──と、【びにちる】の設定にもある。
「大丈夫ですよぉ。える、知らない人から嫌われても平気ですぅ。センちゃんがえるのこと好きなら、それでOKですぅ〜♡」
「下手したら、殺されるかもしれませんが」
「そんな過激派の集まりなんですぅ!?」
イオがため息混じりに言う。
「まあ、全員がそうってわけじゃないけどね」
「つまり一部には、やばい思想の人がいるってことですよねぇ。こわ〜い……でもでも、センちゃんが危ないのは見過ごせないですぅ!」
……私のことを気にかけてくれているのが、嬉しい。
本当に、いい子である。
とはいえ、もしものときのためにも、神聖騎士である彼女を連れて行きたい気持ちはある。
「どうすんのよ。連れてくの?」
「はい。ただ、対策はしておきます」
「対策って……どうするのよ?」
私が答える前に、エルメルマータが勢いよく手を挙げる。
「温泉に入るんですぅ!」
「はぁ……? 何言ってんの……?」
「センちゃんはだいたい、温泉で問題を解決するですぅ〜」
その通り。今回も、温泉で解決できる案件だ。
「変身魔法でも使うつもり? 悪いけど、マギア・クィフの検問は厳しいよ。そういうの、一発で見抜かれるからね」
「大丈夫です。温泉で、なんとかしますので」
「…………うさんくさい」
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