奇病
イオは、問題を抱えているようだった。
わたしはルシウム様の元へ向かう。
「おや、二人とも。お風呂上がりですか?」
「ええ」
ルシウムが、さらにニコニコしていた。……いつも笑顔が素敵なのに、今日はさらに素敵だ。
「なんでパパちょっとうれしそうなの?」
わ、わたしの聞きにくいことをズバッと聞く。さすが、孫……。
「家族が仲良しだと、うれしいものです」
か、家族……。
ルシウムってば、わたしを家族だと思ってくれてるようだ。
……わかってはいたけど、いざ口に出していただけるとなると……こう、うれしかったりする。
「私はまだ完全に認めたわけじゃあないけどね」
「おや? そうなんですか?」
「ええ、そうよ」
ふんっ、とイオがそっぽを向く。……どことなくすねているように、わたしには見えた。
ルシウムは目を細めて、何度もうなずく。彼には、わたしに見えていない何かが見えてるようだった。
「なにか、相談があったのでしょう?」
「あ、そうです。イオが」
ルシウムに促されて、わたしたちはソファに座る。
正面のイオ、隣には……ルシウム。
「じつは、今マギア・クィフでは、謎の奇病がはやってるの」
「奇病……ですか?」
「ええ。あんたもさっき見たでしょう? 魔力障害。あれが、国全体で流行してるのよ」
……ふむ。なるほど。それは……気になる。
同時多発的に、魔力障害が起きるなんて、自然ではありえないことだ。
「マギア・クィフ全体を、まるで狙い澄ましたかのように、魔力障害が起きてるの。このままじゃ研究に支障が出る、と今問題になっててね。どうすればいいのか困っていたところなの」
そんな折りに、魔力障害を治す温泉の存在を知った、と。なるほど……。
「温泉に入れば、魔力障害は治るでしょう。しかし、現況を排除しなければ、また同じ事件が起きてしまう」
……わたしはルシウムを見やる。彼は、穏やかな笑みを浮かべていた。
わたしがやりたいことを、彼は理解してくれているのだ。やっぱり……素敵な人だ。
「イオ様。よろしければ、調査をお手伝いさせていただけないでしょうか」
「…………そうね。お願いするわ」
おや、拒否られるのかと思っていたのだけど……。
「あんたがすごい力、そんで、私の持ってない知識を有してることは、わかったからね。マギア・クィフでも、解決できなかった問題を、あんたなら解決できるかもって思ったのよ」




