イオと裸の付き合い
……イオに、恥ずかしいところを見られてしまった。ああ……。
「で、なにしにきたわけ、あなた……?」
じろり、とイオがわたしにらみつけてくる。……この子はわたしを敵だと思っている。
しょうがない。わたしが噂の悪女である事実はきえないのだ。
敵視されて当然だ。だから、怒ることも、いやな気分になることも……ない。
「それはその……る、ルシウム様に会いに……」
「パパは居ないわよ。出かけた。アインスに会うんだって」
「そう……」
……夜に、会う? 一体どうして……?
じろり、とイオがにらみつけてくる。
「あんた……パパのこと、ほんとわかってないわね」
……痛いところを突かれてしまった。そう、わたしは、ルシウムさまのことを愛してる割に、知らないことが多いのだ。
「はい。何も、知らないです」
……【びにちる】をやりこんだわたし。ゲームのことは何でも知ってる。でも……この世界のことは、何も、知らないのだ。
この世界で生きる、アイする人が、どういうふうに生きてきたかなんて。
「……嫌に素直ねあんた。調子狂うわ」
「無知なのは事実なので」
「あ、そ」
「はい。ところで……あなたは、どうしてルシウム様の居ない部屋にいるんです?」
「あ、あんたには関係ないでしょっ」
「…………」
関係ない、か。それは、寂しい。
なぜなら、ルシウム様の孫娘ということは、わたしの家族だと言うことでもあるから。
家族から拒まれたら……つらい。でも気持ちは理解できる。噂の悪女と、急に家族になれと言われても無理な話だろう。
……でも。
「イオ様」
「なによ」
「よろしければ、一緒に温泉に入りませんか?」
逃げては、駄目だ。わたしは彼の家族となるのだ。だから……彼の家族から、逃げてはならない。
「は? 急になに……?」
「裸の付き合いですよ」
「いや意味分からないんだけど……」
すっ、とわたしは彼女の肩を指さす。
「肩こり、ひどいのでは?」
「っ! どうして……それを?」
……まあ胸にそんなご立派なものをぶら下げているんだ。
肩こりになるのは当然といえた。
「ここの温泉、肩こり、眼精疲労、そのほか、体の不調が、入るだけで一発できえますよ?」
「ば、バカな……そんなわけ……」
「ものは試しで、入ってみませんか? ああ、そうそう。お肌もきれいになりますよ」
「っ!?」
イオは目をむく。わたしをじっと見つめた後、こくんとうなずくのだった。
どうやら、わたしの肌を見て、温泉の効能が気になったのだろう。




