嵐を呼ぶ孫娘
「なるほど。ルシウムさまの息子さんのひとり、その娘さんがイオさんってわけなんですね。ははは、わかってましたとも、ええ、わたしの夫が浮気なんてするわけないって信じてましたし、ええ!」
「妙に早口で説明口調ですぅ~。あいたっ」
……あれから、わたしはルシウムさまから説明を受けた。
トリムとは別の息子とその伴侶との間に生まれたのが、イオ・ケミスト。つまり彼の孫娘だという。
「紹介が遅くなってすみません、セントリアさん」
「いえ……そんな……」
……本当は、どうしてそんな大事なこと、今まで言ってくれなかったの?
そう思う自分がいる。でも、それをルシウムさまのせいにするのは違う。
聞かれていなかったから、答えなかった――それだけ。
彼を責めるなら、興味を後回しにしていた自分の方が悪い。
もっと、彼のことを知ろうとすべきだった。
だから……責めるのは筋違い。……わかってる。
「そ、それで……イオさまは、今日は何のご用で……?」
「あら、“愛する家族”に会いに来るのに、理由が必要かしら?」
……イオが、すっと近づいてくる。
正直、かなりの美人だ。まあ当然だ。美形のルシウムさまの血を引いてるんだ。美しく育つに決まってる。
年齢は、十代後半ってところか。
浅黒い肌に、銀髪。メガネ姿。そして――胸だ。……やたらとでかい。
「……ふっ」
「……なにか?」
わたしの胸を見て、鼻で笑いやがった。
……クールになれ、セントリア。以前のわたしなら、こんな安い挑発、華麗にスルーしていたはず。
「噂の悪女も、たいしたことないのね。貧相な胸、険しい顔つき。麗しいパパには、どう見ても不釣り合い」
「……………………ア゛?」
……挑発に乗るな、わたしよ。
「べ、別に、貧相な胸じゃありませんけど?」
「私と比べて小さいじゃないのよ! おお、なんて小さく貧相な胸かしら!!」
胸を張って突き出しながら、わたしを軽く突き飛ばしてくる。
こ、こいつぅ……!
「お、落ち着くですぅ~!」
エルメルマータが背後から羽交い締めにしてくる。
……無駄にでかい乳が、今日ばかりは、どうしようもなくイラつく……。
「わたしは冷静です」
「よかったぁ~……」
「だから、そのでかい乳を爆破しろ」
「冷静じゃない! 全然冷静じゃないですよぉ!!」
……確かに。わたし、冷静じゃないのかも。
どれくらいかっていうと……エルメルマータなんかに指摘されるまで、気づかなかったくらいに。
それほどまでに、冷静さを失っていた。
「パパをどうやって籠絡したか知らないけど……あんた」
ぴしっ、とイオが指を突き立ててくる。
「私は、あんたを認めないから」
「……認めないって?」
「言葉通りよ。私は、あんたを“家族”として認めない。パパの“新しい嫁”だなんて、絶対に認めないんだから!」




