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浮気?


 エルメルマータを神聖騎士シュバリエにした。

 これにて、極東での騒動はひとまず一段落――。


 しばらくは、何事も起きないでほしい。ルシウムさまと、のんびり温泉でもつかって、癒やされたいものだ……。


 そんなわけで、エルメルマータを連れて、わたしは領主の古城へと帰ってきた。


「…………」


 ぱっぱっと、手で頭の泥を払う。

 窓ガラスに映る自分の顔を見て、汚れてないか確認。……よし、問題なし。


「ルシウムさんならぁ、センちゃんが泥だらけでもぉ、ぜーんぜん気にしないと思うですぅ~」


 ……まただ。まるで心を読んだようなタイミングで、言ってくる。


「……普段は鈍いくせに」

「恋愛マスターと呼んでくださいまし~♡ わははは~♡」


 ……ま、まあ、わたしだってわかっていたさ。

 ルシウムさまが外見なんて気にしないお方だってことくらい。言われなくても、知ってたもん。


 そうして、彼の部屋の前へ到着。

 わたしはノックし、扉を開ける。


「ただいま戻りました」

「ああ、セントリアさん。おかえりなさい」


 ……ああ、この優しい声。この微笑み。愛しの彼と、ついに再会。

 今日は何をして、どんな風に一緒に過ごそうか。温泉とか……それとも――


「ぱぱ~♡」

「はは、甘えん坊ですね」


 ……あ? …………は?

 ……なん、えっ? いま、なんて?


「はわわ、なんですぅ、あの……きれいなひとぉ~?」


 落ち着け、セントリア・ドロ。まずは、状況の確認だ。


 ルシウムさまの膝の上に――見知らぬ、十代後半くらいの美女が座っている。

 そう、“女”だ。それも、ルシウムさまの膝の上に乗って……いちゃいちゃしている。


 しかも、その女、こう言った。


 「ぱぱ~♡」


 ……ルシウムさまのことを、パパと……。


 わたしの脳裏に、ひとつの単語がよぎる。

 パパ活。


 続いて、もうひとつ。


 浮気。


 いや、待てセントリア・ドロ。クールになれ。冷静に分析しろ。


 まず、これは浮気なのか? その可能性は……低い。

 本妻であるわたしがここに来ても、彼は隠す素振りすら見せていない。


 つまり――つまり……!


「誰なんですかそのアマぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!?」


「わー! センちゃんが動揺してるですぅ~! めずらし~!」

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